ビスは大きな頭蓋を持つ、高度に発達したヒューマノイドである。彼らは瞼のない巨大な目をしているが、その虹彩も目そのものとほとんど同じくらいの大きさであるため、まるで眼組織に瞳が欠乏しているように見える。鼻は退化し、目の下から垂れ下がっただぶだぶのひだ状の表皮が小さな楕円形の口を覆い隠している。彼らの身体は極めて発達しており、その起源となる種族の痕跡がほとんど残されていないため、どのような種族から進化したのか推測することが非常に難しい。確かなことは、彼らの特大の頭は大きくかつ複雑な脳の存在を示しており、それは銀河系の平均を遥かに上回る進化だということである。彼らの脳は攻撃的本能や生殖、恐怖、その他の本能を司る部分が小さく衰退している一方で、言語、音楽、芸術、科学、推論、数学、機械工学などの抽象的な能力を司る領域は極めて大きく発展している。このことは彼らが動物レベルで機能する能力がほとんど失われた組織的社会で生活しているという事実を裏付けている。
ビスは完全に対置可能な5本の指を持っており、その手先の器用さは疑うまでもなく、常に必要な科学技術に頼る生物にとっての道具の重要性を反映している。また、超小型電気回路のような細かいものにまで焦点を合わせることが可能な大きな目も、長年にわたる技術的な生活様式に適応している。さらに、彼らは睡眠の必要性を置き去りにして進化したため、瞼を持っていない。彼らの脳には常に豊富な酸素が供給されているため、極度に疲労するまでほとんど衰弱しないのである。
ビスの最も興味深い生理機能は、その呼吸器の構造である。彼らの目の間にある小さな鼻は、呼吸気の取り入れ口としての機能しか持っていない。呼吸の後、1つだけの肺に取り込まれた空気は血液中に直接送り込まれる。消費されたガスは体の中心から直接皮膚を通って排出されるが、それは空気中から有益な分子をすべて取り込んだ後にだけ行われる。こうした特異な呼吸活動のため、ビスの嗅覚の機能は鼻に備わっていない。その代わりに、空気分子を定期的に捕らえ、分析する嗅覚細胞が目の下にあるひだ状の表皮に並んでおり、優れた脳に定期的に化学的分析情報を送っているのである。
クラクドアVIIの環境を破壊した近年の生化学汚染のため、すべてではないにしても故郷に住む大多数のビスは、極めて消極的な性格をしている。彼らの多くは非常に礼儀正しく、無礼を避けるために最大限の努力を行う。彼らは怒りや敵意といった感情が種族を滅亡に導くことを知っており、他の何よりもこうした感情に恐怖心を抱いている。しかし、これは広大な銀河系で見られるビスの真の姿ではない。彼らはしばしば力強い生命に満ちた惑星に居を構えて繁栄し、その活力によってあらゆる感情表現の手段を多数見出した。しかし、だからと言ってビスが知的な生物でないというわけではない。彼らは感情をあらわにするが、決して感情に支配されることはないのである。
ビスの出身惑星であるクラクドアVIIはマヤジル・セクターの白色巨星コルーを巡る小さな惑星である。クラクドアVIIは炭素と水素、酸素に富んでおり、気温は年間を通じて68から94標準度の間を差している。このデータは、クラクドアが密林惑星であること、少なくともかつてはそうだったことを物語っている。しかし、現状はビス文明の遺物、すなわちビスの科学技術依存傾向への病的な「貢ぎ物」だけが残る不毛の大地である。クラクドアVIIがどのようにして滅んだのかを理解するには、ビスの進化について理解しなければならない。
ビスが社会的生活に完全に適応していることはほとんど疑いようがない。攻撃的本能の欠乏は、彼らの環境支配と、社会の中で達成した安全性における信頼を反映している。中でも、おそらく交配は彼らの技術的組織化への依存を最も端的に表す例だろう。ビスにとって、繁殖とは完全に合理的選択の問題なのである。有望な親はDNAサンプルをコンピュータ交配所(CMS)へ持っていく。その後、CMSがそれを異性から提供された標本と比較し、これらの結果から、顧客と12人の配偶者との間の結合結果を反映する一連のコンピュータ・モデル(チャイルド・パターン(CP)と呼ばれる)を作り出すのである。CPの検査後、親は好みによってそれぞれのCPをランク分けし、その後、ほぼ同じような分類、正確に同じでなければ同じ注文をした依頼人の間で協議を行う。この協議において、親もしくはその代理人は、それぞれが何人の子供を作り、そして何人の子供を受け取るのかという長い交渉を行うのである(ビスの最先端技術は先天性障害を取り除けるほどに発達しているため、不完全な子供の負債に関する問題は決して生じない)。合意に達するとすぐに、親は必要な細胞を受精と潜伏のため交配センターに送付し、一年後、適切な子供がそれぞれの親に配送されるのである。
ビス社会を独自のものにしているのは、このような人工交配の技術そのものではなく、こうした科学技術に対する絶対的な依存性なのである。彼らは決して交配センターを通した繁殖の確実性と便利さを好んでいるわけではなく、明らかに他の方法で繁殖することができないのである。
ビスの科学技術への依存度は彼らを破滅させかけたこともある。数世代前、ビスの2つの都市、ノゾーとウィオガーの間で新型スタードライブの専売権を巡る紛争が起きた。社会の法に従い、2つの都市はそれぞれの主張を中立な仲裁人に提出した。しかし、ノゾーの代理人は仲裁人の名誉を危うくする情報を暴露し、彼を脅迫したのである。その後、脅迫の事実を知ったウィオガー市長は仲裁人の決定に従うことを拒否し、ほどなく両都市がスタードライブを生産するようになった。激しい貿易競争と100万年にも及ぶ第一次ビス戦争が引き起こされたのである。不幸にして、ビスが手にしたような洗練された科学技術によって巻き起こされる戦争は、大量殺戮に発展することが多い。ノゾーはウィオガーに対する化学攻撃に着手し、同市民の90%を抹殺、ウィオガーの工場に二度とスタードライブの生産ができなくなるほどの被害を与えた。報復として、ウィオガーもノゾーに対してDNA構造を変造した生物薬品を散布したのである。この思いがけない結果は惑星中に進化の堕落と変化の波を引き起こし、森林惑星を怪物の徘徊する不毛地帯に変えてしまった。生き残った汚染されていないビスたちは密封型ドーム都市を建設し、その中に閉じこもることを余儀なくされた。今日でも彼らは自分たちの惑星を歩くことを恐れながらそこで生活しているのである。
ビス社会の指導者は、それぞれの市民の祖先や知的能力、および現在の活動を分析するコンピュータによって選ばれる。社会の支配者として選ばれた人々は極めて有力であるが、複雑な官僚制によってこれらの力を個人の利益のために使うことは抑制されている。ビス政府は帝国の理想と目的を発展させるために全力で働いており、軍で必要なコンピュータ・プログラムの支援や、帝国軍のあらゆる装備の設計の再調査補助を行っているのである。
ビスは数百万年間にもわたって高度な科学技術を発達させたが、長い間進化は止まっており、既に到達できる限界に達している。皮肉なことに彼らは生化学戦争によって製造能力の大半を失ってしまい、現在は他の惑星の科学技術に依存しているのである(伝説的な数年前のビスの「スーパーコンピュータ」も既に存在していない)。ビスはもはや自分たちで使う道具を作ることも、輸出用の道具を作ることもできない。遠い昔にクラクドアVIIの天然資源が枯渇して以来、彼らには残された唯一の資産、すなわち彼らの知性を輸出するしか選択の余地がないのである。ビスはデータの分析やコンピュータ・プログラムの作成、保守、スタードライブの設計改良などを行う多くの研究所で雇われている。物を造る資源を失ったことで、彼らは創造性に関して無類の種族となったのである。
銀河系のいたるところで帝国企業と私的企業の両方に多くのビスが雇われており、多大な知能を要求される職種に就いている。彼らは平和主義者であると同時に先見性も有しており、身近な仕事に身を捧げ、仕事から大きな満足感を得ているのである。しかし残念なことに、制度や規則によって建物を奪われた多くのビスたちが、しばしば窃盗やペテンを働くようになってしまうのも事実である。
惑星ビミッサリにはビムと呼ばれる2種類の種族が住んでいる。片方は小柄だが人間に非常に良く似た種族であり、もう片方は平らな耳を持つ毛に覆われたヒューマノイドである。彼らは一切対立することなく、平和に惑星と文化を共有している。
ヒューマノイドのビムは、太古の昔に近隣星系からビミッサリにやってきたと考えられている。彼らは原住していたビムの社会に敬服し、そのなかに自分たちを順応させていった。原住していたビムも心の広い平和的な種族だったため、無条件に彼らを受け入れてくれたのだ。こうして両者は互いに共通の社会を構築していったが、残念ながら交配することはできなかった。そのため、異種族間で結婚した夫婦は養子を貰って育てていることが多い。
ビムは絵画、音楽、物語を愛しており、特に英雄伝には深い愛情を抱いている。彼らの社会では英雄は名誉と栄光を示す特別な地位を得ているのだ。ビムたちはあらゆる英雄を尊敬し、なかでもジェダイを特別な存在として崇めている。ビムの文化は英雄指向の物語に満ちており、それはフィクションのようにも聴こえるが、歴史として扱われている。ビムと一度でも会ったことがあれば、この小柄なヒューマノイドがいかに英雄的な偉業に魅了されているか理解できるだろう。しかし、彼らがそれと同じことをやってのける姿を想像できる者はほとんどいないのだ。
ビムは神秘的な歌声を発するとても親しみやすい種族である。彼らの言葉は歌とバラードによって構成され、まるで5パートのハーモニーを奏でているかのように聴こえる。また、理由は定かでないが、ビムたちは伝統的に全員が同じ細工の入った布製の黄色い服を身に着けている。
英雄と英雄伝に対するすべての愛情に懸けて、ビムは平和で非暴力的な種族である。ビミッサリでは武器による暴力はすべて禁止されており、彼らの都市に滞在している間は訪問者も武器の携帯を一切禁じられている。
ビムの最も好きな行動は買い物である。アサリ・ツリーの森林の中に散在する数多くのマーケットでは毎日どこかでバーゲンが開催されており、彼らはそこで満足のゆくまで品物を値切っている。満足できる買い物ができなければ、ビムたちにとって完全な1日とは言えないのだ。彼らは値切る技術をとても真剣に習得し、公正な取引きに同意することを名誉であると考えている。そのため、ビミッサリでは窃盗が嫌悪の対象になっており、万引きは極めて重大な犯罪として扱われている。
また、ビミッサリでは客が訪れることも光栄であると考えられている。ビムの親切なもてなしはこの宙界でも良く知られており、訪問者は惑星に一歩足を踏み入れた瞬間から盛大な歓迎を受ける。彼らの典型的な歓迎法は散歩中の訪問者の脇に行列を作り、訪問者が前を通過するたびに列の中にいるビムが1人ずつ前に出て、訪問者の肩、頭、腕、または背中に軽く触れるのだ。このセレモニーは完全な沈黙の中で行われ、その隊形も長い経験によって確立されたものである。そして訪問者が重要な人物であれば、それに応じて行列に参加する人数も増やされるのだ。
ヴーヴリアンは田園惑星ヴァードン・カー出身のヒューマノイド型エイリアン種族である。昆虫のような横長の巨大な頭部には12個の目が散在しており、さらに2本の長い触覚を生やしている。女性は男性より体が細く、その代わりに頭部がより横長になっている。
彼らは故郷に生息するわずかな肉食獣から身を守るための生き残り策として、とりわけ鋭敏な触覚を発達させた。なかでも皮膚は特に感度がよく、他人が室内で歩いたために生じるわずかな気温の変化さえ瞬時に感じ取ることができるのだ。この高い感知力はよく他の種族からフォース能力やテレパシーではないかと誤解されているが、実際に多くのヴーヴリアンがジェダイとして活躍し、先天的な能力をフォースによってさらに高めている。しかし、彼らも年齢を重ねるに従って皮膚にだんだんと皺が多くなり、感覚も弱くなっていく。特にホスやタトゥイーンのような厳しい環境の惑星での生活が長く続くと、こうした衰えも早く進行するようになる。そのため、外界で暮らすヴーヴリアンは不慣れな環境からの影響を最小限に抑え、年齢による感覚の衰えに対処するため、厚いフード式のローブを着ていることが多い。また、裕福なヴーヴリアンになると特別に作られた軽量型環境スーツを着用し、さらなる保護を行っていることもある。
インナー・リムに属するヴァードン・カーは、苔類などの原始的植物に覆われた快適な惑星である。風も穏やかで滅多に強風になることはなく、気温も年間を通じて15℃以上変化することはない。凶暴な昆虫も存在せず、太陽の光が厚い雲の層によって遮られているため、地上は永続的な黄昏状態を維持しているのだ。
ヴーヴリアンは天性ともいうべき問題可決能力を有しており、法曹、外交、ビジネスの分野で秀でた才能を発揮している。実際に、帝国は権力の絶頂期にあったときでさえ、恐怖と軍事力が現実的でない、あるいは逆効果となるような稀な場面で、貿易の契約交渉や論争にヴーヴリアンの助力を求めていた。逆に、彼らは愛想の良い性格から、反乱軍にとって理想的なスパイにもなり得たのである。
ヴーヴリアンは長年にわたって巨大銀河社会の一端を担ってきたが、植民地化によって居住地の拡大化を図る努力は一切行っておらず、また出身星系の外側にはまったく領地を有していない。それでも彼らは銀河系の他の部分の探索や観察を続けており、他の惑星や、ときには宇宙ステーションをも発見している。ただ、こうして発見した環境とヴァードン・カーの楽園との比較結果にどうしても満足できないでいるのだ。逆に言えば、銀河系の他の場所で暮らしているヴーヴリアンは、自ら進んで不快な惑星に引き寄せられていった者たちなのである。
ヴーヴリアンは思いやりがあって好奇心の強い、社交的な種族である。多くの人々はヴーヴリアンの外見を見て不快な気分になるが、彼らの多くは銀河系で最も偉大な商人、交渉者、平和的ブローカーとして見なされており、素晴らしい第一印象を与えている。ヴーヴリアンの社交的な性格に抵抗することは難しく、彼らがこの性格を雄弁な話術や論理的思考能力と組み合わせると、もはや彼らに反論することはほとんど不可能となる。ヴーヴリアンは他の社会や種族について学び、それらの問題解決を手伝うことに純粋な好奇心を抱いており、この好奇心によって、彼らは他の文化の特徴を容易に把握することができるのである。
銀河系に進出しているヴーヴリアンには悪党や偵察員が多い。しかし、彼らは醜悪な外観のために損をすることが多く、巨大な頭部で動きが緩慢なことから格闘も苦手である。一方で、フォースの強いヴーヴリアンはフォースの達人になることが多く、名のあるジェダイとなった者も少なくない。
ディープ・コアの惑星ヴルプターに原住するヴルプタリーンは、厚いがっちりとした胸を持つ爬虫類型種族であり、先細った長い鼻からは6本の牙のような突起が突き出ている。また、頭頂部からは2つの尖った耳がまっすぐ上向きに伸びている。彼らは黒い瞳孔を持つ黄緑色の2つの目によって、暗い状況下でも物を見ることができるが、遠近感の認識力はそれほどでもない。その結果、彼らは自分のいる位置を認識するために超音波を用いたエコロケーションを行っている。また、彼らの2本の腕の先端には鉤爪の生えた手が付いているが、それらが1本でも切断されると、脳中枢の欠如から、失語症を誘発してしまう。その一方で、彼らは非常に器用かつ丈夫であり、有毒な環境下においても強い耐久性があると考えられている。こうした特徴と自然な努力から、ヴルプタリーンはポッドレースにおいてある程度の成功を収めることができ、ヴルプターを銀河系最大のポッドレーサー生産拠点としたのだった。
かつてのヴルプターは草原、森林、その他の環境を擁する美しい惑星だった。しかし、旧共和国時代に通商連合の手によって行われた過剰な工業化と開発によって、美しい大地は汚染された荒野と化してしまう。通商連合はこの惑星を単なる工場と見なし、住人を下等種族として扱い、何十年にもわたってヴルプターを廃棄物処分場としていたのである。5つの都市のうち、住人が住める都市は1つだけとなり、陸上の動物たちも姿を消した。そして、生き残った住人たちも汚染された大気や水を摂取することによって発生した疫病に苦しめられたのだった。しかし、ヴルプタリーンはこの惑星を離れようとせず、故郷と呼んでしがみついたのである。
この惑星はそれほど重要だと考えられていなかったため、通商連合も、その後の帝国も、星図から除外していることが多かった。帝国は権力を握った後も、ヴルプターの価値を認めず、食料の供給も不要であると判断していた。その結果、住人たちの間に大規模な暴動と飢饉が発生することになる。しかし、反乱同盟軍がこの惑星を安全な避難所として利用していたため、銀河内乱終結後には再生の努力が成功しはじめるのだった。
銀河系で最も恐ろしい捕食者の一種であるフローン・ランプロイドは、銀河系のワイルド・スペースと呼ばれる領域に属する惑星フローンに原住する、ヘビに似た温血動物だが、かつては様々な惑星に原住していると考えられていた。腸内寄生虫から進化した彼らの体は、灰色の皮と分厚い筋肉で巻かれた肉塊であり、先端には有毒な牙が並んだ大きな顎が付いている。ヘビと同様に、ランプロイドの肉体は攻撃にも防御にも使える天然の武器である。彼らの複数の舌には他の多くの種族にとって有毒な唾液が含まれており、彼らはこの舌を匂いを嗅ぐためにも使用している。さらに、これらには尖った毒針が生えており、驚異的な速さで攻撃を行うことができるのだ。また、狩猟種族であるランプロイドは、捕らえた獲物を押さえつけ、殺すために長い体を使用する。彼らは光を捉えるために眼柄の先端にあるセンサー器官を使用し、しばしば他の肉食獣から逃れることが可能である。
銀河系の大半は、ランプロイドをただの動物だと考えているが、実際の彼らは高度な知性と感覚を持った種族である。さらに、フォースを感知するランプロイドの存在も確認されており、テレパシーによって相互の感情を伝える能力を持つ個体も存在する。ただし、この能力は種族全体の特徴として知られているわけではない。また銀河内乱の最中、フローン・ランプロイドは反乱同盟軍を支持し、しばしば新兵の勧誘などを行うことで彼らを背後から支えていた。
ベサリスクはよく爬虫類に間違われるが、実際には飛べない鳥から進化した種族である。大柄で肉質の彼らは水や食糧がなくても長期間生存することができる。ベサリスクは暗黒街との有力なコネを多数保持していたため、帝国の時代にも地下組織からの支持を取り付けることによって、辛うじて奴隷化されることを免れていた。いまでも多くが自由の下で働いており、ハットに援助を求めるような愚かで絶望的なベサリスクでさえ例外ではないのだ。
ベサリスクは今までに一度として共和国元老院に公式な議席を求めたことがなく、一般に自分たちの商売に取り掛かっているだけである。彼らは銀河系の治世を他種族の政治家や官僚たちに完全に任せており、それで満足しているのだ。
また、故郷オジョムに築かれた都市は人口がまばらであり、惑星外に作られたベサリスクの植民地はいずれの時代にもほとんど存在していない。彼らは資源の面においても、技術の面においても銀河社会にほとんど貢献していないが、どんな文明社会にも容易に浸透することができ、他種族とも一切トラブルを引き起こさない。
ベサリスクはその体格から大食漢だと思われがちだが、それは不当な評価である。彼らの体は水や食糧を1週間以上にわたって蓄積することができるのだ。もう1つの誤った推測は、大量の汗をかくことから、彼らを神経質または虚弱体質であるとする主張である。だが実際には、彼らが他の種族より優れた体温調整機能を持っているだけのことに過ぎない。ベサリスクは社交的かつ大勢でいることを好む知的な種族なのである。
ベサリスクはずんぐりした体格のヒューマノイドであり、太い腕、短い羽毛で両側を覆われた骨製の鶏冠、伸縮自在の大きな袋を垂らした広い口を持っている。また、男性は4本の腕を生やしているが、女性は最大で8本の腕が生えていることもある。
アウター・リムに属する惑星オジョムは、地表をゆっくりと横断する巨大な氷河に覆われた寒冷の海洋惑星である。そして、それぞれの氷河がベサリスクの小さな共同社会を支えているのだ。また、オジョムの軌道上では多数の宇宙ステーションが惑星を周回しており、その大半が地上にある共同体を凌ぐ大きさを誇っている。これらのステーションはオジョムの宇宙港の役割を担っており、住民たちにも地上より快適な環境を提供しているのだ。
ベサリスクは荒涼とした故郷を離れる傾向が強く、利益の上がる仕事を求めて銀河系を徘徊している者も多い。彼らは事の重大さを考えずに密輸や武器売買、犯罪組織の設立などに関係してしまうのだ。その一方で自分の関心事を追い求めるべく唐突に仕事を止めてしまう者も多く、雇い主から不満を浴びせられる事態も増えている。
同名の惑星に原住するヘネムシィは、青灰色の肌、2列に並んだ頬骨、緩やかに曲がった鼻を持ったヒューマノイドである。頭には4本の小さな円錐状の突起があり、両手にはそれぞれ3本の指しかない。雑食性の彼らは主に果物や野菜を食べているが、ときおり野生の鳥を捕食することもある。
ヘネムシィは頭の突起で周囲の環境における温度差や、他の生物の感情の変化を感じることができるため、卓越したハンターとして知られている。このことから、科学者たちはヘネムシィの突起がゴウタルの円錐器官と同様の働きをするものだと推測した。この2つの種族は生物学上は無関係だが、共に月の軌道が極端な気象パターンを引き起こす惑星の出身であるという共通点を持つ。そして両者とも、これらの円錐器官を食糧の捜索や、環境の分析に役立てているのだ。
ヘネムシィの社会は良く構造化されており、真の愛の探求と命の創造を通じた精神的認識の達成を基本としている。人口の減少は真の愛の探求を極めて困難にしたが、ヘネムシィには女性1人に対して12人の男性が存在する。この比率はヘネムシィの伝統的婚姻の儀式を行う際のバランスによってもたらされたものである。
結婚後、この儀式では女性がカミソリのような舌で配偶者を引き裂き、内臓を取り出さなければならない。そのため結婚が成立することは稀であり、成立するのは真の愛情が芽生えたときに限られる。配偶者はこれを精神的達成の最高潮であると考え、生まれてくる子供を先導するために自ら霊界へ向かうのだと認識している。その一方で、女性は新しい生命を現世に迎え入れることに満足しているのだ。
ヘネムシィの社会では女性の数が極めて少ないため、法によって厳重に保護されている。処女はほとんどいないが、もしいたとすれば惑星を出ることは許されず、野菜と果物以外の物を口にすることも許されない。配偶者の肉を味わうまでは決して肉を食べてはならないのだ。その結果、ヘネムシィには世間知らずな女性が多く見受けられる。
華奢な体に特徴のない顔を持つ物静かなエイリアン、ポリス・マサンは、小惑星に築かれた植民地ポリス・マサに住む種族である。ポリス・マサンは実際にはポリス・マサの出身ではないが、彼らはこのバラバラになった惑星の残骸に強い執着心を抱いている。彼らはこの小惑星の起源である惑星が、祖先たちの故郷である可能性を捨てきれずにいるのだ。遠い昔、エレインと呼ばれる種族の惑星が未知の天変地異によって瓦礫と化し、エレインたちも消滅してしまった。そして、クローン大戦からおよそ500年前、エレインの痕跡を調査するための発掘作業が、特徴のない小型エイリアンたちによって着手されたのだった。やがて、彼らの存在はこの考古学的調査に強く関連するようになり、彼ら自身も一切の異議を唱えることなく、ポリス・マサンと呼ばれるようになったのである。
ポリス・マサンについての詳細はほとんど知られていないが、彼らの出身地が、第2の故郷と定められた小惑星と同じ宙域にあるサブテレル・セクターであることだけは分かっている。彼らは熟練した宇宙生物学者であり、他のエイリアン種族に強い好奇心を抱いているが、その情熱に反して消極的である。その代わりに、彼らは離れた場所から研究することを好んでおり、エイリアンそのものではなく、彼らの表面的な文化を調査しているのだ。実際、彼らは他の文化との公の接触をほとんど行っていないが、それでも素晴らしい宇宙生物学データベースを蓄積している。いまや、エレインとの真の関わりを明らかにすることが、ポリス・マサンにとっての最大の関心事なのだ。
また、ポリス・マサンは秘密主義のカミーノアンと接触しており、クローニング技術を得るために彼らのデータの一部を提供している。ポリス・マサンは彼ら自身の目的のためにクローニング装置を改良したが、そのクローニング・プロセスは未熟であり、カミーノアンが行うほど洗練されていない。ポリス・マサンの願いは、彼らが考古学的発掘の中で発見するあらゆる生物学的な要素を、この技術によって復元することなのだ。