アクアリッシュは大きな髪のない頭、大きな目、内側へ曲がった牙を持つ、がっちりとしたヒューマノイドである。彼らには手の形状で容易に区別できる2つの異なった種族が存在する。大多数のアクアリッシュは器状のヒレのような手をしており、内側に収まる小さな親指以外には指が1本もない。もう一方の種族は5本の指からなる毛に覆われた手を持っており、指の先端には爪も生えている。
種族としてのアクアリッシュは汚らわしさと戦闘的かつ暴力的な気質を持っており、特に復讐に対する執念は一段と強い。
アクアリッシュの文化は2つの種族間の身体的特徴の違いによって決定づけられている。彼らの故郷アンドーは海洋に湿地帯の島が点在した巨大な青い地殻惑星であり、その随所にあるごくわずかな硬い陸地には岩肌が露出している。
アクアラ、すなわちヒレを持つアクアリッシュたちは、水生哺乳類から陸上哺乳類への進化の過程が部分的にしか終わっていない。したがって、アクアラたちは水の外での生活に完全に適応してはいるが、海に潜ったり、島やイカダ都市、巨大な帆船で生活することを好んでいる。彼らは投網漁によって豊富な海洋生物を収穫し、食料としている。
一方のクアラ、すなわち指を持つアクアリッシュ(彼らはこの惑星の住民の1割ほどしか存在しない)は完全に海から離れ、沼地やより大きな島の荒地で生活している。
やがて海産物の収穫量が少なくなると、アクアラたちはその責任を求めてクアラたちを告訴し、この抗争は何世代にもおよぶ内戦へと発展した。現在いる多くのアクアリッシュが概して好戦的なのは、こうした歴史によってもたらされた性質なのだ。もし、何者かがこの2種族に平和的解決を与えなかったならば、おそらくこの惑星の原住民たちは自らの手で絶滅の道をたどることになっていただろう。
しかしちょうどそのとき、他の惑星からやって来た1隻の宇宙船がこの内戦を終わらせ、アクアリッシュたちが自分たちの存在意義と解釈できる目的を差し出すことになった。その宇宙船の正体については謎が多く、コレリアンのものだと信じる者もいれば、デュロスの初期探索船だと主張する者もいる。彼らはこの「侵略」の理由になど興味を持たず、お互いの意見の違いを忘れ、憎悪と怒りを空から来た強力な訪問者に向けたのである。アクアリッシュたちは彼らの惑星への初めての訪問者を攻撃し、殺害したが、その宇宙船だけは極力無傷のまま慎重に残しておいた。その後の数十年間、彼らはその宇宙船を飛ばす方法を学び続けた。そして、ついに彼らはこの宇宙船を青写真とし、大規模な海底鉱山から発掘された資源を元に自分たち自身の宇宙船を完成させたのである。そして、アクアリッシュたちは憎悪を宇宙へと向けることになった。アンドーの姉妹惑星の荒廃した地表は、そこが彼らが最初に戦いを持ち込んだ場所であることを物語っている。まさに銀河系は彼らが自分たちの技術を必要以上に発展させなかったという事実に救われたのである。彼らは自分たちより進んだ装備を持つ種族と出会うたびに、その技術を適応させていたが、その過程には時間が掛かるため、残されるものはつぎはぎだらけの技術でしかなかったのだ。
そして、一大拡張期と呼ばれる時代、ついにアクアリッシュは共和国と対峙した。共和国は新たに発見したすべてのエイリアン種族に共同体への加盟を要請していたが、アクアリッシュにその気はまったくなかった。彼らは最初に訪れた共和国艦艇を不道徳にも警告無しで攻撃したのである。しかし、共和国艦艇はアクアリッシュの旧式なつぎはぎ船より頑丈で火力もあり、攻撃艇とその乗員をことごとく破壊した。これは小さな戦争にまで発展したが、アクアリッシュたちが和平を求めたところで戦いは終わったのだった。
アンドーは共和国に対して無条件降伏し、共和国はアクアリッシュのハイパースペース航行艦船に攻撃用兵器を取り付けないこと、アクアリッシュ政府に共和国元老院が任命した指導者と相談役を加えること、惑星とその住人が拡張銀河系社会の一員として共和国のために働く市民となることを要求した。アクアリッシュは驚きもせずにすべての要求を受け入れ、この取り決めの下で繁栄を続けた。彼らは新しい技能や技術のみならず、攻撃的な気質を集中させるより効果的な方法を学んだのだ。一方で、自分たちの生活に対する見方を変えることができなかった者たちは、新たな目的を求めて故郷を去っていったのである。
アクアリッシュは内戦を引き起こした科学的不均衡を是正するために共和国によって与えられた知識を活用し、近年になって貴重な海産資源の活用を再開した。そして、大量の海産食料品の輸出も行っている。
現在、アンドーは帝国の監視下に置かれているが、もし、彼らが再び攻撃的な種族に戻るようなことがあれば、帝国軍は速やかに惑星の平和回復に乗り出すか、あるいは、その攻撃的気質をより建設的な方向へと向けることだろう。
アクアリッシュは銀河系では珍しい種族だが、傭兵や賞金稼ぎ、ボディガードとして働いている姿を容易に見ることができる。さらに、彼らの中でもより知的な者たちは、暴力的な性格をコントロールすることによって戦闘的本能を忠実な決意に向け、それほどの才能はないまでも、十分な事務員や執政官としてなど様々な分野で活躍している。極めて少数のアクアリッシュには、その攻撃的な本性を覆し、実際に極めて有能な海洋生物学者や海洋科学者になっている者もいる。
アグノートは小惑星帯の中で凍るガスであろうと、灼熱の惑星核に解けている金属であろうとまったく関係ない採鉱能力を銀河中に知らしめている。小型で頑丈な彼らの身体は厳しい条件での長時間にわたる労働を可能にしているのだ。
豚に似たアグノートはアノート星系に属する惑星ジェンティスの原住種族であり、その全域に広がる辛うじて生き長らえることのできる土地で、原始的な植民地を形成して生活していた。しかし、星間航行技術を持っていなかった多くの種族がたどった運命と同様に、部族ごとに人間の商人や略奪者たちによって他の惑星に連れて行かれ、契約労働者や奴隷となったのである。
自ら発見したティバナ・ガスの採鉱のためベスピンに空中浮遊都市を建設しようとしたコレリアンの実業家エクレシス・フィグ卿は、この計画には安い賃金で働く肉体労働者が必要不可欠であると考えていた。そして、数年にわたってその労働力を捜し続けた彼は、ついにアグノートの3種族を見つけたのである。
フィグ卿はアーデン、ボットラット、イシッドの3種族をヴェルサー・リングの宇宙ステーションで一同に招集し、自分の構想通りの浮遊都市を建設してくれれば自由を与えるという魅力的な提案を差し出した。さらに、彼らとその子孫はこの植民都市で仕事と生活の場を与えられ、企業の利益を共有できるのである。提案が受け入れられたのは当然のことだった。
しかし、都市の完成後もフィグ卿の予想をはるかに上回る数のアグノートが仕事を求めてやって来るようになり、クラウド・シティは彼らの過剰な入植という問題に直面してしまった。都市の指導者たちは直ちにアグノートの入植を制限し、既に採掘で腕を上げ住み着いているアグノートたちを残して、他を引き払ったのである。しかし、残ったアグノートたちもクラウド・シティ側が思っているよりも愚かではなかった。彼らは手荒い扱いを受けた仲間たちへ仕事の斡旋を要求し、採掘作業のストライキを敢行したのである。
この事態に脅え、アグノートたちを静めようと考えた行政官らは彼らにさらに多くの入植を認め、採掘労働に関する協定を結んだ。しかし、当時の行政官は採掘企業の組織構成を内密に極めて難解なものにしてしまい、アグノートたちには理解できないようにしていたのである。より多くのアグノートが到着するに連れて個々の労働時間は短くなり、当然、賃金も減っていった。採掘企業は彼らの絶え間なく続く入植が労働力の過剰供給を産み出しているという幻覚を思い知らせたのである。
アグノートたちはこの事実を受け入れ、入植者も次第に減少していった。また、初期の頃からベスピンにいた入植者は多くがこの都市に留まったが、比較的新しい入植者たちはほとんど立ち去っていった。これは残ったアグノートたちにとってはむしろ平和な状況となり、彼らはクラウド・シティで家族を儲け、完全に都市の一部となったのである。長い年月を経てクラウド・シティ当局も彼らに慣用になり、アグノートたちはベスピンに自分たちの地区を手にするまでになった。彼らはいまだに下級労働に従事しているが、自分たち独自のビジネスに手を出す者も多くなり、ゴミ処理場や整備工場、保安部などで働いている者もいる。
アグノートたちは奴隷となる前から高貴な習慣と法を守り通していた。3種族はただちに部族間評議会を再興し、部族長を選出すると、それぞれの部族に適した役割分担を開始したのである。古い考え方は新しいものへと変わっていかなければならないが、3つの種族はいまだにお互いをまったくの別物と考えていた。アグノートたちは同族と働いているときの方が心地よく、事実、イシッド族は意地の悪いユーモアによって他の種族から見下されている。
アグノートの大半は採鉱地区に留まっており、およそ200年の生涯をようやく手に入れた居住地区と仕事場の行き来で過ごすことも珍しくない。また、採鉱地区の全域には古代の設計に基づく競技場が建設されており、彼らはそこで会合を開き、踊り、逸話を語り、そして闘っている。
長い年月を経て、アグノートの人口はクラウド・シティで人間に次いで多くなり、部族長たちも行政区画で過ごす時間が長くなっていった。さらに彼らは議会に代表を送り込むようにもなり、この都市に永住する権利を手にしたのである。高齢のアグノートたちは部族長が民衆との距離を置くべきではないと考えていたが、これによって今の生活を非現実的なものにしてはならないことも認識していた。
彼らの生まれ持っての技能も世代交代を続けるに連れて衰えていった。しかし、親は子に小惑星での採鉱技術やティバナ・ガスの採集法を指導し、技術をもった新しいアグノートたちが必要以上に増えると決闘によってその数を減らしたのである。子供たちは12歳になると仕事を継承する権利を巡って死の戦いに直面させられていた。このような野蛮な習慣が存在するにも関わらず、彼らはいたって平和的な種族である。口数の多い彼らの言葉は他の種族にとって理解が難しく、さらに部族長を除けばいたって他の種族に対して内面的である。
銀河系の人々は誤解しているが、アスカジアンが銀河の表舞台に立たされたのはごく最近のことである。彼らは平和的な未開の種族であり、子供たちと家庭で暮らすことを好んでいるのだ。
アスカージは熱風の吹き荒れる砂漠の惑星である。この惑星は日々賑わいを見せるアウター・リムのリマ交易ルート沿いに位置しているが、原住民たちが作るトムオンの毛を使った豪華な織物を買い付けに来る商人を除いては、ほとんど訪れる者はいない。
アスカジアンは人間に良く似た大柄な哺乳類型種族である。しかし、彼らは人間と違った独自の方法でこの厳しい環境に適応している。彼らは体内にある嚢に水分を蓄え、一度に数週間程度であれば、水を摂取しなくても生き延びることができるのだ。これらの嚢は水を満載させることで、アスカジアンの体をさらに大きく膨らませることになる。逆に水が不足したり、あまり厳しい環境でない場合は、アスカジアンは痩せ細った体形になる。また、アスカジアンは体内に蓄えた水の60%以上を失っても肉体機能を一切損なうことはなく、当然苦しむことはない。
また、アスカジアンの女性は通常一度に6人以上の子供を出産し、母親は子供たちのことをカブと呼んでいる。アスカジアンの女性は乳房を6つ持っており、6人の子に同時に母乳を与えることができる。
アスカージでは多数の部族が漠然と巨大な連合体を形成して存在しており、ときおりこうした連合体が集まって他の連合体との争いを行っている。多くの種族と同様に、アスカジアンもまた資源を巡って戦いを繰り広げているのだ。こうした資源はトムオンの大きな群れが頻繁に現れる土地であったり、戦略上重要な水脈のある土地であったりする場合が多い。なお、水脈が枯渇したり、あるいは大きな群れが他の地域に移動したりすると、当然その地での争いも場所を移動して行われるようになる。
アスカジアンの社会では、ほとんどの部族において頭に部族長が存在している。一部の地域では伝統的に男性が部族長の地位に就いているが、多くの場合は女性が部族の指導者の役割を果たしている。暴力的行為によって新しい権力者が誕生する場合を除けば、指導者の地位は世襲によって相続される。
アスカジアンの社会は主としてトムオンの群れの移動にあわせて形成されている。彼らはこの毛むくじゃらの大型草食動物のミルクや肉、毛皮だけでなく、スープ用に使う脂肪、糊に使う蹄や脊髄など、ほぼすべてを利用しているのだ。
アスカジアンはトムオン布の職人であるため、織り手は彼らの文化において重要な役割を果たしている。トムオンの毛織物は柔らかくて強く、皺になりにくいため、コアを始めとする銀河社会で非常に多くの需要があるのだ。アスカジアンの織物の技術は厳重に守られており、男女を問わず、織物の名人は部族でも特に重宝されている。ときとしてこうした腕のいい職人を巡って部族間の争いが起こるほどである。
踊り子もまたアスカジアンの文化における中心的存在である。踊り子は宗教的指導者と、部族の歴史と伝説の守護者の役割を兼ねている。部族のメンバーのほぼ全員が食料の調達と準備および道具類の作成を手伝う傍ら、才能ある踊り子の大半は部族長への助言、踊り、弟子への知識の伝達以外のことをほとんどしない賢者となるのだ。また、彼らは部族の呪い師の役割も果たしており、彼らの主神であるムーン・レディへの崇拝を指導している。
アドヴォーゼはほとんど毛のない頭部に大きな1本の角が生えたヒューマノイドである。皮膚の色は暗茶色で、耳は尖っており、両手両足にはそれぞれ4本の指しかない。
彼らの故郷リフロアは火山灰に満ちた深い大気に包まれており、この恒常的な霞によって太陽からの光が遮られている。アドヴォーゼはこうした光の欠如を補うために大きな黒い目を進化させたが、標準的な人間と同じ光量レベルにもそれほど苦労することなく適応させることができる。また、彼らは本質的に草食人種であり、肉類を消化するのが困難である。
アドヴォーゼは人生を1つの大災害であるという思想を好むという。彼らは優れた理性を持っているが、悲観的で怒りっぽく、懐疑心も強い。彼らの文化では疑うことが重んじられており、それこそが生存を保障する決め手だと考えられているのだ。
慣習的にアドヴォーゼは権力指向が強く、着手する仕事については詳細を全て学び、それが間接的にでも自分の人生に影響を与えるなら、意思決定における過程で自分の意見を主張する。その結果、ほとんどのアドヴォーゼは経営上の、もしくは官僚的な地位を切望し、実際に大勢が故郷だけでなく銀河系全域の政府や企業の上層部においてそのような職に就いている。
リフロアは地質学的に不安定な惑星である。地震や火山の噴火が頻繁に発生し、これらはもはや雨季のような季節的現象であると見なされている。3連星系に属するこの惑星の軌道は極端な楕円を描いており、3つの巨大な衛星の存在も大規模な地質学的隆起に大きく関与しているのだ。
リフロアの大気中にある厚い灰の層は、軌道によってもたらされる以上の温度低下を引き起こす。アドヴォーゼたちは間欠泉の近くに集落を築いて生活しており、厳しい冬の間は地熱から電力と熱を得ている。不幸にも、より暖かい地域はこの惑星で最も不安定な地域と一致しているのだ。彼らの都市は一定周期で災害に見舞われ、その度に再構築を迎える。そのため、ビルなどの建造物の多くが簡単に交換できるように作られており、ほとんど消耗品のように扱われている。実際、アドヴォーゼは物質的な所有権に全く関心を示さない。彼らにとって家は寝るための場所でしかなく、それが地震によって壊れれば、また別の家を建てればよいのだ。
このことは、彼らにあらゆる状況を最悪のものとして考える傾向があることを意味している。アドヴォーゼは広範囲な計画に重要性を置かない。彼らは機会があれば楽しもうと試みるのだ。
旧共和国がリフロアを発見し、その管理を引き継いだとき、多くのアドヴォーゼは歓喜した。近代テクノロジーは彼らの生活の安定化に役立ち、旧共和国、現在は帝国がもたらした建築技術と資材の向上によって何百万もの命が救われたのだ。しかし、現在の帝国の制度はアドヴォーゼの同意なしに方針を押し付けることが多く、これは結果的に抗議運動を引き起こし、帝国軍による無慈悲な鎮圧を招いている。
リフロアには惑星の統治を行う帝国軍総督が置かれ、外面上はアドヴォーゼの官僚の嘆願に耳を傾けようとしている。アドヴォーゼは銀河系にもたらされる秩序のために帝国を支持してはいるが、同時に最終的な自治決定権を奪われたことに対して怒りを抱いてもいる。
一方で、アドヴォーゼは反乱同盟軍の存在を差し迫った災害の兆しとして捉えている。事実、反乱軍になんらかの成功のチャンスがあると考えているアドヴォーゼはほんの一握りしかいなかった。リフロアにヤヴィンの戦いでデス・スターが破棄されたという知らせが届いたとき、彼らは帝国の技術に欠陥があったのだと受け止め、帝国に対する大規模な抗議が巻き起こった。もしアドヴォーゼがこの計画を監督していれば、このような欠陥は正せただろうというのだ。
アドヴォーゼの内政は悪意に満ちており、陰口が横行していた。通常、アドヴォーゼの政治家は物事に直接手を下すことを好まず、代わりに他人を操って汚い仕事をさせている。多くの指導者はスパイ網を構築しており、ライバルを恐喝することに長けている。彼らの政治の実体を見れば、多くの人々がその疑い深い本能を理解できるだろう。
アドヴォーゼはハイパードライブ、ドロイド、エネルギー兵器などの近代的銀河系テクノロジーに精通している。同時に、彼らは大きな道具は壊れやすいと考え、小さな携帯用のテクノロジーを好んで使用する。
リフロアにはイオン・ドライブの燃料となる放射性物質と希少なアイソトープが豊富に埋蔵されており、これらを用いた様々な産業が栄えている。しかし、こうした資源は帝国軍によって管理されており、帝国軍の輸送艇が定期的にリフロアを出入りしているのだ。また、帝国軍による法外な関税と入港料を回避するため、活発な密輸ネットワークも存在している。
多くのアドヴォーゼは帝国軍や銀河全域の官僚機構のなかに働き口を見つけている。彼ら種族が持つ残酷かつ日和見的な性質は、帝国軍への奉仕に対して有利に働いた。平均的なアドヴォーゼは些細なところにも目が届くため、有能な官僚として才能を発揮しているが、帝国軍のなかには種族全体を邪魔者扱いしている者も僅かながらに存在している。
アビシンは長い手足、細い筋肉質の身体、浅黒い日焼けした顔という特徴を持ったヒューマノイドである。上下の顎はわずかに突き出ており、口は漠然とした円形をしている。歯は大きく、その白さは顔の中で一際目立っている。彼らは雑食であり、外見上最も顕著な特徴は額の中央にある細長い瞳を持った1つの目である。
ビィスに原住するほかの動物と同様に、アビシンはこの惑星に様々な方法で適応しなければならなかった。そのなかで彼らが身に付けた最も興味深い能力は、自己再生能力である。アビシンは肉体的な損傷を受けても、死なない限りは急速に傷を回復させることができるのだ。回復に必要となる時間は傷の程度にもよるが、軽傷であれば数分、手足を完全に失った場合でも数日で蘇生してしまう。この素早い再生能力は傷を負った場合でも体内の貴重な水分を失わないように適応したものだと考えられており、砂漠地帯での有益な特性となっている。
アビシンの再生能力は細胞の成長率と交換率の高さによるものである。彼らの肉体は絶えず自分自身を消費しており、次々と新しい細胞が作られている。その結果、アビシンの体内では各細胞が80標準時間以内に新しいものと交換されるのだ。古い細胞は消化器系でリサイクルされ、原材料として新しい細胞の形成に使用されている。
アビシンの持つもう1つの興味深い特徴は、他の同じ大きさの生物と比べて体内器官の大きさが小さいことと、余計な器官を持っていないことである。アビシンは目、肺、腎臓などを1つずつしか持っていない。確かに各器官が1つでも、傷つけば再生能力によって急速に修復されるので構わないというのは事実である。しかし、これには2重化された器官で水を無駄にせず、水分を大切に使えるようにするための進化の手法という意味もあるのだ。
一般に、アビシンは1つしか器官を持たなくても、2つずつの器官を持つ種族と同じように働くことができる。例えばその目には2つのレンズと2重の焦点面があり、物体間の相対距離を掴むこともできる。しかし、こうした補正があっても、本当に2つの目を持った大抵の種族と比べた場合、認識力の点でやや劣るのは事実である。
遊牧民族であるアビシンの社会において最も顕著な特徴の1つは、かなりの割合で暴力が容認されることである。暴力が容認され、ときには奨励されるという事実は、アビシンの持つ自己再生能力によってもたらされる直接的な結果であると言える。かなりの深手を負っても数日で完治してしまうため、暴力による肉体的な損傷はアビシンにとってどうでもいいことなのだ。
アビシンの哲学における基本的信条は、宇宙が基本的に普遍であるということである。彼らは起こり得る現象に関係なく、最終的にはあらゆるものが適切な状態に戻るであろうと考えている。結果として、彼らは変化を扇動こそしないが、それを受け入れることに関しては寛容である。なぜなら、彼らは変化が永続するとは思ってもいないのだ。
アビシンの出身惑星であるビィスは、ビィスとアビスの2連星系に属する惑星であり、乾燥してはいるが、所々に肥沃な土地も存在している。惑星ビィスは2つの太陽の間を特殊な8字型の軌道を描いて回っており、それぞれの太陽との距離はビィスが巨大な引力によって破壊されてしまわないほどに離れている。ビィスが2つの太陽に挟まれた位置にくると、アビシンたちはこのときを「バーニング」呼ぶ。バーニングのときには夜が訪れず、天気は不安定になり、耐えがたいほどに暑くなる。
アビシンの住むビィスは、パルパティーン皇帝が個人的に所有する休息地であると噂された惑星とは別物である。この惑星は銀河系の全く別の場所にある乾燥した灼熱の砂漠惑星なのだ。ビィスに存在する植物の多くは地中深くにある水分を吸収するために、大きな主根を発達させている。事実、これらの植物にとっては「バーニング」が有益に働いており、2つの太陽から発せられる激しい陽光を受け、急速かつ自由な成長を遂げている。
ビィスの動物にとっての主要な水源は、砂漠全体に散在する自噴泉である。もちろんこうしたオアシスを巡る縄張り争いは非常に激しいため、大部分の動物たちは保管用のこぶや脂肪分を閉じ込める液体層などの洗練された水分保持機能を発達させている。そのため、彼らは頻繁にオアシスを訪れたり、水を巡って争ったりすることなしに、長期間生き延びることができるのである。
ビィスの動物たちは厳しい自然環境に適応するため、さらにいくつかの特殊な能力を発展させている。彼らの多くはバーニングが訪れると一斉に冬眠を開始するが、なかには最初から一生を地中で過ごしている動物もおり、植物の根を掘ってそれを食糧や水源としている。他の多くの動物は、単純に苦しまずに体内水分量の激変に耐えられるようになっているだけである。
アビシンは30から40人の(ほぼ常に最も凶暴かつ利口な戦士にとって導かれた)部族単位でビィスの広大な砂漠を放浪し、あるオアシスから次のオアシスまで、ゴーント(肉、皮、ミルク、骨などを重宝する有益で愚鈍な生物)の群れと共に移動している。2つの部族がお互いに使いたいと思う泉で出会うと、「取引き」または「血闘」のどちらかが発生する。
通常、水や食糧が豊富にあれば、それぞれの部族長は取引きに同意し、ゴーント、武器、若い男女などが部族間で交換される。
だが、水や食糧が乏しい場合には、ほぼ常に血闘が繰り広げられる。血闘は通常、水を得る権利を巡って争われ、どちらかの部族の戦士が全滅するか、あるいは不能になるまで果てしなく続けられる(または追い払われるか、捕らえられた場合にも終結するが、それはアビシンにとって殺されたのと同等である)。そして、勝利した部族長は敗れた部族の生存者に対して好きなことを何でもすることができる。殺すことも、持ち物を奪うことも、釈放することも、自分の部族に組み入れることも、全て思うがままにできるのだ。最も多いケースでは、勇敢に戦った戦士が勝利した部族の一員として迎えられる。他者を自分の部族に加えなければ、部族長(女性も部族長になれるが、極めて少数である)は将来の血闘において自分たちに良い取引きや幸運を期待できないのだ。
しかし、血闘は部族間のみで起こり得るものではない。大抵のアビシンはどちらか一方が意識を失った時点で戦うのを止めるが、ときとして2人のアビシンがお互いに激しい敵意を抱くと、両者は個人間の血闘に合意したことになり、いずれか一方が死ぬまで戦い続ける。そして部族間の血闘と同様に、勝者が敗者の所有物を手に入れるのだ。
おそらくアビシンの一生において暴力に支配されていない唯一の一面は、求愛と結婚である。毎年2回、彼らはジャファイと呼ばれる婚姻競争を開催する。成人への通過儀礼を完了したばかりの女性が自由に走り回らされ、若い独身男性にはそれを追跡する許可が与えられるのだ。女性は最初に捕まえた男性のものとなり、両者は一生連れ添うことになる(しかし実際には、女性は概して男性より足が速く、彼女たちが走る速度は真後ろにいる男性への想いに影響されることが多い)。
アビシンの寿命は300標準年を超えるが、晩年になると再生能力も衰えてくる。通常、再生できなくなったアビシンは自発的に砂漠へ向かい、自殺するが、こうした慣習を頑なに拒否する老アビシンの例も実在する。こうした場合、「老人」は乱暴かつ儀式的に石を投げつけられ、身体が再生すれば部族に留まることを許される。だがそうでなければ、彼は部族から追放され、彼が荒地に向かう決心をつけるまで、あるいは死ぬまで、定期的に石を投げつけられることになる。
当初、彼らは外界人を対立する部族と混同し、この惑星への初期の訪問者を大きく混乱させていた。アビシンと外界人が出会った自噴泉が部族長によって水が乏しいと判断された場所であれば、血闘が宣言され、水が豊富であれば取引きが宣言されていたのだ。しかし、ついにはアルコーナの貿易商(彼も砂漠環境における水の重要性については熟知していた)もアビシンの行動の背景にある理論や動機を理解し、水が豊かなオアシスのみに着陸するようになったのである。
しかし、こうした商人たちも、ビィスにはほとんど関心を抱かなかった。残念なことにビィスの主要な輸出品は奴隷であるが、植物学者たちは他の不毛な惑星のものより更に丈夫なビィス産植物の移植に大きな関心を寄せていた。また、ゴーントの肉も限定的な人気を持つグルメ食材となった。
アビシンは植物を原材料とした原始的な道具を作っていたが、銀河系のテクノロジーを垣間見てもそれらにはほとんど関心を抱かず、何千年も続く今まで通りの生活をより好んでいる。
故郷を離れるアビシンはほとんどいない。したがって、ビィス以外の惑星で見られるアビシンは単純な肉体労働に従事する奴隷か、または元奴隷である。なかには傭兵や闘技場で戦う戦士として働いている者もいるが、より博学なアビシンはボディガードを選ぶことが多い(だが、この仕事は彼らの気性にはあわないことが多い)。
銀河社会へのアビシンの進出は、トラブル続きだった。彼らの暴力志向は無数の誤解を生じさせ、その多くは死を招くことになった。さらに、アビシンを個人的な血闘に駆り立てる最も確実な方法は、彼らを「モノック」と呼ぶことである。これは「単眼」の略語であり、社会的意識と気品が欠如した2つ目の生物がアビシンに付けた別称なのだ。
ビィスを離れたアビシンたちは同じ種族同士で集まることを好んでいる。その主な理由は、再生能力を持った生物同士でなければ攻撃本能を表現することができないと考えているからである。
平均して2メートルから3メートルという長身のアマニンは、長い幌に覆われた首と薄い平らな胴体を持ったヒューマノイドである。腕と指も胴体と同じように薄べったいが、腿は短くて太く、その先からは巨大な足が生えている。実際にアマニンが動いているところを見るまでは、誰もが彼らを愚鈍な生物だと思うだろう。しかし、彼らは木登りや回転など、運動の主要な形態に完全に適応しているのだ。他の種族の多くは、イソーリアンを「ハンマーヘッド」と呼ぶのと同様に、彼らのことを「アマナマン」と呼んでいるが、彼らはそのことについて何も気にしてはいないらしい。
アマニンは皺の寄った濃黄色の皮膚をしているが、首から足にかけて垂れている後部のフードは緑色をしている。目は小さくて黒く、口も同様に小さい。さらに、他の種族には事実上、彼らの性別を見分けることができない。
彼らは惑星マリダンの小高い樹上に家を建てて生活する樹上民族であり、その長い腕を使って枝から枝へと移動を行っている。彼らはマリダンの平原と森林の両方に棲息する鳥類や動物たちの群れを狩猟しているが、チャーノクと呼ばれる肉食爬虫類はマリダンで唯一アマニンを脅かしている生物であり、木登りの能力や跳躍力が極めて発展している。
一方で、アマニンは平原での運動能力も優れている。歩行速度は痛々しいほどに遅いが、彼らは自分の体をボールのように見立てて転がることができるのだ。彼らは力強い背筋力を使って時速50キロメートルもの速さで転がるが、この状態では周りの状況を確認することができない。他の種族はこの動きをしばしば驚異の目で見るが、アマニンはこの動きを獲物に接近するときのみに使い、獲物を仕留めるときにも転がるわけではない。
アマニンの体は重要な臓器が非常に小さく、体全体に拡散しているため、極めて死ににくい構造だと言える。彼らは心臓、肝臓、肺などの主要な臓器を複数備えているので、極度の損傷にも耐え、生き残ることができるのだ。さらには脳さえも全身に広がるいくつもの異なった神経集合体の束によって構成されている。
アマニンは自分たちの単純な生活を楽しむ誇り高い種族である。多くは温厚な性質だが、いったん怒りが吹き出すとその気性は凄まじいものになる。また、彼らはユーモアのセンスにも溢れているが、他の標準的な種族にはしばしば病的に写ることもある。
アマニンには他の種族のように時間を記録するという習慣がなく、彼らが時刻を見るのは初めと終わりの2回だけである。彼らは他の生物に時間を説明しようとするとき、過去の出来事と関連させることによってそれを表す。
アマニンの集団の指導者は、過去の出来事を口述で伝えるシャーマンか、もしくは伝道師であり、それぞれの社交集団は通常、巨大な森林によって結ばれているマリダンの小さな森林を支配している。ときおりこれらの森林は海岸や他の地形に隣接しているが、アマニンは森林以外の地形をすべてグランタックという同一の言葉で表現している。集団が森林に対して大きくなりすぎ、自分たちを支えられなくなると、余剰な若い男女が他の森林を探すためにグランタックを離れ、見つけるとそこで生活している集団から奪い取ろうとする。この戦いはタキタルと呼ばれ、伝道師が伝える伝承の多くはこの戦いによって構成されている。
マリダンが帝国によって発見されたのは十数年前のことである。アマニンは外界人との最初の接触に際し、好奇心と興味の反応を示した。やがて帝国はマリダンにいくつかの採掘調査施設を設置し、護衛のため小規模な駐留部隊を設立した。そして、そこで任務に就いていた帝国軍将校の1人が、アマニンの貴重な労働力を無駄に費やしていることに気づいたのである。彼は数人の伝導者と接触し、タキタルの際に相手のアマニンを捕らえて帝国に引き渡せば、協力した集団の森林に帝国軍は危害を加えないという取引きを申し出る。ほとんどの伝道師はそれを拒否したが、たった1人だけ欲のために取引きに応じた者がいた。そしてほんの数年の間に、かつて穏やかだったアマニンたちは用心深く、かつ凶暴になり、銀河の反対側にある帝国軍の労働施設でアマニンの奴隷が見られるようになったのである。最近では帝国もその注意を他の星系に逸らすようになり、マリダン駐留部隊の規模も劇的に減少している。
この惑星の見捨てられた宇宙港は密輸業者や他の小規模な私的グループに引き継がれている。ジャバ・ザ・ハットの密輸組織もマリダンに影響を及ぼした多くの組織の1つである。少数のアマニンは森林から新設された宇宙港都市へと移動を開始し、特に若者の多くはマリダンのタキタルの伝統から離れていった。多くの伝道師たちはこうした変化をすべて腐敗の予兆と見なし、惑星を変化させようとする出来事をもみ消そうと努力している。しかし、その中には祝福の儀式を実践したり、「神秘的な」装飾品を外界人に販売している者もおり、実際にこうした伝道師たちは成功を収めている。宇宙港に住んでいるアマニンにはブラスターを持って森林に帰る者もおり、彼らはこの「新しい魔法」で部族を支配しているのだ。また、宇宙旅行から帰ってきたアマニンも若い世代を興奮させ、若者の多くは森林の向う側にある未知の世界を求めて惑星を離れようとしている。
アマニンは銀河政治の正しい概念を持っていない。大部分は部族と伝道師に忠誠を誓っているか、あるいは雇用者や仲間として新しい伝道師に仕えている。
故郷にいるアマニンは原始的な道具を用いて、基本的な農業を営んでいるが、彼らは近代的な装置の使い方を学んでいる途中であり、多くの装置を懐疑心と恐怖の目で見ている。
マリダンで最も有用な資源は、アマニンたち自身である。彼らは奴隷状態を伝道師との長期にわたる信頼関係の一種として受け止めているため、アマニンを扱う奴隷商人たちは彼らを容易に支配できるのだ。
現在、アマニンの姿は銀河全域で見ることができ、その多くは重労働者や傭兵、荒野の偵察隊員として働いている。他種族は原始的種族の大半が既に滅んだと冗談を言っているが、アマニンは冒険や伝承を求めて時間を費やしているのである。
小柄なアリーナは、体の小ささを真の勇気と気力で補っている。アリーナは年齢と共にわずかに霞む青い肌、2つの目、平らで幅広の鼻、絶え間ない笑みで上向きに見える人間によく似た口、顔から後方へ伸びる長い頭骨を有した小型爬虫類型種族である。彼らは家族の絆が極めて強く、故郷以外の惑星でも、家族単位で旅している姿をよく見かけることができる。彼らの本来の故郷はインナー・リムの惑星アリーンであり、アリーナたちは素早い反射神経と、より素早い反応が要求される極めて厳しい環境で成長する。アリーナは代謝機能を発達させることで、他の多くの種族よりも素早く食料をエネルギーに変換することができるのだ。そのため、彼らは故郷に生息するサグキャッチャーなどの極めて敏捷な捕食動物からも逃げ切ることができる。しかし、アリーナの肉味は単調でスパイシーであるため、それほど魅力的ではなく、捕食者の舌を幾度となく麻痺させることになる。
アリーナはその敏捷性から、ポッドレース・サーキットで数々の成功を収めている。だが、彼らが原因となり、ポッドレースが違法行為とされた惑星も少なからず存在する。事実、タトゥイーンのブーンタ・イヴ・クラシックで父ラッツ・ティレルを失ったデランド ”パブズ” ティレルは、ポッドレースを非合法とすることを目的としたラッツ・ティレル基金を設立した。この試みはいくつかの惑星で成果を挙げたが、やがてデランドの運動は非人類の活動を弾圧するための、政府による口実であると噂されるようになる。しかし、この噂は旧共和国のパルパティーン議長(当時)による声明によって繰り返し否定されていた。