モス・アイズリーのチャルマンの酒場で働くウーハーは、酒に飢えた客でなければあきれ返るほど無愛想で気性の荒いバーテンダーである。彼は無数のエイリアン種族からなる常連客たちを前にしても顔色一つ変えようとしない。彼が手にするマグカップも不潔極まりないが、乾ききった砂漠の星にたむろする客たちは、何も躊躇することなくそれを受け取ってしまうのだ。
幼い頃にタトゥイーンで両親に捨てられたウーハーは、トゥイレックのリース・カイレンに成りすましたシードーに拾われ、育てられていた。だが、このエイリアンが賞金稼ぎのオーラ・シングに殺害されたことで再び孤児となり、この砂漠の惑星で自力で生きていくことを強いられたのだった。事実、こうした過酷な人生経験こそが、彼の気難しい性格の原因となっている。やがて彼はどういう訳かドロイドをひどく嫌うようになり、いつの日かタトゥイーンを逃れたいという願望を抱きながら、大人へと成長していったのである。
ウーハーがアルコールの調合に目覚めたのは、砂漠に捨てられていた化学キットを見つけたときのことだった。彼はいろいろな物質を混ぜ合わせて旨い飲み物を作るという実験に没頭し、ついには通信教育でバーテンダーの資格を取得したのである。ウーハーは生体錬金術師を自称するようになり、やがてウーキーのチャルマンから彼の酒場の専属バーテンダーとして雇われたのだった。天才的なバーテンダーとなったウーハーは、もはやバーに備え付けのコンピュータを使うまでもなく、どのエイリアンが生理的にどんな化学薬品の配合を好むか、そして、どうすれば最も効率よく飲み物を提供できるかを十分に心得ているのだ。
その気難しい性格と醜悪な風貌とは裏腹に、ウーハーは大きな夢を抱いていた。彼は名声を得るであろう画期的な飲み物の開発に熱中しており、その計画のターゲットは他でもない、ジャバ・ザ・ハットだったのである。ジャバの味覚をくすぐるような飲み物を作り上げれば、それは大いなる成功をもたらすことになるだろう。その特別な酒を調合する過程で、彼は意外な相手と共同作業を行っていることに気づいたのだった。大嫌いなはずの多目的ドロイドC2-R4である。やがて、ドロイドの触媒式燃料コンバータと化学分析プログラム、そしてウーハーの持つ気迫と調合の秘術が融合され、最高のリキュールが完成した。これはハン・ソロによってブラスターで射殺されたローディアンの賞金稼ぎ、グリードの死体から抽出された秘密の原料で作られたものである。ローディアンから抽出されたフェロモンはこのリキュールに力強いアクセントを与え、味にうるさいハットを大いに満足させたという。
ローディアンのグリードは、強い賞金稼ぎに憧れる小心者だった。しかし、彼がその短い人生の間に仲間より多くの獲物を仕留めたのも事実である。
タイリアス星系に属するグリードの故郷ローディアでは、賞金稼ぎが最も名誉ある職業とされており、様々な部門ごとに毎年1回最も優れた賞金稼ぎが表彰されていた。ただ1つ不名誉な行為とされていたのは、発見したお尋ね者を放置し、余計な犯罪を積ませて賞金を吊り上げることである。こうした卑劣な行為にはローディアの評議会も難色を示していたのだ。
グリードの父も多くの人々から尊敬される偉大な賞金稼ぎの1人だった。だが、当時はローディアが最も野蛮だった時代でもあり、氏族間の流血の争いが絶え間なく続いていたのである。著名な賞金稼ぎであるグリードの父も、冷酷なナヴィック・ザ・レッド率いる好戦的なチャッツァ氏族のローディアンたちにとって格好の標的とされていた。やがてグリードの父は惨殺され、家族の財産も全て奪われてしまう。それでもチャッツァ氏族の気勢は衰えず、ナヴィックはグリードの属するテツァス氏族のローディアンを皆殺しにすると宣言したのだった。
平和的なテツァス氏族のローディアンたちではナヴィックの軍勢に太刀打ちできず、危機を察知したグリードの母ニーラは故郷から逃走することを決心する。彼女は当時3歳だった幼いグリードを抱きかかえ、2人の兄ノックとティークー、その他の多くの仲間たちと共に銀色に輝く3隻の巨大宇宙船で故郷を飛び立った。その後、第2の故郷を求めて銀河系をさまよう宇宙船の中で、ニーラはグリードの弟となるキーダックを出産する。やがて彼らはついに名も知らぬジャングルの惑星を発見し、平穏な暮らしに戻ることができたのだった。
この新しい惑星で成長したグリードに本当の故郷に関する記憶はなく、彼はこの惑星を故郷だと信じたまま15歳を迎えることになる。そして彼がいつものように弟のキーダックと遊んでいると、ノック叔父が山の洞窟の中に入っていく姿が見えたのだった。叔父の後をつけた2人は洞窟の中で3隻の巨大な宇宙船を発見する。2人はこのことを母に話し、初めて自分たちの悲劇的な運命を知らされたのである。
そして1ヶ月後、父を殺したナヴィック・ザ・レッドが部下を引き連れてついにこの惑星にやって来た。彼らはテツァス氏族の移住者たちを次々と虐殺し、グリードらは再び宇宙へと逃走することを余儀なくされる。ノックがたびたび宇宙船を点検していたのもこのときに備えてのことだったのだ。3隻のうち1隻はすぐに破壊されてしまったが、ノックの操縦する<ラディオン>はハット・スペースにある宇宙港衛星ナー・シャダーまで逃走することができた。彼らの新しい生活はナー・シャダーのコレリアン地区のレベル88で始まり、グリードはここで一人前の青年へと成長していったのである。
ある日、グリードはナー・シャダーの雑踏で2人の賞金稼ぎ、スパーチ ”ウォーホグ” ゴアとディズ・ナタズに遭遇した。彼らは帝国のお尋ね者である腐敗したスパイス検査官を殺害するが、同じ賞金を狙っていたゴーム・ザ・ディゾルヴァーと呼ばれる恐ろしいサイボーグに襲われていた。偶然居合わせたグリードは背後からゴームを仕留めることに成功し、結果的に2人の命を救うことになる。このとき彼らから反乱軍に賭けられた賞金のことを聞いたグリードは、偶然にもコレリアン地区の同じレベルに反乱軍が隠れていたことを知っており、帝国軍に密告したのだった。名のある賞金稼ぎは自分専用の船を持っていなければならない。グリードもこの賞金で自分専用の海賊船(既に名前は<マンカ・ハンター>と決めていた)を手に入れることを熱望していたのである。
しかし、ゴアの弟子となって賞金稼ぎの修行に励んでいたグリードは、すぐに自分の過ちに気づくことになる。密告を受けた帝国軍は反乱軍の隠れ家に対して激しい攻撃を行い、コレリアン地区の4分の1を瓦礫の山と化したのだ。グリードと2人の賞金稼ぎはその直前に宇宙船<ノヴァ・ヴァイパー>で脱出することができたが、賞金欲しさのために家族の死を招いてしまったことは、グリードにとって深い悲しみとなるのだった。
その後3人はタトゥイーンへと辿り着き、グリードとゴアはジャバ・ザ・ハットに雇われた。ローディアンのハンターは冷酷で、安い賃金でよく働き、そして失敗したときはランコアにとって最高の餌となる。そのため、ジャバは彼らのことを大変気に入っており、グリードにとってもジャバの下で働くことは賞金稼ぎとしての能力を高めるのに最適の方法だったのだ。
やがて、グリードはジャバからハン・ソロへの借金の取り立てを命じられた。奇しくも彼はナー・シャダーで一度ソロと出会っており、屈辱を味わわされたことがあったのだ。そのとき愛機となる予定だった<マンカ・ハンター>を見ていたグリードは、どうしてもデック6パワー・カップリングが欲しくなり、偶然見つけた<ミレニアム・ファルコン>から盗み出したのだった。しかし、彼はチューバッカに捕まってしまい、そのときソロにランコアの皮製ジャケットを奪い取られたのである。グリードはそのときの屈辱を決して忘れてはいなかった。
モス・アイズリーの酒場でソロを待っていたグリードは、運良く彼が1人になったのを確認する。もちろんチューバッカも遠くから2人に目を光らせていたが、グリードはそんなことに気づくはずもなかった。それでも彼は用心のためゴアに後方支援を依頼し、ソロの胸元にブラスターを突き付けると、ジャバからの借金の返済を要求する。しかし、ゴアにはグリードに勝ち目がないことは十分に分かっており、当然手助けをするつもりもまったくなかった。彼はかねてからグリードの命を狙うナヴィックの部下、スークとニーシュに買収されていたのである。そして、先に相手を仕留めたのはやはりソロだった。グリードはテーブルの下にブラスターを握ったソロの利き腕が隠れていることにも気づいておらず、簡単に返り討ちにされてしまったのである。未熟な賞金稼ぎの短い一生はこうして終わりを告げたのだった。
その後、酒場でバーテンダーをしていたウーハーはグリードの死体を回収し、彼の肉片を新しいドロイドC2-R4に注ぎ込んだ。彼がグリードの血肉から作ったリキュールの味は未だかつてないほど力強く、ジャバも大金を払ってくれると確信させるものだったという。
ボシェックはハン・ソロとライバル関係にある人間の密輸業者である。事実、彼はケッセル・ランでハンの持つ12パーセクの記録を打ち破ったことがあるのだ。しかし、それは貨物を一切積んでいない状態での記録だった。彼は宇宙船<インフィニティ>でこのささやかな勝利を手にしてタトゥイーンに帰還し、2体のドロイドを捜索するためこの惑星を訪れていたダース・ヴェイダーのスター・デストロイヤーと遭遇する。ボシェックは大砂丘海に船を緊急着陸させ、モス・アイズリーへと向かった。彼はこの宇宙港都市で違法な技術工場を開設していたのである。
モス・アイズリーの酒場でチューバッカを見つけたボシェックは、自分が打ち立てたケッセル・ランの新記録について自慢げに吹聴していた。そのときベン・ケノービと名乗る老人がオルデラン行きの仕事を持ちかけてきたが、彼はタトゥイーンのディムUの修道僧に雇われている身であり、自分の船を持っていなかった。そのため、彼はベンにチューバッカを紹介し、ハン・ソロのもとへと向かったのである。
彼はハンに自分の新記録を自慢するが、<インフィニティ>の違法着陸を知った地元政府が彼を拘束しようとしていることを知り、その場を逃れる。その後、ボシェックはベン・ケノービと遭遇した経験を利用してフォースの善良な面を説く路上司祭の振りをしていた。しかし、ジャワのヘット・ニックが帝国軍に虐殺される現場を目撃すると、反乱同盟軍に加わる決意をしたのだった。
アンドー星系出身のアクアリッシュ、ポンダ・バーバは、アクアリッシュ全体の10%ほどしか存在しないクアラ族の1人である。クアラ族は指の生えた毛むくじゃらの腕を持っているため、沼地や湿地でも生活することができるのだ。
帝国軍によって引き起こされたアウター・リムの混乱の中、放浪生活を余儀なくされていたバーバは、ジャバ・ザ・ハットの下でスパイス密輸を行うなど、数々の悪事を働いていた。しかし、スパイス貯蔵庫の火災や、相棒だったグルーシャイトの武器商人ジョセル・メリットの死など、不運な出来事が相次ぎ、ごく平凡な密輸商人だったバーバは徐々につまづきを見せていくのだった。
ある日、コレリアン星系の小さな宇宙港トゥルーザンで軽貨物船の修理をしていたバーバは、悪名高きドクター・エヴァザンと、彼を追う賞金稼ぎジョドー・カストに遭遇する。カストはバーバの最後の相棒メリットを殺害した男であり、彼が復讐を誓った相手だった。カストはエヴァザンを追い詰めるが、貨物船の下に隠された砲座が自分を狙っていることになど気付くはずもなく、いとも簡単にバトル・アーマーを貫かれてしまう。メリットの仇をとったバーバはエヴァザンを親切に船に乗せるが、彼の本当の目的がエヴァザンに懸けられた1,000,000クレジットの賞金だったことは言うまでもない。しかし、副操縦士と通訳がどうしても欲しかったバーバは、医者と行動を共にする利点を考え、エヴァザンと新しいコンビを組むことにしたのだった。悪名高き密輸コンビとなった2人は、銀河系の暗黒街を次々と恐怖に陥れていくことになる。
急なアクシデントが2人を襲ったのは、モス・アイズリーを訪れていたときのことだった。隣に医者がいるため強気になっていたバーバは、ジェダイ・ナイト、オビ=ワン・ケノービの存在に気付かず、ルーク・スカイウォーカーに喧嘩を売ってしまう。結局、彼はオビ=ワンのライトセイバーの一振りで右腕を失うはめになったのだ。
その後タトゥイーンから逃げ出した彼らは、ジャバ・ザ・ハットの依頼を受け<ミレニアム・ファルコン>の捜索にも携わった。しかし、右腕を失ったアクアリッシュの噂が広まると、バーバはうかつな行動ができなくなり、エヴァザンにバイオ・アームの移植手術を要求する。だが、手術は失敗に終わり、彼はかつての相棒を追う立場になったのである。
その後、再びモス・アイズリーに戻ったバーバは、ドクター・コーネリアスと名を変えてサイボーグ化クリニックを開業していたエヴァザンを発見する。そして、バーバは最高級バイオ・アームの移植手術を行うことを条件にエヴァザンと和解し、彼のボディガードとしてコンビを復活させたのだった。その後、2人はアンドーへと戻るが、不幸にしてバーバはエヴァザンの狂気に満ちた実験の犠牲となってしまう。エヴァザンは盗んだ帝国製の転送装置を改造し、バーバの精神を若いアクアリッシュの元老院議員の肉体に転移させようと試みたのだ。しかし、この実験は失敗に終わる。結果的に議員の精神がバーバの傷ついた肉体に転移し、バーバの精神はそのままどこかへ消えてしまったのだった。
ドクター・コーネリアス、ルーフーなど、多くの別名を持つ自称天才外科医のドクター・エヴァザンは、正真正銘の狂気に満ちた大悪党である。彼を見掛けた人々は、その無残に切り刻まれた顔を見るだけで背筋を冷たくし、なぜこのような悪党が自由に街を歩き回っているのか不思議に思うことだろう。エヴァザンはバラバラに切り刻んだものを元に戻す医者の技術に惚れ込み、不老不死を研究するサイボーグ化専門医師のプロフェッショナルを目指していたが、いつの間にか患者のあげる苦痛の叫びに無常の喜びを感じるだけになっていたのである。
かつては惑星カリダの帝国アカデミーにも出願経験のあるエヴァザンだが、面接の際にその生まれ持っての狂気が暴露され、そのまま帝国軍によって囚人惑星デラリアンに投獄されてしまう。しかし、彼は簡単にそこから脱出すると、すかさずハインザー星系に出没し、開業外科医の偽造ライセンスを取得したのだった。ドロイドを一切使わない手術という触れ込みは多くの星系に知れ渡り、彼は無数の患者から法外な手術費用を手に入れる。だが、現在までに彼のメスによって被害を受けた患者は数百人とも言われており、40人以上が命を落としているのだ。当然、エヴァザンは常に地元の薬事監査局に摘発されていたが、決して1つの星系に長居せず、いつも際どいところで逃げ延びる彼の才能は、まさに天才的だった。
ドクター・デスと呼ばれるようになったエヴァザンは、よく12の星系で死刑宣告を受けたと豪語しているが、実際にはアンドーを含めた30以上の星系が彼に死刑を要求している。彼はその後も、奴隷売買、殺人、違法人体改造など、ありとあらゆる犯罪に手を染めており、犠牲者や遺族によって懸けられた賞金の額は既に1,000,000クレジットにも達しているのだ。
モス・アイズリーに現れる数ヶ月前、彼はコレリアン星系でジョドー・カストという名の賞金稼ぎに追い詰められていた。カストの放ったブラスターはエヴァザンの右頬を焼き払い、止めを刺すまであと一歩というところだったのだ。しかし、エヴァザンは後に相棒となる悪名高きポンダ・バーバによって救われる。彼の助けがなければ、エヴァザンはこのとき確実に殺されていただろう。
彼がモス・アイズリーに身を潜めるようになったのは、顔面に受けた傷のことが銀河系に知れ渡り、もはや自分のイデオロギーが役に立つ場所はアウター・リムにしか残されていないと考えたからである。エヴァザンはモス・アイズリーにカッティング・エッジ・ブティックを開業し、不老不死の肉体の探求を続けていた。しかし、2人は酒場で起こったルーク・スカイウォーカーとオビ=ワン・ケノービとの騒動によって、タトゥイーンを離れざるを得なくなり、再び銀河系を放浪することになる。エヴァザンは胸に傷を負っただけで済んだが、バーバは右腕を切り落とされていた。このとき彼は肉体の弱さを思い知り、不老不死の秘策は肉体ではなく精神にあると思い付いたのだった。
その後、2人はジャバ・ザ・ハットの賞金を求めて<ミレニアム・ファルコン>の捜索などにも乗り出したが、バーバの腕の移植手術に失敗したことで、エヴァザンは相棒から追われる立場となる。結局、彼はモス・アイズリーに戻り、ドクター・コーネリアスという偽名で小さなサイボーグ化クリニックを開業することになるのだった。しかし、変装の名人だったエヴァザンも、傷ついた顔を隠し通すことはできず、ついにはバーバに見つかってしまう。彼はいつか最高級のバイオ・アームを移植することを条件にバーバと和解し、アンドーにある孤島の居城へと戻るのだった。
エヴァザンは医学研究の許可を求めて、アンドー星系の元老院議員である若いアクアリッシュの説得にあたった。そして、研究内容を視察するためエヴァザンの研究室を訪問した議員は、改造された帝国製の変換装置を目の当たりにする。本来これはドロイドの再プログラミングに利用される装置だが、エヴァザンはこれを改造し、人の精神を別の肉体に繰り返し転送することによって、理論的には永遠に精神を保てるようにするという恐ろしい装置にしていたのである。エヴァザンは最終的にはこの装置を自分に使うつもりだったが、それにはまだテストが必要だった。そこで彼は議員を気絶させ、バーバの精神を転送させようと考える。成功すればバーバには腕の付いた若い身体と、政治的実権を与えることができるのだ。
実験は終了し、2人の意識が戻るまでの間、エヴァザンは適当な若い人間を探していた。だが、エヴァザンはかつて彼に7人の家族を殺された賞金稼ぎ、グリオン・シライザーと遭遇する。復讐に燃えるシライザーは、残された家族と共にエヴァザンの居城の屋根に宇宙船を着陸させた。屋根の縁に追いつめられたエヴァザンを救ったのはゼラチン質のペット、メデューザだった。シライザーは屋根から転落して死んだが、エヴァザンはメデューザの上に落ち、九死に一生を得たのである。
次にエヴァザンが見たものは、バーバの肉体に精神を転送された元老院議員だった。怒り狂った議員はサーマル・デトネーターでエヴァザンの居城を爆破させるが、彼はまたしてもメデューザに命を救われる。一方で、不幸にもバーバの精神はどこかへ消えてしまっていた。相棒は失われたが、エヴァザンの装置は彼に大きな希望を残し、静かに次の実験台を待つことになる。
帝国の初期の時代から、モモー・ネイドンは故郷イソアの偉大な指導者の1人だった。その独自の形態から「ハンマーヘッド」の異名を持つイソーリアンたちは、自然との共存を望んでおり、決して利益のために自然を破壊しようとはしない。彼らは巨大な栽培船で3つの大陸を往来しているが、その栽培船の頂点に存在するものが<タファンダ・ベイ>だった。その指導者を務めていたネイドンは、選ばれし者のみが纏うことを許された聖職者のマントを与えられ、母なるジャングルの保護に身を捧げていたのである。
<タファンダ・ベイ>はイソアの巨大観光センターでもあり、外界からの旅行者にも無料で開放されている。その内部にはイソアのあらゆる環境が忠実に再現されており、様々な植物が生息しているのだ。これはイソーリアンの技術者たちの誇りでもあった。イソアの経済はこの観光産業によって支えられているのである。
さらに、彼らは栽培船で宇宙へも進出しており、外界の人々に珍しいイソアの特産品の販売を行っている。しかし、彼らは中立主義を守っているため、銀河系で帝国軍と反乱軍との戦いが行われていることには気付いていなかった。
インペリアル級スター・デストロイヤー<コンクエスト>がイソアの軌道上に現れたとき、ついにイソアの平和も破られることになる。帝国軍は密輸業者の取締りの強化を理由にイソーリアンたちの強制尋問を開始した。銀河系のすさんだ現状を知ったネイドンは当惑するが、イソアの長老たちは仕方なく帝国の横暴を受け入れる。彼らには隠すことなど何もなく、帝国軍の調査はすぐに終わるはずだったのだ。しかし、<タファンダ・ベイ>を見た帝国軍は、この素晴らしい農耕技術を提供するようにと求めてきた。当時、帝国は農業区域の拡大を図っており、さらにはイソーリアンの技術を生物兵器へと応用することも視野に入れていたのである。
イソーリアンたちが母なるジャングルへの信仰を理由に要求を断ると、<コンクエスト>のアリマ艦長は彼らの中にスパイを送り込もうと考えた。だが、人間をイソーリアンに変装させることはできず、彼らの買収工作も失敗に終わる。そこでアリマは仕方なく6人の諜報部員を<タファンダ・ベイ>のコンピュータ・ネットワークに進入させるが、秘密のファイルを探っていた彼らはすぐに発見されてしまった。イソーリアンたちはスパイを船から追放すると同時に、<タファンダ・ベイ>からすべての外界人を締め出すという決定を下す。だが、これに激怒したアリマはジャングルに威嚇射撃を行い、バフォールの森を焼き払うのだった。彼は要求を受け入れなければ惑星を滅ぼすと脅迫したのである。苦しい選択を迫られたネイドンも母なるジャングルに死を言い渡すことはできず、とうとう帝国軍に秘密を提供してしまうのだった。
背信者となったネイドンは、長老たちによって裁かれることになる。彼は演説の中で帝国の暴挙について触れ、イソアの同盟軍への参加を呼びかけた。しかし、平和を信じる長老たちには到底受け入れられず、結局、彼は次の裁きが行われる3標準年後までイソアを追放されることになったのである。
銀河系の放浪を余儀なくされたネイドンは、タトゥイーンで数年間を過ごしていた。緑に乏しい惑星ではあったが、彼はイソアで学んだ知識を活かして多くの植物を栽培し、大盛況を巻き起こす。彼はモス・アイズリーの中央に大邸宅を構え、故郷から持ってきた黒葉のバフォール、有毒性のアルール・サボテン、燐光性のゴーサ、肉食性のアレスで建物を取り囲んでいた。また、地下には準知的食虫植物であるヴェスヴェージュに守られた6人用のシェルターが隠されており、彼はここで反乱軍と接触し、逃亡者を匿ったりしていたのである。
やがてタトゥイーンを離れるとき、帝国軍への復讐のチャンスが到来した。アリマ艦長が降格されてタトゥイーンに派遣されてきたのだ。彼の目的は2体のドロイドの捜索だった。これを知ったネイドンは、タルズのマフタックに自分が反乱軍を援助しているという情報をリークさせたのだった。
中佐に降格されたアリマはネイドンの邸宅を訪れ、彼にドロイドの情報を要求した。復讐を決意していたネイドンはブラスターを構えたが、本能的に平和を好む性格が彼を思い止まらせる。だが、アリマはバフォールを焼き払い、情報を渡さなければ植物をすべて灰にすると脅してきたのだった。
指定された期日まであと1日となったとき、ネイドンは偶然にもモス・アイズリーの酒場でドロイドたちを発見するが、彼らはすぐに宇宙へ飛び立ってしまった。ドッキング・ベイ94へ向かった彼が見たものは、上官の前で部下に失敗の責任を追及しているアリマの姿だった。ここで彼はアリマの上官を呼び、自分は彼にドロイドの居場所を教えたはずだと告げる。するとアリマを反逆者と決め付けた大佐は彼を射殺し、死体を路地に置き去りにしたのだった。あまりにも無残な出来事に罪の意識を感じたネイドンは、アリマの死体から遺伝子サンプルを2つ採集し、大切に持ち帰ったのである。
パルパティーン皇帝の死後、ネイドンは2回目の裁きを受けるため故郷へ戻ることを許された。長老たちは彼の意見を受け入れ、公式に同盟軍を支持することを決める。イソアは銀河中心部から遠く離れているため、帝国軍の即座な報復は避けることができたのだ。ネイドンは<タファンダ・ベイ>の指導者に復帰し、妻子との再会も果たした。その後、彼はアリマの遺伝子サンプルから2人のクローンを製造し、彼らと共に平和な暮らしを営んでいる。このクローンを育てることは、ネイドンにとってのせめてもの償いなのである。
マフタックはタトゥイーンで生まれ育ったタルズである。タルズは本来アルゾックIIIの原住種族なのだが、彼らの多くは帝国によって強制労働をさせられており、他の星系で生活している者はごく僅かしかいない。白く強大な毛むくじゃらの姿や、大きな4つの眼、長く鋭い爪などから、彼らを恐ろしい生物であると思う者が多く、自分から話しかけて来る者は非常に少ない。そのため彼らが何者なのかさえ知らない人々も数多く存在している。
幼い頃に孤児となり、モス・アイズリーのドッキング・ベイ12の通路に捨てられていたマフタックは、1人で逞しく成長していった。マフタックはいたって温厚で、優しい性格であり、誰とでもすぐに友達になるが、なかでもカーベとは特に深い友情を誓っている。もはや2人の間に愛情が芽生えていることも否定できないだろう。また彼は人々を観察しながら、他の誰よりも宇宙港を行き来する人たちのことを多く学んでいた。しかし、バンド・リーダーのフィグリン・ダンと、スパイのガリンダンだけは例外だったらしい。
事実上、マフタックはカーベの保護者である。奴隷商人に捨てられたカーベを引き取ったマフタックは、彼女にこの危険な街で生き抜く術を可能な限り教え込み、2人でドッキング・ベイ83の破棄された地下通路で生活していた。2人にはこれといった夢も希望もなく、彼女が盗んだ金や、彼が情報を売って稼いだ金で細々とした生活を送れればそれで満足だったのだ。
マフタックは銀河内乱にも全く関心はなく、唯一の楽しみといえば、酒場で交わすモモー・ネイドンとの雑談だった。辺境の惑星で人生の大半を過ごした彼にとって、帝国の残虐性など知るはずもなかったのである。
ある日、酔いつぶれたカーベを寝床へ連れて帰る途中、マフタックはジャバ・ザ・ハットのタウンハウスへ忍び込む決意をした。非常に危険な行為だったが、カーベは既に秘密の入り口を見つけており、莫大な金が手に入るチャンスでもあったのだ。
2人は屋根にある古い穴から中へ進入した。タウンハウスの内部には無数の罠や警報が仕掛けられていたが、カーベの鋭い感覚にはかなわなかった。そのとき偶然、2人は拷問部屋に反乱軍のバリド・メゾリアムが捕らえられているのを発見する。メゾリアムは2人にデータドットを託し、近々モス・アイズリーを訪れるというモン・カラマリに渡してくれと頼んできた。さらに、その報酬として反乱軍から30,000クレジットの大金を受け取れるというのだ。メゾリアムは2人に帝国がエイリアンを迫害しているという実態を教え、くれぐれもそのデータを帝国軍に渡さないようにと注意したのである。
脱出の際、マフタックとカーベは2人のガモーリアンに発見されてしまう。この騒動によって、さらに多くの守衛がビブ・フォチューナと共に現れたが、小柄なカーベは1人で小さな穴を通って脱出することができた。しかし逃げる途中、マフタックが庇ってくれたことに気付いた彼女は再び混乱の中に戻り、盗品を放棄して彼を救い出したのである。
その後、約束通り反乱軍のモン・カラマリと接触した2人は、それぞれ15,000クレジットの金と、グランド・モフ・ターキンの署名の入った旅券を手にすることができた。2人は自分たちの運命を求めて、それぞれアルゾックIII、そしてチャドへと旅立っていったのである。後にマフタックはこうした一連の出来事を、自伝小説「冬の砂」に書き記している。
チャドラ=ファンの子供であるカーベは、故郷チャドの大地震による難民の1人である。大地震とそれによって引き起こされた津波は古代から続いたチャドラ文明を滅ぼし、この惑星を海賊や奴隷商人に明け渡してしまった。彼らは価値あるものすべてを奪い取り、多くのチャドラ=ファンが奴隷として他の星系へ連れて行かれてしまう。しかし、小柄なチャドラ=ファンは肉体労働に不向きであり、実際はきれいずきなのだが、外見から不潔そうに見られ、闇市場でも評判は悪かった。そのため奴隷商人たちは彼らを置き去りにするようになり、カーベも1人でタトゥイーンの雑踏の中に捨てられたのである。
そんな暗い過去を背負っているにも関わらず、いたって陽気で無邪気なカーベはモス・アイズリーでの生活に驚くほど精通している。カーベは種族特有の敏捷性と嗅覚を活かして盗みを働いているが、巨大なタルズの友人マフタックが絶えず外敵から守ってくれるため、街中を自由に駆け回ることができる。実際、彼女は盗みを犯罪ではなくゲームであると思っていた。もしマフタックがいなければ、彼女はとっくにバンサの餌にされていただろう。これといった夢も希望もない2人にとって、カーベの盗んだ金は貴重な生活資金なのである。
カーベのお気に入りの手口は、ジャワに変装して新しくこの街にやってきた人々から存在しない商業ギルドへのサービス税を徴収するという、危険極まりないものである。このためジャワたちは何度も返済を求められ、ときには暴力沙汰になったこともあった。カーベの犯行だと気付いた彼らは怒り狂い、彼女をカークーンの大穴に突き落とそうと思ったこともあるらしい。
チャドラ=ファンは本能的に孤独を嫌うため、カーベもマフタックと一緒にいるときが最高に楽しかった。2人はモス・アイズリーの酒場で時間を過ごすことが多く、彼女はそこでスリの練習などもしているが、とりわけ酒場で一番強いジュリ・ジュースを飲みながらギャンブルを打つのが大好きだった。しかし、幼いカーベはスニフター1杯ですぐに酔いつぶれてしまい、彼女をドッキング・ベイ83の地下通路にある寝床へ連れて行くのはいつもマフタックの役目だった。
そんなある日、2人は危険を承知でジャバ・ザ・ハットのタウンハウスへ盗みに入る決意をする。無数の罠を天性の勘で潜り抜けた彼女は、拷問部屋で偶然にも反乱軍のバリド・メゾリアムと出会った。彼は2人にデータドットを手渡し、これを反乱軍に届ければ30,000クレジットの報酬をもらえるというのである。エイリアンを迫害する帝国への憎しみから依頼を引き受けた2人は、約束通りの大金を手にすることとなり、その後、自分たちの運命を求めてそれぞれの故郷の惑星へと帰っていった。
チャドの大地はほとんどが水没してしまったが、その多くは砂漠や沼地であったため、幸運にも生活に適した土地は比較的多く残されていた。そこでチャドラ=ファンたちは、かつての文明を再建しようと努力している。
悪魔に似たデヴァロニアンのラブリアは、自分をモス・アイズリーで一番の情報ブローカーだと思っている。しかし実際には、街一番の大酒飲みで、最悪のスパイだった。典型的なデヴァロニアン男性である彼は、赤い皮膚、尖った耳、2本の黒い角を持ち、頭髪を含めた体毛は一切生えていない。
かつてデヴァロン軍の冷酷非情な大尉だったラブリアは、カーデュセイマロックと名乗り、部隊の中でも3番目の地位に就いていた。16代に渡る軍人一家の家系で育った彼にとって、この職業は天職だったのだ。彼はデヴァロンで反乱が起こったときも、部下たちと共に帝国軍に協力し、モンテリアン・セラットの戦いでは女子供を含む700人の捕虜の処刑を監視したとされている。このため彼は「モンテリアン・セラットの屠殺者」と呼ばれるようになり、その首には反乱同盟軍からも賞金を懸けられていたのである。
戦争が終わるとカーデュセイマロックは軍籍を退き、逃亡するように故郷を後にした。かねてから音楽に熱狂的な関心を持っていた彼は、出発のときも膨大な音楽コレクションを持ち出し、偉大なアーティストとして知られるマキサ・ジャンドヴァーを求めてタトゥイーンへと向かう。しかし、彼女とついに会うことができず、彼はモス・アイズリーの地下にアパートを借り、この街で暮らすことにしたのだった。そこで彼は素性を隠すため、デヴァロンの言葉で「冷めた食糧」を意味するラブリアに名前を変えると、銀行にエアバルという名義で5,000クレジットの架空口座を設ける。エアバルは彼の新しい名前ラブリアを逆さに綴ったものだった。
ラブリアは自分を情報ブローカーと称するようになったが、偶然耳にしただけの話を確かめもせずに売ってしまうため、その情報はいつも疑わしいものだった。さらに彼はいつも酔っ払っているように見えるが、稀に酔った振りをして情報を集めていることもあり、彼を知る人々はうかつに重要な話ができなかった。一方で新しい住人たちには、彼の恐ろしい姿を見ただけで恐怖し、口を聞くことさえもできなくなる者もいたほどである。
ラブリアが特に重要視していた情報はジャバ・ザ・ハットの組織に関するものであり、彼はよくその情報を仕入れてはスパイのガリンダンに提供していた。しかし、そのほとんどが嘘や役に立たない情報ばかりだったという。
彼はモス・アイズリーの酒場の常連客であり、いつもバーテンダーのウーハーと共に一番乗りをしていた。そんなある日、彼らはフィグリン・ダン率いるモーダル・ノーズの一団が、ジャバ・ザ・ハットの宮殿で演奏を行うためにタトゥイーンへやって来るという話を耳にする。何としてもその演奏を聴きたいと思ったラブリアは、ジャバに気に入られるため、モーリンの賞金稼ぎオブロン・メトロを紹介した。しかし、メトロはすぐにジャバの怒りを買い、ランコアの餌食にされてしまったのである。
挫折感を味わったラブリアは、ウーハーと酒を交わしながら次の計画を思い付いた。ちょうどジャバの最大のライバルとされるウィフィッドのレディ・ヴァラリアンの結婚式が近づいており、その中でマックス・レボ楽団の演奏が予定されていたのだ。ラブリアはヴァラリアンにモーダル・ノーズの演奏を薦め、彼女もその案を大変気に入るが、ジャバの怒りを買うことは明らかだった。ラブリアはメトロの件での罪滅ぼしとして、ジャバにフィグリンがライバルの結婚式に出演する予定であることを伝える。激怒したジャバは結婚式を妨害し、それに怒ったヴァラリアンはフィグリンたちに報酬を払おうとしなかった。結局、モーダル・ノーズはウーハーに雇われることになったのだ。
計画は大成功となり、フィグリンたちはモス・アイズリーの酒場で2年間の契約を交わすことになった。さらに、ラブリアは赤外線視力を使ってフィグリンとのサバックの勝負に大勝し、ドイック・ナッツのフィズを除く、すべての演奏機材を手に入れる。こうして再びフィグリンが勝利するまで、ラブリアは彼らをモス・アイズリーに足止めさせることができたのだった。
エンドアの戦いで帝国軍が敗れる直前には、ラブリアは帝国軍にスパイとして雇ってもらいたいとも考えていた。しかし、ジャバの死と帝国の崩壊によって、彼は2つの大きな希望を失ったのだった。もはや彼は当てにならない情報を集めるよりも、気ままに酒を飲みながら大好きな音楽を聴いている方を好むようになり、その後の人生の大半を酒と共に過ごすことになる。しかし、気楽な生活も長くは続かなかった。ホスの戦いの15年後、モンテリアン・セラットの人々から5,000,000クレジットもの賞金を懸けられていたラブリアは、ついにボバ・フェットによって捕らえられてしまったのである。故郷に強制送還された彼は法に基づいて公開処刑の判決を受け、飢えたクオラの群れの中に投げ込まれたのだった。
冷酷な男として知られるマイオは、3回の血闘で勝利を収めたことがある屈強のアビシンである。後に奴隷商人マラックによって捕らえられたが、彼はマラックの宇宙船がカイナム・デポットで燃料補給している間に特殊な肉体能力を駆使し、なんとか逃走することに成功した。そして自由になったマイオはビスのミュージシャン、ライリン・カーンと出会ったのである。
彼はこのクルー・ホーン・プレイヤーと共にタトゥイーン行きの便を予約し、モス・アイズリーの酒場に通うようになった。彼はそこでブラッブのドーラーと出会い、OM813での仕事を依頼される。マイオはそれに同意し、短期間だがギャラクティック・アウトドア・サバイバル・スクールの講師を務めるようになった。やがて彼は同校で最も優秀な砂漠サバイバルの教官となるのだった。
ダニク・ジェリコは人喰い種族として恐れられているアンザーティである。彼が近づく前にその殺気を感じることができない者は、確実に餌食にされてしまう。アンザート出身の彼らは長身でげっそりと痩せており、頬に巻き付く大きな鼻を持ったヒューマノイドである。彼らはその頬の内側に鋭い吻を隠しており、獲物を捕らえると鼻を伸ばして相手の鼻の穴に吻を突き刺し、脳ミソを吸い取ってしまうのだ。また、アンザーティは一般に寿命がたいへん長いことでも知られており、ジェリコも既に1,000年以上生きている。
子供に聞かせる神話上の怪物と違って、ジェリコはただ血を吸うだけではない。彼は俗に獲物の「スープ」と呼ばれる生命エネルギーを吸い取るのだという。仮に獲物が命を落とさずに済んだとしても、生命エネルギーの大半を吸い取られているため、もはや長生きをすることはできない。彼が同業の賞金稼ぎや殺人者、凶悪犯を好んで選ぶのはこのためである。
ジェリコは長年にわたって賞金稼ぎや殺し屋を営んできたが、多くのアンザーティが無償でこれらの仕事を行うなか、彼だけは金のために働いていた。彼は仕事に対して極めて几帳面であり、法外な仕事料を要求することでも知られている。そのため、彼の最初の雇い主は報酬の高さについて文句を言ったが、その男がスープを飲まれて死んでしまうと、もはや彼に文句を言う者はいなくなったのだという。
ジャバ・ザ・ハットの下で働いていたジェリコは、失敗した殺し屋などをランコアに代わって食べていたこともある。さらに、彼は仕事の合間にも多くの犯罪者や反逆者たちの生命エネルギーに引き寄せられ、たびたびタトゥイーンに戻っていた。そこには常に豪勢な食事が待ち構えているが、彼があまりにも旨そうなスープの匂いに思わず振り向いてしまったのは、モス・アイズリーの酒場でのことだった。2人の酔っ払いが老人と青年に戦いを挑み、老人のライトセイバーで斬られたのである。こんな男はここ100年見たことがなかった。その老人オビ=ワン・ケノービはジェダイ・ナイトであり、輝くような生命のオーラに包まれていた。しかし、ジェリコには彼がジェダイ・マスターであることも、自分の探索から身を守っていることも、そして彼のスープが自分を拒んでいることも分かっていた。しかし、その弟子らしき青年は、すべてをさらけ出していたのである。
ジェリコはパイプを吹かしながら2人がコレリアンとウーキーの2人組と会話しているのを観察していたが、そのときもとても香ばしい匂いが漂っていた。このコレリアンのスープの香りは驚くほど濃厚で、熱く、今まで長年にわたって味わってきたなかでも最高に甘いものだったのだ。ジャバ・ザ・ハットがハン・ソロに莫大な賞金を掛けていることを知っていたジェリコは、彼が酒場を出て行くまで絶えず観察を続けていた。彼はソロをジャバに引き渡そうと計画するが、ジャバはソロの生死を問わないと言っていたため、その前にスープを飲むつもりだったのだ。しかし、残念なことにソロは先の老人と青年を連れてタトゥイーンを脱出してしまったのである。
失敗に機嫌を悪くしたジェリコは、さっそく次の計画を考える。いつかハン・ソロが賞金稼ぎに捕らえられれば、彼はジャバの宮殿に運び込まれてくるだろう。ちょうどレディ・ヴァラリアンとユージーン・トールモント長官の2人からジャバの動向を探って欲しいという依頼を受けていたジェリコは、ジャバの宮殿へと忍び込むのだった。彼はソロが連れてこられるまで宮殿の闇に潜み、ひたすら時を待ち続ける。その間、ジェリコはたびたびジャバの取り巻きたちのスープをつまみ食いし、宮殿内に謎の連続殺人事件による不穏な雰囲気を漂わせたのだった。
しかし、ようやくソロがカーボナイト冷凍から解放されたのもつかの間、彼はルーク・スカイウォーカーらの出現によって絶好の機会を失ってしまう。そこでジェリコは標的をジャバのスープに切り替えるが、ジャバもその直後に殺害され、計画は三度失敗に終わるのだった。極度の欲求不満によって精神的に不安定な状態に陥ったジェリコは、宮殿で見つけた相手を無差別に殺し始め、銀河中の悪党たちを敵に回すことになる。ジェリコのその後の消息は不明だが、賞金稼ぎとして無数の仕事をこなしているという。
ゴウタルのフェルティパン・トレヴァッグは、賞金稼ぎ、帝国軍のボディガード、宇宙船の点検員など、いくつもの職業を経験している。ルーク・スカイウォーカーとオビ=ワン・ケノービがオルデラン行きの船をチャーターしたときは、宇宙港都市モス・アイズリーの総督の下で徴税官として働いていた。この仕事の中で、彼は地元市民や短期滞在者から水道税や宙港使用税など、様々な税金の徴収を考案してきたのだった。
この宙港使用税の徴収を行っていたとき、彼はミーヨム・オニスと名乗る女性と遭遇する。彼女は税金が払えなかったため、旅客船<テリヴァー・レディ>の座席を確保することができず、モス・アイズリーに足止めされていたのだった。トレヴァッグは彼女に強く惹かれるようになった。同時に彼は頭に生えたフォースを感知できる円錐状の突起によってオビ=ワンがモス・アイズリーにいることを察知し、その情報を帝国軍に売り渡すことも計画していたのである。
その日の晩、オニスをベッドに寝かせようとしたトレヴァッグは、彼女がヘネムシィであることに気づいていなかった。ヘネムシィの女性はナイフのような舌で配偶者の内臓を貪り食う習慣があったのだ。そして<ミレニアム・ファルコン>が宇宙港から飛び立っていった翌日、宿でトレヴァッグの惨殺死体が発見されたのだった。
ヘネムシィ出身のミーヨムは、モス・アイズリーの宙港使用税を払えなかったため旅客船<テリヴァー・レディ>に乗船することができなかった。彼女は徴税官のフェルティパン・トレヴァッグに懇願し、やがて彼と恋に落ちてしまう。2人はモス・アイズリーの宿屋で過ちの恋を犯した。そしてオニスはヘネムシィのすべての女性が配偶者に対してそうするように、愛する男の内臓を貪り食ったのである。