カミーノアンはどんよりとした目、長い首、青白い肌をした長身のエイリアンである。カミーノアンの男性は頭に突起した鬣状のヒレを持っており、このことから彼らの進化の起源がカミーノの海洋であることが分かる。カミーノアンは支柱に支えられた都市に暮らしており、なかでもティポカ・シティには最も多くの人口が集まっている。
カミーノアンの存在を知る者は選ばれたごく僅かな者のみであり、彼らはそうした人々から銀河系における卓越したクローン職人として認識されている。穏やかで無邪気に見えるカミーノアンは高度な科学技術を有しており、無数の種族の遺伝子操作に精通している。彼らは過去に武装した軍隊の製造という倫理的問題のある受注を行った。だが、彼らは職人としての結果について考えるようなことはせず、自分たちの仕事に誇りを持っている。
彼らが製造したクローン軍のなかでも最大かつ最もよく知られた製品は、共和国のために特別に製造されたものである。ジェダイ・マスター、サイフォ=ディアスから発注を受けたカミーノアンは、人間で構成された軍隊の素材として賞金稼ぎのジャンゴ・フェットを利用した。その結果完成した軍隊は、攻撃、スピード、効率のすべての面において優秀なものだった。
惑星カミーノが氷河期から抜け出し、解けた氷によって海洋が増大したとき、原住民たちは環境の激変に適応することを余儀なくされた。絶滅の危機に立たされたカミーノアンはクローニング技術を完成させ、種の保存のために選択的な繁殖を実践したのである。
こうした生存への努力から、カミーノアンは徐々に他の文化において一般的な物質主義を厳格に拒絶するようになっていった。カミーノアンの都市を歩けば、表面上無色の壁や建造物が必要最小限に納まっていることが分かるだろう。しかし、紫外線スペクトルを見ることができる種族であれば、カミーノアンが実際に装飾的センスを持ち合わせていることにも気づくことができるのだ。
カミーノは天然資源に乏しいため、カミーノアンは彼らの遺伝子技術を提供し、必要な物資を得ていた。事実、サブテレルの採鉱植民地ではカミーノ産のクローン労働者が多数雇われている。
外見上は礼儀正しいが、カミーノアンには欠陥に対する極度な不耐性がある。彼らはこのような欠陥を理想的な遺伝子集合に対する潜在的な害であると見なしているのだ。彼らは生化学におけるあらゆる観点からクローン計画を慎重に監視しており、不安定なクローンを標準的な状態に引き戻すため、広範囲な調整を行っている。
カミーノアンは自分たちの社会に必要なものを輸入する以外には、星系外の生命にほとんど関心を抱いていない。彼らは銀河系での出来事から隔離されており、自分たちの行動が外界に及ぼす影響についてもまったく考えていないのだ。
怪力と残虐さで知られるガモーリアンは緑色の皮膚をもつ豚に似たヒューマノイドである。成熟した男性の身長はおよそ1.8メートルあり、体重は100キロを超える。鼻と顎は豚によく似ており、小さな角と牙も生やしている。彼らは天性の怪力に加えてさらに肉体を鍛練しているため、傭兵や重労働者に非常に適している。
ガモーリアンはエイリアンの言語のほとんどを理解することができるが、彼ら自身は声帯が特殊な構造をしているため自分たちの言葉しか発することができない。ガモール語は豚の唸り声や叫び声とよく似ており、単調であるため他の種族には非常に理解しにくいが、彼ら自身にとっては複雑かつ多様な通信形態となっている。
ガモールは氷原から森林に至るまでの様々な環境をもつ快適な惑星である。しかし、自然環境に恵まれている一方で、ガモールの歴史は戦いの連続だった。単純に、ガモーリアンたちは物を破壊したり他人を痛めつけたりすることが大好きなのだ。
ガモーリアンの習慣では、あらゆる生産的な仕事が女性に割り当てられている。女は畑仕事、狩り、裁縫、武器の製造、行商などを行い、男はひたすら鍛練や戦いに明け暮れている。
ガモーリアンは部族単位で生活しており、各部族の女部族長が他の部族との同盟を結び、その関係を支配している。そして、春先から晩秋にかけての戦いの季節になると、彼女たちは男に戦闘開始の命令を与えるのだ。
ガモーリアンは剣、斧、槌などの重たい原始的な武器の扱いに長けている。しかし、銀河系全域で繰り広げられている近代的な戦争を目の当たりにすると、彼らもブラスターの有益さに気付くようになった。このとき以来、男たちは高度な武器を手に入れるため進んで大量の外貨を稼げる傭兵になり始めたが、ガモールでの戦いでこのようなエネルギー兵器を使用することは蛮行であるとも考えられている。
また、ガモールにはモートと呼ばれる寄生虫も棲息している。野ネズミほどの大きさのモートは生物の血を吸って生きており、その長い生涯を宿り主と共に生き、大きく成長する。奇妙なことにガモーリアンはモートを可愛がっており、彼らをペットとして自らの地位を表す勲章としている。特に闘将や女部族長などの裕福な階層にいるガモーリアンは、20匹以上のモートを寄生させていることも珍しくない。銀河系で彼らが公然とした愛情を示す生物はこのモートだけである。
初めてガモールに着陸した商業船は、5つの部族を壮絶な争いに巻き込むほどの獲物となった。乗員たちは船を手にする権利を賭けた5部族の戦いに釘付けとなり、虐殺の現場から勝者が姿を現したのは2日後のことだった。そのガモーリアンたちは満足げに船に近づくと、それを粉々に粉砕したのだった。このような出来事は7回ほど繰り返され、ついに商人たちも船に重武装を行うようになった。彼らの新しい任務は貿易ではなく、ガモーリアンたちを奴隷として捕獲することだったのだ。
ガモーリアンたちが金を求めて宇宙へ進出したのもその直後のことだった。彼らは衛兵、兵士、傭兵、賞金稼ぎなどをして働き、事実、ガモーリアンにとってこれほど楽しいことはなかった。
ガモーリアンは金になる楽しい仕事であれば誰のためにでも働き、争いごとに参加できるのであれば喜んで奴隷にもなる。しかし、彼らを雇うには契約上の難点が1つある。ガモーリアンとの取引きはすべてが血で清算され、その上、闘将たちは伝統的に新入りたちを互いに戦わせることによってテストするのだ。そのため、ガモーリアン労働者を採用する場合には同様のテストを行う必要があり、固い契約を結ぶには力のある雇用主が自らの腕力を誇示しなければならない。雇用主が非力であれば、ガモーリアンは彼のために働く価値はないと判断してしまう。ガモーリアンたちは暴力を真に尊敬しているのである。
帝国軍はガモーリアンたちを奴隷として利用しており、同様に多くの犯罪組織も彼らを衛兵や兵士として雇っている。一方で、反乱軍にとってはそれほど役立ってはいないが、ガモーリアンたちは淡々とその機会を伺っている。
カリーシュは惑星カリーに原住する爬虫類型ヒューマノイドである。彼らは赤茶色の鱗の生えた皮膚、4本指の手、膝が逆に曲がった足、鉤爪の生えた爪先を有している。また、カリーシュの両手には、2本の向かい合わせにできる指が生えている。さらに彼らには牙もあり、歯の両側から1本ずつ飛び出している。
ヤヴィンの戦いの少なくとも50年前、共和国は非加盟惑星だったビットセイヴリアンの故郷、ガイテイカと緊迫した関係にあった。そして交渉の決裂から数年後、共和国の支援を受けた兵士は故郷に共和国への加盟を強いるべく、ガイテイカの指導者に対するクーデターを企てる。この目論見は失敗に終わったが、結果としてガイテイカに大規模な武力衝突の急増と、カドック領域周辺のすべての共和国ステーションに対する敵対行為を生じさせることになったのだった。
ビットセイヴリアン・スペースの末端付近にあるカリーは、共和国から僻地とみなされ、ほとんど無視されていた惑星だった。そのことはビットセイヴリアン軍にも知られており、したがってカリーはムヤルフォラック・オーダーからも一切脅威としてみなされていなかったのである。しかし、共和国陣営は反乱を秘密の状態にしておきたいと考えており、むしろカリーシュたち自身の軍にそれを処理させることによって騒乱を起こし、カリーシュに彼らが危機に瀕していると確信させていたのだった。共和国は惑星へ密かに軍事教官のグループを送り込み、カリーシュの複数の部族を訓練した(この結果、人気機種だった射撃用武器、ザーカ社製アウトランド・ライフルがカリーに広まることになる)。さらに、彼らはジェダイ評議会から派遣されたジェダイ・ナイトの小グループの支援を得て、共和国の認識する脅威を終わらせたのである。このときカイメイン・ジャイ・シーラル(後のグリーヴァス将軍)の祖母もカリーシュの攻撃に参加している。
ハック戦争はクローン大戦に先立って行われた長期にわたる抗争である。この戦いはカリーに隣接する惑星ハックのヤムリが、人口の増加によって近隣惑星の征服および植民地化を開始し、ついにカリーへと触手を伸ばした際に開始された。シーラルとロンデルー・リジ・カマーに率いられたカリーシュは、数々の流血の戦いによって侵略者に抵抗し、双方に無数の犠牲者を生じさせることになる。
そしてカリーからヤムリが一掃されると、シーラルは配下の戦士たちを引き連れてヤムリの植民惑星を襲撃し、戦士だけでなく市民に対しても大量殺戮を行ったのだった。ついにヤムリは共和国の介入を求めて元老院に嘆願を行い、戦争を終わらせるためにジェダイが派遣されることになる。元老院はカリーに厳しい制裁措置を行い、この惑星に深刻な経済危機をもたらしたのだった。
カリーシュは信仰心の強い種族であり、多くの神を信じると共に、それらを祭る多くの寺院を建立しているが、その中でも最も神聖とされるのがシュラパックと呼ばれる寺院である。新共和国の時代には、かつてのグリーヴァス将軍も種族の宗教的な神々の1人として加えられている。また、彼らの社会はリグをはじめとする多くの部族に分かれており、一夫多妻制のもとに多くの子供を儲けることで知られている。
彼らにとって戦争は重要かつ神聖な慣習であり、様々な部族間で報復を繰り返す行為は、彼らの文化において大きな名誉とされている。しかし、必要とあれば、各部族は互いの差異を忘れ、共通の敵を排除するために結束することもある。
ギヴィンの外見はヒューマノイド種族の生きたガイコツのように見える。なぜなら、多くの脊椎動物と異なり、彼らは体の外側に骨白色の骨格を形成しているのだ。顔にある大きな3角形の眼窩は永続的な悲しさと苦渋に満ちた表情を表しており、不満げに開いた小さな口もその印象を増加させているだけである。ギヴィンの輪郭は一般的なヒューマノイドと同じだが、やや細めで管が目立ち、奇妙に曲がる関節を有している。彼らの手足は爬虫類のように体から「突き出て」おり、あたかもトゥイレックの紐人形であるかのように見える。
ギヴィンは団結力の強い種族であり、真空に耐えることのできない他の全ての種族を自分たちより劣っていると考え、嫌悪の対象としている。だが、もちろん例外も存在し、ドゥイヌオグウィンなどは大きな尊敬の対象である。
一部のギヴィンを除けば彼らは他種族に対して排他的であり、気安く付き合えるのはデュロスやヴァーパインだけである。この2種族には共に造船を得意とした種族だという特徴があり、ギヴィンにも共通する点が多い。同じようにモン・カラマリも宇宙船造船技術に最も長けた種族の1つだが、ギヴィンは彼らとうまく付き合うことができない。なぜなら両者の間にある設計哲学の差異は大きく、ギヴィンにはどうしても彼らの思想を受け入れることができないのだ。
ギヴィンの出身惑星ヤグダルは、小型高密度の惑星である。3つの巨大な衛星と、ゆっくりとした自転の相乗効果によって、この惑星は銀河系で最も厳しい潮流に晒されている。ヤグダルの自転周期は175標準時間だが、ヤグダルと3つの衛星が相互に軌道を周回するには53標準時間しか掛からない。つまり、ヤグダルの1ヶ月は1日より122標準時間短く、さらに惑星は月の軌道に逆らって回転している。したがって、ヤグダルでは海洋や大気までもが惑星の一方の側から反対側へと流動しており、そのパターンは高度な数学的手法を用いなければ予測することができないのだ。
ギヴィンとヤグダルの進化を理解するためには、この惑星の予測できない大規模な潮流効果に関する完全な認識が必要となる。ある瞬間、穏やかな海のそばに立ち、瞑想に耽りながら湖面に浮かぶ花や、はしゃぎ回る水棲動物たちの姿を見つめていたとしよう。だがその1時間後、ヤグダルの3つの衛星がもたらす破壊的な引力によって湖面は溢れ返り、花や動物たちは流され、周りの大気までもが運び去られてしまうのだ。2時間もすると、湖に残存するすべてのものが真空に晒され、一面が氷の荒野となる。
ヤグダルに生きる生物たちはこの予測できない環境で生き残るため、2つの基本戦略を身に付けている。1つ目の方法は可動性を維持すること、すなわち水と空気が惑星の反対側に流動したとき、それと一緒になって移動することである。この方法の利点は、各生物が決して過酷な真空状態に晒されないということだ。逆に欠点は、予測不能な潮流のために繁殖、食事、光合成などの定期的サイクルが確立しづらいことである。さらに、潮流によっては生物たちを1日で極地へと追いやり、次の瞬間には蒸し暑い赤道直下へと運んでしまうだろう。こうした急激かつ極端な変化を生き延びるには、それぞれに相当な試練が要求される。
真空から身を守るために生命が編み出したもう1つの戦略は、ギヴィンの祖先の進化に貢献した。彼らの外骨格は柔軟な膜によって相互接続された不浸透性の骨盤で構成されており、実質的には有機体で作られた耐真空スーツなのである(これらは全身の開口部を塞ぐ役目も併せ持っている)。骨格の内部では蓄えられた脂肪分から必要となるエネルギーすべてを得られるため、ギヴィンは呼吸をする必要もない。
しかし、この解決策は不完全である。ギヴィンの体が生理学的に複雑になるにつれ、エネルギー要求量も増加していった。そのため、大気が戻るまでの間、外骨格の中で待ち続けることが不可能になってきている。冷血爬虫類は無限に肉体機能を停止させることができるが、ギヴィンのような温血生物は蓄えられたエネルギーすべてを急速に消費してしまうのだ。
ギヴィンはより知的に進化するにつれ、潮流のパターンが予測可能であると認識するようになった。高度な数学と、惑星および衛星の軌道を示す法則を駆使し、彼らは潮流が溢れる正確な時間、方向、そして継続時間を予測できるようになったのだ。
当然のごとく、数学の研究はギヴィンにとって宗教のような存在となった。数学法則は彼らが生きるための規範となり、「超越数学」の実践、および未来を予測する数式を発展させる司祭までもが登場するようになったのである。
ギヴィンの社会で最も大きな権力を持ち、最も尊敬されているのは数学者である。最も優秀なギヴィンの若者たちは、数学の研究を専門に行う修道院へ入学する権利を求め、数学コンテストで競い合っている。彼らはそこで2次方程式、量子論、非線型方程式などの熱心な研究と応用に励んでおり、生命の持つ数学的意味など、最も複雑な生命の方程式を解くことを目指している。そして彼らは少なくとも、自分たちの集落における指導者になりたいと願っているのだ。
いくつかの理由があるが、ギヴィンは外界人に対して著しい不信感を抱いている。肉が外側に晒された姿と対面すると、彼らは潮流の氾濫が発生する前に開口部を塞ぐという感覚が欠如した相手と話しているような錯覚を覚えるのだ。一般にギヴィンは礼儀正しいが、同時に外界人を極度に失礼な存在だと感じている。礼儀正しいギヴィンの社会では挨拶代わりに単純な2次方程式の計算が用いられているが、外界人にはほとんどいつも無礼に拒否されているのだ。
数学者は最大の権力者であり、ギヴィンの社会では大きな尊敬を集めているが、これはおそらく銀河系で唯一の数学的民主主義の実例だろう。惑星の指導者は一連の多次元微分計算に関するコンテストによって選出され、あらゆる政治的決定がヌルモデル確率論に基づくガイドラインにしたがって行われている。
ギヴィンの社会は数学による絶対的洞察力によって極めて高度なテクノロジーを発達させた。彼らの都市には惑星の潮流による甚大な被害にも耐え得る機密性の建造物が並んでいる。また、ギヴィンの司祭たちは潮流の発生を正確に予測しており、潮流のないときには定期的な深海採掘が行われている。
ギヴィンは輸送業に深く関わっており、銀河系の至るところでその姿を見ることができる。そして、彼らは銀河系で最も洗練された、最も高速な宇宙船を所有している。しかし、これらの船は他の種族にはほとんど役に立たない。ギヴィンは重量の節約と積載量の確保のために自分たちの特殊な生理機能を最大限に活用しており、機密部分を寝室だけにしているのだ。
同じく、他の種族たちはギヴィンの所有するナビゲーション装備が使用不可能であることを知っている。ギヴィンは自分たちの頭でハイパースペース・ジャンプの軌道計算を行うため、コンピュータの中にはデータ記憶媒体しか組み込まれていないのだ。
キトナックは銀河系で最も丈夫な種族の1つである。彼らの硬い革のような皮膚は極度な擦り傷以外のあらゆる外傷に耐えることができ、全身を保護する天然の鎧として機能している。事実、手足を除けば彼らの体にはこれといった弱点が存在しない。また、キトナックは2本のずんぐりとした腕を持っており、それぞれに生えている4本の指は太くて短いが、驚くほどに器用である。キノコの房のような頭には2つの目と耳、1つの口が付いているが、注意深く観察しなければ何も分からないくらい見事に隠されている。
キトナックは行動するより待つことを好む、極めて忍耐強い生物である。実際に、キトナックを怒らせる数少ない原因は他の種族の苛立ちなのだ。仮に相手が急いでいても、彼らは断固として通常の歩調よりゆっくりとしたペースで行動し、自分たちを待たせようとする。
キトナックは彼らの原住惑星キアドIIIでの生活に完璧に順応している。この灼熱の砂漠惑星は白砂の海、赤くひび割れた土の海洋、岩の断崖、明るいオレンジ色の丘で埋め尽くされている。キトナックは白砂の砂丘海で生活しているが、そこにはときおり、時速400キロメートルもの暴風が吹き荒れる。時速200キロメートル程度の穏やかな嵐の中では、彼らは足を止め、流線形の頭を風にもたれ掛けているだけである。他の生物たちが避難するような突風のときでさえ、太い指でできた森のように何百人ものキトナックが勇敢に立っている姿を目撃することは珍しくない。しかし、岩が風で飛び始めると、さすがのキトナックも砂を掘り、砂丘の中に潜ってしまう。
キトナックは皮膚の頑丈さと同じくらいのんきな性格をしており、彼らが急いで何かをするようなことはほとんどない。それは彼らが怠け者であるからではなく、単に待つことに対して長けているだけなのだ。また、キトナックは酸素を貯えるための予備の肺を持っており、2、3標準時間は通常の呼吸をしなくても耐えることができる。さらに数週間食糧がなくても生きられる脂肪貯蔵器官もあるため、彼らは食糧調達するときも、単に獲物がやってくるまでじっと立って待っているだけでいいのだ。
キトナックは捕食するために近視で動きののろいチューバが好むサルファロ草に成りすまし、餌場でじっと立っている。夜明けになると体長50センチほどのチューバが砂の穴から出てきて、サルファロ草を探し始める。やがてチューバはおとなしくしているキトナックに登り、鳥たちがよく巣を作るサルファロ草の空洞に似た、大きく開いた口の中へと進んでいく。彼らは朝食のために鳥の巣を探しているのだが、逆にキトナックの朝食になってしまうのだ。1匹のチューバはキトナックにとって1標準ヶ月分以上の栄養源となるため、その月にはこれ以上何も食べる必要がなく、彼らはそれを持ち前の忍耐でゆっくりと消化する。
放浪種族であるキトナックは移動するチューバを探しながら、およそ100人からなる小規模な部族で砂漠を徘徊し、チューバのゆっくりとした動きに併せてゆっくりと移動する。彼らはうずくまって滑るようにしながら砂漠の上を移動することができ、こうした動作は砂漠に潜ることにも役立つが、彼らはどちらかと言えば「歩く」ことを好んでいる。実際、キトナックの足は筋肉質であるが、「歩く」ときには足を動かすのではなく、足の裏の突起を伸び縮みさせるのだ。歩調は緩く、彼らが急ぐことは滅多にない。
彼らがどのようにして食べ物を見分けるのかは定かでないが、おそらく嗅覚器官が足の裏にあるのではないかと推測されている。また、彼らの触覚(これも足の裏にある)の感度も極めて優れており、砂漠の嵐のなかを進むときでも砂の中のわずかな震動を感知することができる。
キアドIIIの地表にはキトナックの天敵となる生物はおらず、彼らが恐がるものは流砂と洞窟の2つだけである。流砂はキトナックに「立ち寄る」柔らかいご馳走を隠してしまい、洞窟はより価値あるものを隠してしまう。彼らは刺すような冷たい空気の流れる大洞窟を、キトナックの神話にある地下世界への入り口であると信じている。そして、過去にその中を探検に出かけたキトナックは決して戻ってこなかった。
キトナックの日中の楽しみは「物語の語り合い」である。通常は毎晩1つだけ物語が語られるが、部族のそれぞれのメンバーが順番に新しい内容を付け加えていくために数時間にわたって続けられ、若者たちの忍耐力の形成に一役かっている。物語は何日か掛けて完結するが、それぞれのエピソードはその夜の語らいで終わる。
キアドIIIを覆う広大なカーダン砂漠では、およそ10年に一度だけ雨が振り、そのときだけは、キトナックもいつもの悠長な態度を放棄する。雨は降り始めると土砂降りになり、ひび割れた大地も激流の川と化して、塩辛い水溜りに砂地が点在する状態になる。長年休眠していた種子も突如として発芽し、短い生命を繰り広げる。大雨の最初の兆しがあると、キトナックは「生命の大祝祭」のために乾燥しひび割れた川床へと移動する。降り始めると、彼らは大勢で川の中に潜り、キトナックの交配の儀式で重要な位置を占める「愛のダンス」を開始する。数時間後、キトナックたちは潜った場所から遠く離れた下流で姿を現し、その中の何人かは小さな子供を抱えている。何も知らない人々は、キトナックの出産は懐妊期間をまったく必要としないのだと思っているが、実際には彼らの懐妊期間は雨の降る間隔とほぼ同じなのである。子供を抱えて川から出てくる女性たちは最後の祝祭のときに受精しており、次の祝祭では出産だけを行うのだ。
幼いキトナックは決して母親の側を離れず、生まれて最初の1年間は母親の肉ひだにぴったりと張り付き、物語を聞きながら乳を飲んでいる。嵐の間は子供たちは母親の影で保護され、この頃からキアドIIIの強風に耐える訓練を開始する。彼らは慎重に母親の風下に歩み出し、頭を風の方へと向ける。独り立ちの試みに失敗すると、子供は部族の他のメンバーに掴まれ、安全な場所に連れ戻されるまで、風の吹く方に倒れていってしまう。キトナックはおよそ9標準年で成熟し、成人になると次の大祝祭で交配の順番が回ってくる。
部族の人口が多くなりすぎると9歳以上のキトナックが数人部族から離れ、単独あるいは少人数のグループで他の人数の少ない部族を探しながら砂漠を放浪する。夜になると、こうした遊牧民たちはチディンカ草を繰り抜き、チディンカルと呼ばれる楽器を作ることに専念する。彼らはこの楽器を奏でることによって他のキトナックを見つけたいという願望を表すのだ。しかし、ときおりその試みは裏目に出てしまうこともある。不運なキトナックは印象的な音楽を聴いた外界の奴隷商人らに捕らえられ、不快な宇宙ステーションのラウンジでジィズ・ミュージシャンとして働かされることになるのだ。
キトナックは惑星全体を支配する参加型民主主義を発達させた。しかし、数多くの部族間では迅速かつ効率的な会話が欠乏しているため、問題が解決するまでに何年もの歳月が過ぎてしまう(うまくいけば、その間に問題は勝手に解決してしまう)。
キトナックの科学技術は短命に終わるものばかりで構成されており、ほとんどが非現実的である。彼らは風が穏やかなときに、利用可能な素材から娯楽のための道具、主に楽器を作っている。キトナックにはこれらの器材が次の嵐によってほぼ確実に失われてしまうことが分かっているため、すべて単純な作りになっている。
故郷を離れたキトナックは大半が奴隷だが、辛抱強さと天性の愚鈍さを併せ持つ彼らは奴隷としては使い物にならず、短気な主人によってすぐに解雇(あるいは処刑)されてしまう。こうした主人たちはそのキトナックが次の職を得たときに「損害」を取り戻すことになる。捨てられたキトナックたちの多くは、次の職として特にポピュラーなジィズやオンテキィのミュージシャンとなることが多く、奴隷時代の負債を支払いつつ、適度な生活をおくるための金を稼ぐのである。こうした自由なキトナックたちは故郷への科学技術の提供や奴隷になっている仲間たちを救う方法などについても考えているが、もはや驚くまでもなく、待って静観しているだけである。
ギャンドは同名の惑星に原住する小柄なヒューマノイドである。彼らの手には3本の指が生えており、皮膚は昆虫のような固い外骨格で覆われている。ギャンドには少なくとも12種ほどの亜種の存在が確認されているが、その生態には生物学者を悩ませる謎が数多く残されている。彼らの最大の特徴は再生能力である。ギャンドは手足を失っても驚異的な再生能力によって肉体を修復することができるのだ。
惑星ギャンドは巨大なガス状のアンモニアの雲で覆われた霧の惑星である。ギャンドの社会はこのベールのような霧によって分割された小規模なコロニーの集合体であり、政府は何世紀も昔に設立された全体君主制を存続させている。
アンモニアの大気はこの惑星を大抵のヒューマノイドにとって居住不可能な惑星としているが、ギャンドの代謝機能は人間たちと大きく異なっている。大多数のギャンドはまったく呼吸を必要としない。彼らは物を食べることによって体内でガスを生産し、強靭な外骨格を通じて廃棄ガスを放出する。しかし、なかには呼吸をするギャンドもおり、彼らは大気中からアンモニアだけを取り込んでいる。そのため惑星の外に出るときには、彼らは呼吸装置の付いた特殊なスーツを着用し、絶えず成分量が調整されたガスの供給を受け続けなければならない。このようなギャンドが無呼吸種の後天的な変異個体なのか、あるいは単なる亜種なのかは、科学者の間でも議論が別れている。そして、ギャンドたちにも自分たちに関する情報を公開する準備ができていないため、近い将来に新しい情報が出てくることはあり得ないのだ。
大抵のギャンドは通常の活動を維持するために最低限の睡眠時間しか必要としない。これはすべてのギャンドの亜種に共通する特徴であり、科学者たちはこれを生態よりもむしろ文化に起因した性質であると信じている。
惑星ギャンドの代表的な輸出品は捜索師の技能である。捜索師とは、神秘的な儀式から導かれる直感を駆使して獲物を追跡する宗教的なハンターのことをいう。多くの外界人は捜索師の儀式による力を否定するが、偶然それを目にした傍観者たちがその正確さに驚いているのも事実である。捜索師にはいくつかの宗派が存在するが、なかには弟子に化学薬浴や遺伝子操作を命じ、キチン質の外骨格に拳大の腫瘍を作らせている宗派もある。彼らはこの4、5センチの腫瘍を格闘時の武器として使っているのだ。ギャンドの捜索師は銀河系の至るところで見ることができ、主に警備顧問、ボディガード、賞金稼ぎ、調査官、殺し屋などを行っている。
ギャンドは多くの外界人から最も謙虚な種族だと思われている。なぜなら、ギャンドの慣習では常に相手個人を尊重しなければならないのだ。そのため、彼らは口調が柔らかく、丁寧である。ギャンドはまず自分を3人称で表現し、その後、自分がどのような立場にあるかに応じて名を名乗るか、名乗らないかを決める。第一段階の地位に達したばかりのギャンドは、自分のことをただ単に「ギャンド」とだけ名乗り、故郷もしくは惑星外で大きな成功を収めると、家名を名乗ることが許されるようになる。そして、最終的に何らかの技能を極めるか、あるいは大いなる賞賛や評価に値する行為を達成した場合のみ、自分の名前を名乗ることができるようになるのだ。
ギャンドが1人称を使うことは稀であり、「私」のような1人称代名詞を発言することができるのは、最も偉大な英雄的業績を残すか、あるいは極めて困難な任務を達成した者だけである。このことは、偉大な人物であれば誰もが名前を知っているはずだという仮定に基づいている。
ギャンドは間違ったことをしていることに気づくと、自分がこれまでの人生で達成した業績が減ると考えている。そうなると、彼らは懺悔の証として「名前の縮小」を行う。例えば、それまで家名を名乗る権利を得ていたギャンドの場合、「ギャンド」を使用する立場に戻ってしまうのだ。また、極稀なケースとして、実際に社会から完全に追放されてしまうような重大な犯罪を犯したギャンドの例もある。この場合、彼らは文化を放棄しなければならず、文化も彼らを見捨てることになる。その後、彼らは自分の好きなように名乗ることができるのだ。
惑星ギャンドでギャンド以外の種族を見かけることは稀であり、いたとしても決して歓迎されることはない。通常、外界人が軌道上の宇宙ステーションよりも内側に入ることはあり得ないのだ。仮に地上へ降りることが許されたとしても、彼らは宇宙港の中心にあるエイリアン居住区と呼ばれる場所に留まらなければならない。文化に溶け込むことを許された極僅かな外界人は、偉大なジャンウィンや、ギャンドを統治するルエトサヴィと呼ばれる議会の後援を受けた者に限られる。一般階級のギャンドたちはヒンウィンと呼ばれており、後援を受けていればギャンド以外の種族でもヒンウィンの社会に受け入れられる。ヒンウィンにインタビューを試みた科学者たちもいたが、いずれも失敗に終わったという。