クワイ=ガン・ジンはなぜ消えなかったのか?

この記事は管理人が『スター・ウォーズ完全基礎講座<エピソード I 篇>』に記載した内容を改定したものです。内容的には『エピソード I』公開当時のままなので、最新の設定に反する記述が含まれているかもしれません。予めご了承ください。

火葬されるクワイ=ガン
消えずに火葬されるクワイ=ガン

この問題はおそらく、旧三部作を観たことのある人たちが今回の『ファントム・メナス』で抱いた最大の疑問の1つであろう。『新たなる希望』ではオビ=ワンが、『ジェダイの帰還』ではヨーダが、それぞれ死と同時に肉体を消滅させている。ヴェイダーについても、後に霊体としてルークの前に登場することから、装甲服とヘルメットだけを残して肉体を消滅させていると解釈するファンが多い。これらの事実から、多くのファンはジェダイの死が必然的に肉体の消滅をともなうものだと考えているのだ。では、『ファントム・メナス』で死を遂げたクワイ=ガン・ジンの肉体はなぜ消滅しなかったのか?筆者なりに研究を続けた成果としてのこの問題に対する考察を試みてみたい。

ジェダイは死ぬと消えるものなのか?

ジェダイ・ローブを踏んで確認するヴェイダー
ジェダイ・ローブを踏んで確認するヴェイダー

確かにオビ=ワンとヨーダは死と共に肉体を消滅させている。だが、逆に言えば「ジェダイの死」にまつわる現象のサンプルは、旧三部作ではこの2人とヴェイダーの場合しかないのだ。そしてヴェイダーに関しては本当に肉体が消滅したのかどうかに疑問が残る。つまり、これだけで「ジェダイの死は肉体の消滅をともなう」と無条件に解釈するのはやや行きすぎではないだろうか。この問題にからんだ劇中における重要な要素として、オビ=ワンの消滅直後におけるヴェイダーの挙動が挙げられる。彼は明らかにオビ=ワンが消えたことに驚き、ローブを足で踏みつけてまで確認しているのだ。つまり、ヴェイダー(すなわちアナキン)は、「ジェダイが消える」ことを知らなかったのではないだろうか?現時点ではまだ不明だが、『エピソードII』以降でアナキンが評議員たちを含む数多くのジェダイの死を目撃することはほぼ間違いない。しかし、そのジェダイたちは1人として消えなかったのだということが容易に推測される。

霊体の正体は何なのか?

ホスに現れたオビ=ワン
ホスに現れたオビ=ワン

「打ちのめされようと、私はお前の想像を越える力を得て蘇る」----この『新たなる希望』におけるオビ=ワンの生前最後のセリフは、肉体の死後、霊体となって復活することを暗示しているのだろう。つまり、オビ=ワンは自分の復活を予見していたが、『帝国の逆襲』でヴェイダーは皇帝のホロを前に「もはやオビ=ワンもルークを手助けできません」と語っているように、彼の復活の可能性を完全に否定しているのだ。

ダゴバに現れたオビ=ワン
ダゴバに現れたオビ=ワン

また旧三部作を振り返ると、霊体の存在する力がルークのジェダイとしての成長に応じて強まっていることにも気付くことができる。死亡したジェダイ・マスターの霊体が見えるか否かは、本人の生前のフォースの強さだけではなく、むしろ見る側のフォース感知能力に強く依存しているのだ。『新たなる希望』におけるヤヴィンの戦いのときは、ルークはオビ=ワンの声しか聞くことができなかった。だが、『帝国の逆襲』のホスやダゴバではオビ=ワンは不鮮明ながらもその姿を現し、『ジェダイの帰還』ではほぼ実態に近い形で登場を果たしている。逆にエンドアでは、ルーク以外の仲間たちには3人の霊体が見えていない。このことから、ルークの成長に呼応する形でオビ=ワンの魂が導かれているのだという解釈はほぼ間違いないのだろう[★1]。

では、その霊体はいったい何なのだろうか?肉体の死後、オビ=ワンのように己の意思によって消滅させた、あるいはヴェイダーのように荼毘に伏された肉体から分離して、ルークのような現世に生きるフォースと感応する存在----『ファントム・メナス』を観た我々は確信は持てないまでも、その正体について1つの大いなる可能性を手にしている。ミディ=クロリアンだ。ミディ=クロリアンはあらゆる生命体と共存し、フォースと感応する微小生命体である。肉体を構成する細胞からそこに共生するミディ=クロリアンを解放するという行為こそが、肉体を消滅させ、霊体----すなわちミディ=クロリアンだけの状態----として生き続けるということなのではないだろうか。オビ=ワンやヨーダはその方法を知っていたのである。だが、クワイ=ガンは少なくとも生前には知らなかったのだ。

★1・・・『帝国の逆襲』と『ジェダイの帰還』の初期稿には「霊体が現れるための条件」に関する記述がある。ここではヨーダがルークに対して「自分自身のフォースが強力になれば、それに比例して師匠の姿が見えるようになる」と語っていた。

現在のフォースと未来のフォース

ジェダイ・オーダーは25,000年にもおよぶ長い歴史において未来のフォースを信仰し、研究し続けていた。そして、ヨーダやメイス・ウィンドゥのような評議会の長たちがアナキンの未来を危惧して決断を下す中、唯一の「反逆児」であるクワイ=ガンだけは現在の生きるフォースを重視してアナキンの訓練を切望する[★2]。だが、『帝国の逆襲』におけるヨーダは未来を見つめるルークを警告し、現在の重要性を唱えた。これはクワイ=ガンの考えこそが正しかったということを認めたからに他ならない。死を受け入れたとき、現世に自らのミディ=クロリアンを残すことによって現在を見守るという行為は、クワイ=ガンがヨーダやオビ=ワンに与えた教訓なのではなかろうか?しかし、火葬によって肉体と共に共生していたミディ=クロリアンを失ったクワイ=ガンは、ナブーの戦いで強いフォースを見せたアナキンにささやくことさえできなかった。これはクワイ=ガンが今後霊体として復活を遂げることが不可能であることを意味しているのだろうか?もし、クワイ=ガンが霊体となって現世に復活を果たし、オビ=ワンがルークにしたように、アナキンやオビ=ワンにも有用な助言を与えていれば、アナキンがダークサイドに墜ちることを防げていたかもしれない。つまり、少なくともアナキンがヴェイダーとなるまでは、クワイ=ガンは復活を果たすことはない。ジェダイの信仰の対象は依然として未来に向けられているのだと考えることができる。

★2・・・『ファントム・メナス』の冒頭で、「マスター・ヨーダは未来に心を開くべきだと言っています」と言うオビ=ワンに対し、クワイ=ガンは「生けるフォースにも心を開け」と説いている。

クワイ=ガンの復活は?

ルークにクワイ=ガンは見えない
ルークにクワイ=ガンは見えない

オビ=ワンのアナキンに対する訓練の失敗、それに続くジェダイ・オーダー滅亡の危機を経て、ヨーダとオビ=ワンは自分たちの信仰が間違っていたことを学ぶことになる。未来のフォースを信じていたジェダイたちは死後その魂を銀河全体に統合させることになったが、一方でクワイ=ガンは現在に生きるフォースへの信仰によって現世に独立した意思として魂をとどめることができた。残されたジェダイにその教えを与えられる人物は彼以外にあり得ないのだが、ミディ=クロリアンを失った彼は霊体としての復活を果たすことができない。だが、唯一の可能性があるとすれば、それは生前の彼が強く感応したアナキンのフォースにあると思われる。パルパティーンの策謀によって反目を避けられなくなったアナキンとオビ=ワンは壮絶な死闘を繰り広げ、アナキンは肉体の大半を失い、機械人間であるダース・ヴェイダーへと肉体的な変貌を遂げる。このとき、アナキンが失った肉体に共生するミディ=クロリアンが解放され、クワイ=ガンの魂と呼応して、オビ=ワンたちの前に姿を現すと考えられないだろうか?そのとき、オビ=ワンとヨーダは初めて生きるフォースの重要性に気付き、肉体を消滅させる術を手にするのである。しかし、既にライトサイドのフォースと袂を分かったヴェイダーには、クワイ=ガンの姿を見ることはできない。だが、クワイ=ガンはヴェイダー、すなわちアナキンがいつの日か皇帝を倒し、フォースにバランスをもたらすと信じている。そして彼を見守り続け、ついに自らの信念が現実のものとなったことを見届けたのである。その後、クワイ=ガンはライトサイドへの帰還を果たしたアナキンの魂に触れ、約40年ぶりの再会を果たす。そして彼の姿をルークの意思の前に蘇らせることに成功したのだ。だが、マスター・クワイ=ガン・ジンという伝説のジェダイの存在を知らないルークには、彼の姿を見ることはできなかったのである。

総論

最初に述べたように、フォースの定義があいまいな現段階では推測的な要素が強い内容になってしまうが、ジェダイの肉体の消滅と霊体にかかわる筆者の考え方は以上のようなものである。すべての真実は『エピソードII』以降であきらかにされるはずであり、ルーカスもそれを明言している。しかし、ただ1つ現在でも確信を持てることがあるとすれば、それはクワイ=ガンこそが真のフォースを理解していた最高のジェダイ・マスターであるということだ。スター・ウォーズ・サーガはスカイウォーカー一族の物語ではあるが、その根底には常にクワイ=ガン・ジンという偉大なジェダイ・マスターの信念が見え隠れしているのである。

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