銀河系最大の犯罪組織ブラック・サンは帝国の影の部分に潜み、その力を絶大なものに成長させていった。しかし、その存在を知る者は帝国の高官や大企業の幹部といった特権階級にいる者に限られており、公式にはすべてが闇に包まれている。そして、この事実はブラック・サンの繁栄にとっても非常に有益に働いているのだった。
ブラック・サンの力と影響力はクラトゥイーンの貿易ギルドとして知られるプルーヴォ2-4-1やジャバ・ザ・ハットの組織などとは比較にならず、同様な組織は限られた地域での活動や明らかに不当な取引きを余儀なくされている。ブラック・サンはギャンブルや恐喝、密輸、スパイ活動、奴隷売買、スパイス取引など、銀河系におけるありとあらゆる犯罪行為を支配しており、その闇の頂点に君臨するのが巨万の富をもつプリンス・シーゾーなのだ。彼は反乱軍と帝国軍が互いに傷つき、どちらも真の勝利を得ないことを望んでいる。彼にとって、勝利とは自分にのみ許された特権なのである。
帝国はこのような巨大犯罪組織は人間によって支配されることを望んでいたが、エイリアンであるシーゾーはそのカリスマ性と機知に富んだ策略によって自らの力を増大させ、ついにパルパティーン皇帝さえも無視できない存在となり得たのだった。
故郷ファリーンの王室出身のシーゾーは数十億クレジットの資産を誇る超巨大企業シーゾー輸送システムズ社(XTS)の社長としても知られている。銀河系全域で大型コンテナ船や貨物船を管理しているXTSは、裕福な顧客から高価な品物の輸送を請け負うことによって莫大な利益を挙げており、同時にブラック・サンの犯罪行為を影で援助しているのである。
しかし、シーゾーの財産がすべてXTSやブラック・サンに流れているわけではない。彼はインペリアル・センター、すなわちコルサントに多くの衛兵や召使いを集めた豪華な宮殿を構えており、さらにその軌道上には<ファリーンズ・フィスト>と名付けられたスカイフックも所有している。食事にしても彼は銀河中から貴重な食材を集め、法外な金で雇った最高のシェフに調理させているが、それにも飽き足りずメナライ山脈にモニュメント・パークを見下ろす有名な高級レストランも所有している。
シーゾーは他の種族の女性にも大きな関心を寄せていた。ファリーンの男性である彼は人間型種族の女性を引き付ける強力なフェロモンを発散させることができるが、最大の効果を発揮させるには大きな興奮と集中力が必要とされる。そのため、シーゾーに魅せられた女性は彼の富によるもてなしを存分に楽しむことができても、それ以上の信頼とブラック・サンに関する知識を手にすることはできないのだ。事実、どんなに美しく賢明な女性であっても、シーゾーが1人の女性と数ヶ月以上にわたって一緒に過ごすことはほとんどない。その気になれば相手はいくらでも見つかる上に、彼は今まで自分と同等、あるいはそれ以上に知的と思える女性と出会ったことがないのだ。シーゾーは女性との交際を終えると相手に高価な贈り物、ときにはコルサントに建てられた邸宅などを譲り、二度と自分に近づかないことを誓わせている。この警告を拒否してなおシーゾーを求める女性がいた場合、その女性は哀れな末路をたどることになるのだ。
シーゾーの支配力を不動のものとしているのはブラック・サンの首領という地位だけではなく、むしろその恐ろしい外観によるところが大きい。ファリーンは長寿命な種族としても知られており、彼も見た目には30歳程度だが、実際には100歳を越えている。それでも、彼は運動は退屈だが健康を維持するには必要不可欠なことだと考えており、命を狙われる機会が多いことからも、格闘技や射撃の訓練は絶えず続けている。彼の鍛え上げられた長身で堂々とした肉体と長い弁髪を生やした骸骨のような顔は、それだけで人々を恐怖させ、もはやその力を誇示する必要もないのだ。
彼の父はファリーンの王であり、シーゾーも王子として君臨していた。しかし、彼の目は常に外に向いており、皮肉にもこの銀河系進出への大きな野望が彼の命を救うことになったのである。およそ10年前、ファリーンに設置されていた帝国軍の研究所で大事件が起きた。生物兵器として開発されていた神経破壊バクテリアが流出したのである。このバクテリアに対する救命手段は開発されておらず、ダース・ヴェイダーは「消毒」のためスター・デストロイヤーで軌道上から研究所を破壊するよう命じたのだった。数時間にも及ぶターボレーザーの砲撃によってファリーンの都市は完全に壊滅し、バクテリアもろとも約20万人のファリーンが虐殺されたのである。その中にはシーゾーの両親と兄、2人の妹、そして3人の叔父も含まれていた。もし、彼がブラック・サンの仕事で故郷を離れていなければ、間違いなくシーゾーも殺されていただろう。
その後、シーゾーは二度と故郷に戻らず、家族を失ったことも一切口に出さなかったが、ヴェイダーに対する復讐心だけは決して忘れることがなかった。彼はその権力を利用して帝国の記録から事件に関するデータをすべて削除することに成功し、彼がヴェイダーに恨みを抱いていることは誰にも知られる心配がなくなったのである。
シーゾーはヴェイダーへの復讐を慎重に計画していた。彼はヴェイダーを巧みに揺さぶったが、シスの暗黒卿は強敵であり、まともに戦っても到底勝ち目がないことは十分に分かっていた。シーゾーはルーク・スカイウォーカーがヴェイダーの息子であること、そして皇帝がそのルークを欲しがっていることを知り、このことを利用しようと企んだのである。ルークを先に殺害し、それをヴェイダーの仕業に見せかければ、ヴェイダーは確実に皇帝の信頼を失って失脚することになるだろう。しかし、シーゾーの野望はヴェイダーの失脚だけには留まらず、自らがその地位を手にすることだった。もし、彼がヴェイダーに代わって皇帝に取り入ることができれば、いずれ銀河系全体を支配することも夢ではないのだ。
シーゾーの邪悪な計画を悟ったヴェイダーは、彼がルークの命を狙っていることを示す証拠の収集に全力を上げていた。しかし、皇帝にとってもシーゾーはまだ役に立つ存在だった。彼はヴェイダーをシーゾーから遠ざけ、2人の役立つ「道具」の緊迫したライバル争いを楽しんでいたのである。やがて帝国軍の第2デス・スターの建造が始まると、ヴェイダーがインペリアル・センターを留守にしている間を狙ってシーゾーは皇帝にある重要な提案を行う。それは、反乱軍に故意に第2デス・スターに関する情報を与え、罠に陥れようというものだった。ヴェイダーは猛反対を唱えるが、皇帝はその危険な賭けを気に入り、シーゾーの提案を受け入れたのである。
第2デス・スターの情報を巡るコスリスでの戦いの後、シーゾーの宮殿に捕らえられたレイア・オーガナとチューバッカを救出するため、ルークはコルサントに潜入する。そこでついにシーゾーは若きジェダイと対峙するが、ランド・カルリジアンが宮殿のサービス・シュートにサーマル・デトネーターを投げ込んだため、犯罪組織の本拠地は大混乱に陥った。シーゾーは<ヴィラゴ>で軌道上のスカイフックに逃れ、反乱軍の戦闘機部隊を掃討するスーパー級スター・デストロイヤー<エグゼキューター>と遭遇した。シーゾーはブラック・サンの艦隊に反乱軍の逃走を阻止するよう命じたが、うかつにもスカイウォーカーの名を送信してしまう。ヴェイダーはその証拠を逃さなかった。彼はシーゾーに降伏勧告を発し、それを無視したダーク・プリンスを滅ぼしたのだった。
通常のハットよりさらに一回りも巨大な体をした醜悪な犯罪王ダーガ・ベサディ・タイは、ハットの犯罪シンジケートの1つとして知られるベサディ氏族の長、偉大なアラクの息子である。その巨体のため、もはや自分の力で動くこともままならず、常にリパルサーリフトを頼って移動している。また、ナル・ハッタの宮殿では奴隷娼婦や巨大な体を扇ぐ召使いなど、多くの取り巻きたちに囲まれていることが多い。
顔に大きなあざを持って生まれたダーガは、氏族の有力者たちからハットに禍をもたらす存在であると罵られていた。彼らはアラクに息子の殺害を勧めるが、アラクはダーガを溺愛し、ベサディの後継者として譲らなかった。そのためダーガも父親に深い愛情を抱いており、一方で自分の死を望んだ親族たちに強い不信感を募らせている。
ダーガがおよそ100歳を迎えた頃、帝国による圧政に対して反乱の灯火が立ち上がると同時に、ハットのベサディ氏族とデシリジク氏族による対立も激化の一途を辿っていた。デシリジクの長ジリアクとその甥であるジャバは、ベサディの主要な収入源となっているイリーシアの奴隷事業を壊滅させようと目論んだ。彼らはアラクとダーガに不満をもつイリーシアの最高位司祭テロエンザを抱え込み、アラクの毒殺に成功する。最愛の父を失ったダーガは、これがデシリジクによる陰謀であることを確信していた。しかし、何も証拠が得られず、ついに彼はブラック・サンの首領プリンス・シーゾーに事件の解明について協力を求めたのである。
アラクの死の反響は予想以上に大きかった。醜いあざを持つダーガをベサディの後継者として認めようとしないハットたちが、一斉にダーガに反対姿勢を示したのだ。ダーガはここでもブラック・サンと接触し、反対勢力の一掃を依頼している。こうしてベサディのダーガに反対するハットたちは次々と不可解な死を遂げていき、一方のシーゾーもダーガに恩を売ることでハットの犯罪シンジケートを巧みに利用していたのである。やがてコルサントで分析されていたアラクの遺体からついにテロエンザによる毒殺の証拠が発見されると、ダーガはテロエンザとジリアクとの接点を突き止め、ジリアクに決闘を挑んだ。その結果ジリアクは死亡し、デシリジク氏族はジャバのものとなる。しかし、その直後には反乱軍によるイリーシアの解放作戦が行われ、ベサディ氏族はイリーシアの奴隷事業を完全に失ったのだった。
いくつものビジネスを失い、シーゾーに巨大な借りを背負ったダーガは、もはやブラック・サンにヴィゴとして仕えざるを得なかった。しかし、彼はダーク・プリンスから多くを吸収し、再び犯罪社会での権力を握ろうと暗躍することになる。表面上、彼は組織の政治的権力を楽しんでいるように見えるが、希にシーゾーの命令に反抗することもあり、他のヴィゴたちをシーゾー打倒に奮起させる秘密の計画をも目論んでいたのだ。事実、部下たちにも他のヴィゴの部下に対して反乱の種を巻かせていた。しかし、彼らのシーゾーに対する尊敬と恐怖は根強く、多くの幹部たちは組織への忠誠心を失っていなかった。
しかし、ダーガと同じくヴィゴの1人だったグリーンは簡単に操ることができた。シーゾーへの反逆を企てたグリーンは純粋に自分の野望を果たすために行動していると信じていたが、ダーガは慎重に彼を刺激し、万が一失敗しても自分が無関係だと思われるよう十分な距離をおいていたのである。彼は自分の陰謀が明るみに出ることを恐れており、常に自分がシーゾーの控えめな部下を演じていることを確認していたのだ。
ブラック・サンにおけるダーガの通常の役割はハットの犯罪王との接触だった。彼はハットの衛星ナー・シャダーを通過する密輸ルートに太いパイプを持っており、また、ハットが支配するクラトゥイニアンの貿易ギルドとも同盟を結んで活動していた。他のヴィゴたちは、ダーガがシーゾーや仲間のハットに対して強固な忠誠を維持していることをよく疑問視していたが、彼が自分自身にしか本当の忠誠を誓っていないことは紛れも無い事実なのである。
そしてシーゾーの死から9年後、ダーガは邪悪な野望を達成させるための一大計画を実行に移す。それは、惑星をも破壊可能なスーパーレーザーを持つ究極兵器を建造し、新共和国を脅迫しようというものだった。ダーガは元帝国軍の科学者ベヴェル・レメリスクを見つけ出し、計画への協力を取り付ける。さらに彼は亡きジャバ・ザ・ハットの宮殿から帝国軍で使用されていた秘密コードを発掘し、コルサントのインペリアル・パレスからデス・スターの設計図を盗み出すことに成功する。ダーガの犯罪組織は鉱物資源の豊富なホスの小惑星帯に基地を構え、ダークセイバーと名付けた超兵器の建造を開始したのだった。
時同じくしてダーラ提督率いる帝国軍が大反抗計画を開始しており、2つの敵の出現に新共和国は窮地に立たされる。そのなかでダークセイバー計画の調査を命じられたクリックス・メイディーン将軍が、部下を率いてホスへと向かった。しかし、メイディーンは部下の不注意によってダーガに捕らえられてしまう。処刑の際、ブラスターで彼の胸を撃ち抜いたのはダーガ自身だった。
しかし、ダークセイバー計画は意外な形で幕を下ろすことになる。自分の計画に酔いしれたダーガは、あらゆる欠陥の存在を信じようとしなかったのだ。事実、建造工事は手抜きだらけであり、レメリスクはそのことを何度も警告するが、ダーガはまったく聞く耳を持たなかった。自分の力を過信したハットの犯罪王にかつての精細さは微塵もなく、欠陥だらけのダークセイバーで小惑星帯からの脱出を命じたのだった。結果的に旋回すらできない超兵器は巨大な小惑星に衝突し、ダーガもろとも小惑星帯の塵と消えたのである。
ローディアンの中でも特に狂暴なチャッツァ族の1人であるクレゾはそれほど目立った存在ではないものの、プリンス・シーゾーの信頼厚いヴィゴである。彼は同族の仲間たちほど派手でも貪欲でもなく、あたかもそれがビジネスであるかのようにブラック・サンの担当支部を動かしている。特にそのことを如実に示しているのが服装の趣味であり、彼はいつもクワット・ドライブ・ヤード社の重役室で見られるような、地味だがきれいに仕立てられたスーツを着用している。彼の働きは決して大きな収入と優位性を生み出していないが、シーゾーにも認められた迅速かつ思慮深い行動は十分にその埋め合わせをしているのである。
他のヴィゴたちが犯罪行為に明け暮れている一方で、クレゾは自分の活動を多角化させようとしている。彼は多くの賞金稼ぎグループに投資していることでも知られているが、その中にはグランス連合や帝国によって設立され帝国軍の強い支持を受けているハウス・トレサリオなども含まれており、さらに故郷ローディアでも多くの犯罪組織を支配しているのである。
クレゾはまだ首領となる前の同僚に過ぎなかったシーゾーからも多くのことを学んでいた。彼は無謀な行動や迅速な復讐に対抗するには臨機応変で狡猾な判断を下すことが成功への鍵となることを学んでいたのである。彼は事前に計画を立てて不測の事態に備えることを好んでいるが、これは難しいことであり、結果的に収入の低さに繋がっている。しかし、クレゾはそれぞれの任務に最も適した部下を選ぶため、部下に関する膨大な量のデータファイルを管理しており、その人選能力は大きな評価を受けているのである。
クレゾは特に野心的というわけではないが、その力と影響力を銀河に広げるため、ブラック・サンで新たな機会を伺っており、現在は故郷ローディアをより強固にブラック・サンの支配下に置こうとする策謀に加担している。かつて彼の部族の長だったナヴィック・ザ・レッドが暗殺されたときにも、彼の部下の1人だったコール=ダーがその後任として選ばれ、同時にブラック・サンの操り人形として活躍していた。しかし、それ以前までコール=ダーはヴィゴのグリーンの下で働いており、その行動を監視しつつ、クレゾに報告していたのである。
グリーンはヴィゴの中の唯一の人間であり、そのことにはもっともな理由がある。プリンス・シーゾーは人間を裏切りやすい種族ではあるが、中にはごく希に信用できる者もいると考えているのである。グリーンはあたかも根拠があるかのように、いつも他のヴィゴたちよりも自分が優位に立っていると感じていた。おそらくシーゾーの部下で一番の愚か者である彼はダーガ・ザ・ハットの密命で働いていた部下たちによってそそのかされ、シーゾーを失脚させて自分がブラック・サンの頂点に君臨することができると信じていたのである。
グリーンのシーゾーに対する絶え間ない策謀は、本来の職務に対する緩慢さを露呈させることになり、彼の組織への納付金も減少の一途をたどっていた。彼がシーゾーの期待を裏切っていることはスパイによってすぐに報告され、グリーンは急速にシーゾーの信頼を失っていったのである。
意外なことに、彼のブラック・サンへの最大の献身は彼の有する恐喝を専門とした広域スパイ網だった。このスパイ網の活動拠点は主に銀河中心部に集中していたが、彼は自分の力をより大きな物とするために、さらに多くのセクターにも関心を寄せていたのである。彼は仲間のヴィゴたちと同様に銀河中心部に多くの協力的な犯罪者を抱えており、その中にはスパイス商人や奴隷商人も含まれていた。さらに、コルサントにスパイスを直接密輸することが禁じられていたため、このような仲間の存在は彼にとって大きな強みだったのである。しかし、インペリアル・センターへのスパイス独占供給権をもつウェンデル・ライト=シムズの存在によって、グリーンは特にもてはやされてはいなかった。
グリーンの外見は彼の内面的な性格をよく表している。彼はいつも帝国の高僧を思わせる派手なローブをまとっており、血の気の引いた陰気な表情で自分の裏の行動を知っている者たちを見回しているのである。また、彼はまだ中年だが髪は白く、そのためにどうしても目立ってしまう。スパイや部下たちがすべてを知っている一方で、自分の裏切り行為がシーゾーの関心を引いていることに気付いていないのはグリーンだけだったのだ。
クリータはブラック・サンでは珍しく、世襲制でヴィゴの地位を受け継いでいる。彼の種族であるキアンサーは感情を感知する能力に恵まれており、およそ3世紀前にブラック・サンと初めて出会ったときからその特権を保持しているのである。クリータの母もプリンス・シーゾーによく仕えていたヴィゴだった。そして、その息子の鋭い人選能力を高く評価したシーゾーは彼に母の地位を継ぐことを認めたのである。
母がシーゾーに仕えていたころ、クリータは父と共に故郷シャウム・ヒーで暮らしていた。彼は父の経営する広大なダーラク牧場の手伝いをしながら少年期を過ごしていたが、彼の仕事は家畜を柵の中に入れるところから銀河全域に輸出するために大企業や商人、貿易商に売るところまで、牧場作業の全般に渡っていたのである。
クリータのこうした経験は後のブラック・サンでの仕事に大いに役立った。ヴィゴとなった彼は帝国の傘下にある超巨大企業の経営に多くの神経を費やすことになったのである。彼のスパイはギャレントロ・ヘヴィ・ワークス社やダイナミック・オートマータ社からシーナー・フリート・システムズ社、ソロスーブ社に至るまで多くの企業に潜伏しており、クリータはシーゾーに銀河中の企業の実態を絶えず報告している。さらにそのスパイ網はライバル企業の機密を奪取するために恐喝や買収さえも行っているのである。事実、クリータの最近の働きによって銀河中心部に拠点を置くソーリッシュ農業社は深刻な経済破綻を受けることになってしまった。ソーリッシュ社は自社の乗っ取りに動き出したライバル企業が背後にブラック・サンを付けていることを知らず、必死に抵抗してしまったのである。
クリータは比較的控えめな性格であり、いつもこれといった特徴のないシャウム・ヒーの牧場主の服装を身に付けている。彼はシーゾーに尋ねられない限り自分の考えを口に出そうとはせず、部下の間に根拠のない噂が広がることも決して許さない。また、極めて頑固で事務的な面もあり、他のヴィゴたちの内輪もめなどには加わろうともしないのである。ブラック・サンにおけるクリータの地位は確実に保証されており、何らかの理由で彼が退くことになっても、娘がその地位を受け継ぐことになるのは間違いない。
多くのヴィゴたちが自らの勢力基盤を拡大させようと懸命に働いている一方で、ロネイはその活動範囲をアウター・リムに属するいくつかのセクターに限っており、このことはトゥイレックにとって明らかに不可解な行動である。彼はそこでギャンブルや武器売買、スパイスの密輸、奴隷売買などの犯罪に明け暮れており、各セクターに多くの同盟組織を保持している。その中にはブラック・サンと直接関わりのある組織も含まれているが、残りは他の犯罪組織や企業とのパイプになっているのである。おそらくロネイは自分が帝国の周辺で最も安全に仕事を行っている犯罪者だと感じているのだろう。
最近になってロネイは自分の所有する広大な交友網の維持に大きな努力を必要としている。反乱同盟軍の勢力が広がるにつれて彼の部下の間にも逃亡者が出てくるようになったのである。反乱軍艦船による奴隷船の強奪も頻繁に行われており、さらに反乱軍の影響力が大きいセクターには奴隷制度を禁止する法律を制定するところも出現している。こうした現実によってロネイの収入は確実に減少しているのである。
しかし、ロネイの下で働く弱小奴隷商人ギルドが苦しんでいる一方で、やはり彼の抱えている力あるミタラノア奴隷評議会はむしろ繁盛している。数年前、彼がこの組織における権限を得る際には注意深い行動と多くの金が要求されたが、長期的な利益のことを思えば十分に努力の甲斐は得られた。ロネイはミタラノア奴隷評議会に古代マンダロリアン・ダンジョン船を始めとする多くの艦船をもたらすことになったが、彼らにとっては単に仕事上の必需品を手に入れた以上の意義があったのである。
ロネイは奴隷売買による損害をライロスで手に入れたライル・スパイスの取引きや、帝国軍と反乱軍との戦闘が激化したことによって需要が増加した武器取引で補っている。しかし、所詮は苦肉の策でしかなく、彼の巨額の損失を完全に補填するには至っていない。プリンス・シーゾーはヴィゴたちの収入の減少には極めて寛大だが、状況が急変しない場合はその限りではないのである。
ロネイは特に自分が他のヴィゴたちよりも勝っていると主張するようなことはしていないが、彼はよく頭の触手に色鮮やかな刺青を入れており、服装も宝石をちりばめた豪華なローブを好んで身に付けている。この派手な衣装はロネイの過去に起因しているとささやく声もあり、部下たちは彼がトゥイレック都市の部族長の息子であると信じている。しかし、彼の父は銀河中から下品な芸術品を集めていただけの男であり、彼はその高価な趣味を支えるために奴隷として売られていたのである。
ロネイは卑劣で何かと悪知恵の働く典型的なトゥイレックであり、部下や取引先の扱い方も非常に回りくどい。しかし、彼は奴隷との違いを示すためにはシーゾーの前でさえ媚びを売っていればよいことを知っており、自分がブラック・サンの中で他のヴィゴたち以上の野心を抱いていることも知っているのである。
ロネイと同様にモン・カラマリのペリットもかつては奴隷だった。帝国のための強制労働を強いられた彼はシーナー・フリート・システムズ社の経営幹部の屋敷に売られていたのである。ペリットの主人はバイブロスにあるシーナー社の巨大工場の最高責任者であり、企業経営全般とこのセクターでのTIEファイターの製造における全責任を負っていた。ペリットはその主人の下で従順に働いていたが、同時にコンピュータやドロイドに関する鋭い感覚を表し始めていたのである。主人はすかさず彼を工場の仕事から外し、自分の個人的な補佐役に就任させた。ペリットは主人の様々な仕事に関わるようになり、シーナー社のデータ網や無数のドロイドたちを通じて大きな経験を積んだのである。彼はシーナー社の多くの機密に関与していたわけではないが、いくつかのコードを破り、社内をうろつくことによってこれらを掴むことも時間の問題だった。
ペリットはシーナー社のデータ網から非常に貴重な情報、すなわち同社の生産スケジュールや調査計画書、人事記録などを発見したが、これによって行動を起こすようなことはなかった。その後、彼は帝国軍の正式な奴隷として引き渡されたのである。こういったことは極めて有能な奴隷に対してよく行われることであり、言い換えれば追放、あるいは厄介者たちを処刑するための口実に過ぎなかった。しかし、ペリットがデータ網から機密事項を盗んだことが発見されていたのか、もしくは監視されていたのかは未だに分かっていない。
ペリットは帝国の中心地コルサントに連行され、インペリアル・センターの製造請負部門で働かされていたが、後に新しい主人、すなわち犯罪組織ブラック・サンのヴィゴの1人だったシーゾーの下に売られることになった。シーゾーはペリットを自分の直下に置き、その才能を犯罪組織の中でどうやって使うかを教え込んだのである。ペリットはそのすべてを学び取り、シーゾーの側近の1人となった。そして、ついにブラック・サンの首領となったシーゾーは彼に自分のかつての地位を譲り、その平凡な犯罪活動の監視を始めたのである。
それ以来、ペリットはブラック・サンにおける自分の職務を効率的にこなしていた。彼はコンピュータ犯罪の才能を活かして銀行詐欺や通貨の偽造、企業秘密の窃盗、企業データ網の破壊、さらには小さなセクターの経済機関に対する情報操作などを行っていたのである。彼は自分の才能をさらに伸ばすため、ヴァーパインのスライサーからサラスタンの宇宙船商人に至るまで様々な交友関係を築いており、さらに銀河中の金融会社と同盟関係にあるニンバニーズの銀行員集団とも親密な関係を保っている。ペリット自身の技術力もまだ十分通じているのだが、彼は常に一歩先を見据えているのである。
噂によると、ペリットはシーゾーとの関係は良好だが、首領との親交を妬む他のヴィゴたちからはあまりよく思われていないらしい。彼は機密保持と護身用に精巧なコンピュータ制御のセキュリティ・システムを使用しており、倉庫には緊急時のための暗殺ドロイドを隠しているとも言われている。しかし、ペリットの最大の防御手段はプリンス・シーゾーからの絶大な信頼なのである。
ナルローニのスプラクスがブラック・サンでヴィゴの地位を得たのは、彼がまだ故郷セラノンの貿易ギルドの若い後継者に過ぎなかったときのことである。彼はブラック・サンで多くの仕事を学び、その後、著名なブレンタルの貿易商に師事していた。しかし、スプラクスはブレンタルの主人から星間貿易や銀河経済について多くを学びながら従順に仕えていた一方で、その地位をブラック・サンの関心を高めるためにも利用していたのである。彼は修行時代を終えると部門監査役としてシーゾー輸送システムズ社に雇われ、アウター・リムで輸送船の監視を行っていた。そして数年後、法外な年収によって巨万の富を手にしたスプラクスは銀河中心部の非公式な星系に退いたのである。
スプラクスのXTSからの退職はヴィゴとしてブラック・サンに加わることへの隠蔽工作に過ぎなかった。プリンス・シーゾーは彼の貿易商としての経験を高く評価しており、彼に銀河貿易の中心部で独自の犯罪ビジネスを行うことを許可したのである。仕事熱心なスプラクスはすぐに密輸業者や船泥棒、闇市場の業者、悪徳企業の幹部などに組織への賛同を強要したが、彼らの大半はスプラクスとブラック・サンとのつながりを知らなかった。彼はこれらの新しい人脈とXTSの巨大輸送網を巧みに利用し、アウター・リムから銀河中心部にまで及ぶ大きな勢力を築き上げたのである。
スプラクスの仕事の大部分は物資の輸送や現金、情報の交換などを行う輸送船への襲撃に集中している。彼の下で働く部下たちも積み荷の強奪や異なる相手先への誘導を行っており、自分たちにとってより有益な顧客にそれらの物資を配送しているのである。多くの買収された企業幹部や船泥棒、海賊、詐欺師などは権力者から物資を確保することが可能となり、スプラクスの部下たちも医薬品を詰め込んだ軽貨物船から宇宙艦船の部品を運ぶ大型貨物船まであらゆる船を強奪しているのである。
頭のいいスプラクスは自分の行動範囲を多様化させており、スパイスや奴隷の売買にも手を出しているが、仲間のヴィゴたちと同じような行動をとることには慎重になっている。また、彼は反乱軍と帝国軍との戦いが続いているのを受けて活発に武器の取引きも行っているが、彼自身が反乱軍を支持しているのかどうかは別として、その顧客には反乱軍の代表団が多いようである。事実、スプラクスは反乱軍の中に数人の密使を送り込んでおり、彼らから常に反乱軍の活動に関する報告を受けている。しかし、これはスプラクスが帝国の敗北を願っているわけではなく、シーゾーの命令によって行っているだけのことであり、シーゾーも反乱軍が勝利するなどとは到底考えていないのである。
スプラクスの服装の趣味は偉大なブレンタルの商人に強い影響を受けている。彼は全体に鮮やかな刺繍の入った長めのチュニックとジャケットを身に付けており、喋り方までかつての主人にそっくりである。また、彼は若い外観を維持するために灰色の髪をより黒く染めているが、若く、そして強く見せることは重要であり、彼はこうして知的に思わせることに成功している。しかし、シーゾーには彼が反抗を企てるには活発すぎるということも分かっているのである。
クオレンのヴェッカーはおそらくプリンス・シーゾーに仕えるヴィゴたちの中で最も特徴のない男といえるだろう。彼の一団は勢力範囲を広げるという点では理想的な犯罪組織ではないが、ヴェッカーはブラック・サンに安定した収入を献上し、シーゾーの力にもほとんど恐れを抱いていないのである。シーゾーは犯罪組織が野心を映し出す鏡であることを知っており、ヴェッカーが自分の勢力を拡大させようとしない以上、彼がブラック・サンにおける影響力を増大させることもないだろうと考えている。これといった特徴のないごく普通のヴィゴは、他のヴィゴたちにとってもこれといった特徴のないごく普通の競争相手に過ぎないのである。
かつてのヴェッカーはヴィゴの部下の1人だった。彼の哲学は常に主人に仕えることであり、自らの目標として出世を掲げたり、権力増加のために反乱を企てるようなことは一切考えていなかったのである。後に上官はシーゾーへの反抗を企てたために処刑され、ヴェッカーは自動的にヴィゴに昇進したが、彼にとっては今までの生活と何も変わったところはなかった。部下たちと比べれば確実に組織における影響力は増大したのだが、彼は未だに偉大な主人に仕えているつもりだったのである。
ヴェッカーは前任者が何年もかけて築き上げたカジノと娯楽産業に基づく犯罪組織を譲り受けた。これらの多くは完全に違法なものだったが、同時にブラック・サンによる厚い擁護も受けていたのである。しかし、このビジネスは事実上独り立ちしており、ヴェッカーは自分と組織を禍へと導くかもしれない危険な計画に加わる理由がいまひとつ理解できずにいた。
それでも娯楽産業自体は大きく繁盛していたため、ヴェッカーは自分の地位を楽しんでいたのである。パトロンたちは彼のクラブで酒を飲み、彼の経営する高級ホテルに泊まってスウープ・レースやカジノで楽しみ、大金を落としていった。銀河の住人たちは常に娯楽と余暇を必要としており、ヴェッカーは多様な娯楽を提供することによって地下組織であるブラック・サンにも多額の収入をもたらしていたのである。
自らの地位が経済的に安定し始めても、ヴェッカーは主人に対する陰謀や他のヴィゴの失脚などは到底考えもしていない。このような行為は自分の安全を傷つけることになるだけだとするヴェッカーにとって、安定した生活と引き換えに権力への望みを得ることは単なる大仕事でしかないのである。
エティのウムディは企業セクターで活躍しているプリンス・シーゾーの力強い部下である。このセクターでは他のヴィゴたちも活動を行っているが、彼が最も広大な領域を指揮しており、組織に対する貢献度も高いのである。
ウムディはその広大な活動範囲の中で企業セクター共同体の役人や宇宙港の従業員の買収、ドロイドの再プログラミングなどを行うことによって、企業セクターにおけるブラック・サンの成功を導いている。また、彼は企業セクターの内部事情にも極めて精通しており、これによってこのセクターの経済を揺れ動かすような突然の異変からも利益を挙げることができるのである。
ウムディは企業セクターでのみ得られる様々な特権をもった協力的な犯罪者たちを数多く雇っている。彼は企業セクター共同体と契約している不幸な労働者たちのためにカジノや娯楽施設を経営しており、その並外れた生産力への敬意として、彼らにつかの間の余暇における勝利の喜びを分け与えているのである。その一方で、ウムディはその気になれば自由に有利な商取引や窃盗、商船への襲撃などを行うこともできる。企業セクター共同体の階級構造の中に潜伏している彼の部下やスパイは常に企業機密をあさっており、これらの情報を最も高い金額を提示したものに売ったり、同セクターの高官を恐喝するための道具にしたりしているのである。企業セクター共同体はセクター内の金をすべて巻き上げるために最大の努力を行っているのではないかという非難の声もあるが、実際にはすべてウムディ1人の仕業だと言っても過言ではない。
一般にエティはよく陽気で楽天的な種族として見られている。しかし、それが外見だけによるものなのかは知られておらず、ウムディも実に富に浸っているが、ロネイと違ってシーゾーや他のヴィゴたちの前で自分を誇示することには極めて慎重である。彼は典型的なエティであり、そのスリムな身体を軽い織物でできたチュニックで飾っているが、宝石類は頭に巻いた輝く輪だけに留めている。また、ウムディはエティIVに豪華な邸宅を構えており、そこに住む企業セクター共同体の行政官たちを絶えず監視しているのである。
当然、貪欲さは彼自身の堕落にも繋がっており、ウムディはブラック・サンの収益から多額の金を懐に入れている。しかし、彼のスパイ網はシーゾーの情報網を完全に見抜いており、ウムディもこの不正がシーゾーに漏れることをまったく恐れていないのである。
アヴァロ・スッククールはローディアにおけるブラック・サンの最も有名な連絡員である。仲間たちと違って彼の仕事はカジノの主人という立場上、一般の人々との接触やブラック・サンとの取引きに関心をもった人々との面会が中心になっている。また、スッククールの直属の上司は同じローディアンであるヴィゴのクレゾだが、彼は直接プリンス・シーゾーと通信する経路も維持しているのである。
スッククールはイクウォーター・シティの娯楽街でローディアでは標準クラスの近代的なカジノを経営している。この近くにはより大きく派手で繁盛したカジノがたくさんあるが、彼は自分の店フリップ・オブ・ザ・クレジットの大きさに満足しているのである。ローディアにはスッククールがブラック・サンの連絡員であることを知っている者はほとんどいない。他のカジノや娯楽施設も大部分は彼の手下によって経営されており、多くのギャンブラーや大量の掛け金を独占して楽しんでいるのである。
フリップ・オブ・ザ・クレジットを訪れるすべての客は厳重な監視網によって監視されている。客の中には武装した警備員も混じっており、ブラック・サンのスパイや雇われた衛兵たちも偽造された機械や偽金をくまなく探している。彼らはシガーラの煙に紛れてサバックを楽しみながら、絶えず敵や競争相手にも目を光らせているのである。
スッククールは自分のカジノを大変気に入っている。彼は一見したところ単なる成功したローディアン実業家に過ぎないが、その顔に覆い被さる衰えた鈍い緑色の皮膚は彼の実業家としての人生を色濃く映し出しており、その片口のベイシックも相手に見た目以上にのろまな印象を与えているが、実際には極めて利口なのである。
スッククールはブラック・サンにとって有能な人材である。彼は優れた社交性と逃避力を兼ね備えており、これらが困難な状況を追い払うための決め手となり得ることも知っている。性格も陽気で明るいが、情報こそが力であることを十分に心得ているのである。情報は与えられるものではなく、むしろ売られるものであり、手にすることができなければすべての利益を逸してしまう。スッククールにはブラック・サンほどの野心はないが、いずれは1つの組織をまとめ上げるだけの素質は十分にあると言えるだろう。
スッククールは甥のグリードと同じくテツァス族のローディアンであるが、その仲間たちは政治的理由からローディアの闘将ナヴィック・ザ・レッドに事実上滅ぼされてしまった。しかし、スッククールにはブラック・サンからの信頼という強みがあり、ナヴィックもブラック・サンを敵に回すほど愚かではなかったのである。その上、テツァス族の大部分は既に殺されており、スッククールが彼の地位を脅かす心配もほとんどなかった。実際、スッククールにも、そしてナヴィックにもそんな勇気はなかったのである。
ハウズミンはコルサントにそびえ立つプリンス・シーゾーの宮殿の警備主任を務めるずんぐりとした男である。彼は何らかの異変が起こったときに直接シーゾーに報告する権限をもち、非公式ながらも宮殿に配置された警備員たちを監視、さらには訓練する警備隊長の地位も与えられている。
ハウズミンは監視情報センターから、シーゾーに避けるようにと命令されている場所を除いて宮殿全体の状況を監視している。彼は12人の部下を抱えており、彼らもハウズミンと共にシーゾーの敵や部下、さらにはヴィゴたちによって雇われたスパイの捜索に全力を注いでいるのだ。
また、ハウズミンは宮殿の門番でもある。彼は高速リパルサー・チューブウェイ網を利用して宮殿の正門および訪問者を監視し、安全確保のため定期的にドアのコードを変えている。シーゾーと面会するため宮殿を訪れる客はほとんどが上流階級にいる要人たちだが、そのような場合でもハウズミンが外で直接出迎え、内部の様子を知られないように目隠しをさせて案内する。ハウズミンの付き添いや案内なくしてシーゾーの宮殿を出入りできる者は1人もいないのだ。
背が低く、太っていて禿げ頭というハウズミンの容姿は人々を実に不安がらせている。彼はほとんどいつも灰色のジャンプスーツを着ており、左の尻には用心のためのブラスターが貼り付けられている。また、黒く塗った歯をむき出しにして人をおじけづかせるような笑い方をし、その割には無口で訪問者を困惑させている。ハウズミンはもともと口に出すより身振りや顎で命令を出すことを好むが、これはシーゾーが利用しやすいように人工的に移植させた組織によるものだと信じている者も少なくない。さらに、彼には赤外線を捉えることのできる視覚組織も移植されており、暗闇や靄の中でも遜色なくものを見ることができるのだ。
ハウズミンの能力や忠誠心には疑う余地もほとんどなく、あたかも彼がシーゾーに操られた死人であるかのように思えてしまう。
この恐るべき美人姉妹はプリンス・シーゾーに雇われた典型的な殺し屋であり、その腕前はかなりのものだが、ブラック・サンとの直接的な関係は特にない。
エピカンシクスの双子ザン・パイクとズー・パイクは、26標準歳にしてアウター・リムの小星団パカンス・リーチで名を挙げたプロの格闘家である。2人の唯一の違いは、ザンが両目とも緑色であるのに対し、ズーは片目が緑色でもう片目が青色であることだ。2人は今まさに銀河の格闘技界に台頭し始めたところであり、違法なスポーツが密かに行われている秘密の闘技場や高級娯楽ホールで敵と戦っている。彼女たちは機敏であると同時に格闘センスにも長けており、さらに、金を払わずに近づいてくる者や賞金の分け前だけが目当てのブローカーを一切信用していないため、契約作業にいたるまでも自分たち自身の手で行っているのである。
ザンとズーはテーアス・カジまたは「鋼鉄の腕」とも呼ばれるバンデュキ武術の達人である。若い頃、2人は母親にエピカンシクスが征服したパカンス・リーチの惑星バンデュキへ連れて行かれ、この地方で大いに崇拝されていた隠者の秘密集団、パラワの門弟たちと共に多くのことを学んでいた。彼女たちはそこでパカンス・リーチの偉大な歴史や文学、哲学について学びながら、物理学と武器を一切使わない格闘技の腕を身に付けたのである。武術を習得したパイク姉妹はテーアス・カジの修行生の中でも素早くその階級を上げていき、師匠たちからも多くの賛辞を受けていた。しかし、本来このような武術は社会をよりよくするために使われるものなのだが、パイク姉妹は自分たちの才能を私利私欲のために使い始めたのである。
2人の恐ろしさはまさにその美しさに匹敵している。彼女たちはパラワの師から譲り受けた自由に動ける格闘用のチュニックを身に付けており、エピカンシクス特有のしなやかで強靭な肉体を誇っている。また、通常は黒髪をモールで束ねているが、時にはその先端に刃を仕込み、戦闘時に致命傷を与える武器として使用するのである。氷のように冷静な2人は決して感情を表に出さない。パイク姉妹は素手でも十分に敵を打ち負かすことができ、逆に武器を持たないことは2人にとっての誇りにもなっているのである。