ギャンブラー、密輸業者、ペテン師など、何でもこなす日和見主義の悪党、ランド・カルリジアンは、自分では超一流の実業家だと信じている。彼の資金源の多くは謎に包まれているが、ランドは銀河系の暗黒街に精通しつつも、いつも多かれ少なかれ合法的な事業に手を染めており、その唯一の目的は常により多くの富を得ることである。常にコアで流行の高価な衣装に身を包み、自分の境遇、所有物、ルックス、そして女性との交際には不自由したことがない。ランドは野心の塊のような男だが、その野心はときとして彼を成功に導くのだった。
ランドが偉大なギャンブラーとして名声を得るまでには長い年月が費やされている。実際、サバックによる彼の初めての勝負はルールへの不理解から大惨事を招いたのだ。しかし、この事実も今では彼自身によって厳重に隠蔽されている。ランドはこうした怪しげな雰囲気が女性を惑わす最良の方法だということも知っているのだ。
ランドが最初に財産を築いたのは、やはりサバックでの勝利によるものだった。そして2つ目の財産は<ミレニアム・ファルコン>の所有者となり、密輸業者兼船長になったことである。しかし、ランドには宇宙船の操縦経験が全くなかった。ある日、ナー・シャダーを訪れていた彼は、ハン・ソロが賞金稼ぎのボバ・フェットに追われている現場を目撃する。そこでランドは首尾よくソロを助けることに成功し、そのお返しに彼から<ファルコン>の操縦を学んだのである。ランドと<ファルコン>の冒険はこのとき開始されたのだった。
だが不幸にして、ランドの連勝記録はハン・ソロと再会したときに途切れてしまう。ハンはランドが今までに見たことも無いような手でサバックの勝負に勝ち、かねてから目を付けていた<ファルコン>を奪い取ったのである。ランドはすぐさま船を取り戻す計画を立てたが、コレリアンとウーキーの友人はランドが目を覚ます前に姿を消したのだった。
ランドはその後数年間、一度もハンを見なかった。彼は再びギャンブル生活に戻り、ガス状巨星ベスピンに浮かぶ採鉱とギャンブルの都市、クラウド・シティの経営を行っていた。前執政官のレイナーから奪い取ったクラウド・シティは彼の一世一代の戦利品であり、部下のロボットの力を借りつつ、執政官として採鉱事業への挑戦に楽しみを見出していたのだ。加えて、惑星の大気から採集されるティバナ・ガスは莫大な収入を産み、都市には一攫千金を狙う採掘者があふれ、彼らの余暇の楽しみも充実していた。ランドは当初からギャンブル街として有名だったクラウド・シティを瞬く間に個人的な遊戯場に作り変え、サバック・テーブルでの一ヶ月で一年分の都市収入を超える金額を稼いでしまうようになる。さらには副官のロボットの助力で利益の上がる密輸を始め、同時に反乱同盟軍への武器や軍需品の横流しを行っていたのである。
しかし、ランドの楽園もヤヴィンの戦いの数年後に崩壊してしまう。デス・スターを破壊した反乱軍パイロット、ルーク・スカイウォーカーを捜索中のダース・ヴェイダーが、ストームトルーパー小隊と賞金稼ぎのボバ・フェットを引き連れてベスピンに現れたのだ。ヴェイダーのランドに対する要求は単純明快なものだった。ルーク・スカイウォーカーをクラウド・シティにおびき寄せるために囮を用意し、彼を捕らえれば、帝国軍は平和的にこの惑星を立ち去るのだという。ランドに残されたもう1つの選択肢は、彼が必死に築き上げてきたすべてを失うことだった。ランドは仕方なくヴェイダーの要求を受け入れる。
ヴェイダーの計画には生きた囮を必要とし、その対象となるのはハン・ソロ、チューバッカ、そしてレイアという名の魅力的な若い女性だった。ヴェイダーは彼らを囚人とし、ランドの必死の嘆願をよそに、明確な理由も無く情け容赦無い拷問を行った。ヴェイダーに逆らうことはできず、ランドはなすすべもなく友人たちが苦しむ様を見届けるしかなかった。彼が自らの地位と都市、そして自分の楽しみさえも捨て、それらが他人の命に勝るものではないと考えるようになったのはこの直後のことだった。このときからランドは今までの生き方を変え、友人を解放する計画を立て、反乱軍に加わったのである。
ランドの最初の仕事は自分の裏切り行為のために捕らわれたハンの救出だった。彼はタムテル・スクリージュと名乗る衛兵に扮装し、ジャバ・ザ・ハットの宮殿に潜入していた。そしてルークらの協力でハンの救出に成功すると、反乱同盟軍に将軍として迎え入れられ、ハンの<ファルコン>で第2デス・スターの攻撃に参加する。エンドアでシールド発生装置の爆破任務を与えられたハンが作戦に成功すると、ランドと副操縦士のニエン・ナンは<ファルコン>で第2デス・スター内部に侵入し、巨大な中央反応炉を破壊したのである。
銀河内乱が終結し新共和国の時代になると、ランドは再び実業家として様々な合法的事業を開始した。やがて彼はコレリアン星系で発生した危機の際にテンドラ・リーザントと結婚し、ユージャン・ヴォングの侵略が始まった後も新共和国の良き理解者として惜しみない協力を申し出ている。
クラウド・シティ執政官の地位は都市の歴史を通じて幾度となく移り変わったが、執政官補佐の地位はそうではなかった。この雲の中に浮かぶ都市は、都市全体の動きを監視可能な単一のコンピュータ・コアを中心にして建造されている。そのため、執政官はそれぞれのシステムを作動させるために必要となる何十人もの専門家に頼ることなく、個人で様々なシステムを監視することができるのである。
しかし官僚には先端技術に疎い者が多く、都市の洗練されたコンピュータ・システムの操作に悪戦苦闘する時代が何年も続いた。そして、彼らは中央コンピュータと執政官との連絡役となるコンピュータ技師の必要性を唱え始めたのである。その人物はコンピュータと完全にリンクし、なおかつこの都市の執政官補佐も務めなければならない。該当者探しは困難を極めたが、意外なところで見つかることになる。そのときちょうどクラウド・シティで盗みを働き、有罪判決を受けたばかりの若い浮浪者だった。
彼の名はロボットといい、奴隷商人の息子として生まれたが、15歳のときに海賊団に両親を殺され、自分が奴隷となってしまった青年だった。彼はなんとか自力で脱出しクラウド・シティに逃れたが、生き延びるためには盗みをするしかなく、逮捕されたときには金も未来も希望も、一切持ち合わせていなかった。しかし、当時の執政官エレサ・シャレンスは、適切なチャンスさえ与えられれば、この若者は人生を大きく変える可能性を秘めていると考えていた。彼女は、ロボットは長い獄中生活を過ごすのではなく、新しいコンピュータとの連絡役となるサイボーグとしてクラウド・シティで働くべきだと主張した。もちろん、そのためにはロボットにも一連のサイボーグ手術が必要とされ、都市の中央コンピュータと直接通信できる高度な脳増幅サイボーグ器官が後頭部に取り付けられたのである。
ロボットの潜在能力が全開に発揮されるようになったのは、ランド・カルリジアンが執政官の地位に就いたときのことだった。ランドはロボットの特異な能力を、未だかつて誰もなしえなかった方法で利用し、その大部分は違法行為に関するものだった。
ランド・カルリジアンと共に働くようになったロボットは、ランドの素晴らしい機転と資質を見せ付けられていた。だが、ランドにとってロボットはむしろ冷静な存在として感じられていたのである。やがて2人は反乱軍と帝国軍との戦いに巻き込まれるが、反乱軍への助力を薦めたのはロボットの方だった。
<ミレニアム・ファルコン>がクラウド・シティを脱出した後、ロボットがどうなったのかはまったく知られていない。報告によると、彼は都市のコンピュータ担当者としてそのまま残留し、新執政官である帝国軍のトリース大尉の補佐を務めていたという。それが事実なら、同盟軍はその後もクラウド・シティに協力者を持ち続けていたことになり、ロボットは間違いなく都市の動向を監視していたはずである。彼は決して帝国の一員ではないのだ。
ユートリス・ムトックはクラウド・シティの安全を守るウィング・ガードのリーダーである。彼は腐敗や汚職からかけ離れた存在であり、賄賂を一切受け付けない。ムトックはウィング・ガードの名を貶める不名誉な隊員を暴露するため、献身的に働いているのだ。
メリル軍曹は新秩序の末期にクラウド・シティで勤務していたウィング・ガードの1人である。彼はウィング・ガードの中で最も残虐な男として知られており、ユートリス・ムトックからは不倶戴天の敵と名指しされている。なぜなら、彼はムトックの部下を軽蔑し、見下しているのだ。
エディアン軍曹はクラウド・シティの執政官ランド・カルリジアンに忠実なウィング・ガードの一員である。誠実な彼は賄賂を受け取ったり、他の汚職にまみれている役人たちを深く軽蔑している。
ジェロール・ブレンディンはランド・カルリジアンが執政官を務めていた時代のウィング・ガードの一員である。前執政官レイナーの時代からウィング・ガードに在籍していた彼は権力に溺れて腐敗しており、脅迫を用いて平和を守る方法を熟知していた。ブレンディンは容易に買収されるため、クラウド・シティの軽犯罪者リストにも名を連ねている。
リー・フェネッツはクラウド・シティの保守管理部門の専門家であり、都市を円滑に機能させることを職務としている。また、彼はアグノートたちから仕事を通じて尊敬されている数少ない人間の1人でもあった。
キビクはランド・カルリジアンが統治していた時代のクラウド・シティで、採鉱ギルドの上級会計士を務めていた亜人間の女性である。カルリジアンと同様に、彼女も前執政官時代から続くギルドの汚職と奮闘していた。
帝国保安局(ISB)の協力者であるカイラーは、クラウド・シティで働く労働者や一般市民の間にISBの諜報員やアクアリッシュのスパイを潜入させていた。帝国軍がこの都市の鉱山を支配下に置いた暁には、彼女にもISBでの相応な地位が約束されていたのだ。カイラーはそのときを待ち続けていたが、約束が果たされることはなかった。
ウィロー・フードは長年にわたってティバナ・ガス採鉱に従事しているクラウド・シティ市民である。銀河内乱の間、フードの務める企業は同盟軍の理想を支持していたため、彼も上司と共にティバナ・ガスを反乱軍に安値で提供していた。
クラウド・シティ市民のアグロステは、カーボン冷凍室で指揮を執って働くアグノートの労働者である。彼は帝国軍の命令によってハン・ソロをこの装置で冷凍する作業を行っていた。アグロステは帝国軍にも反乱軍にも極めて無関心であり、さらに言えば帝国軍が人間をカーボナイトで固める理由がまるで分からなかった。
120標準歳のアグロステは人間を嫌っている。人間たちは彼とその愛する家族を嫌と言うほど奴隷として使ってきた。彼は愛する妻が官僚たちの私腹を肥やすために死んでいく姿を目の当たりにしている。このような人間の官僚たちが銀河系を支配していることは、彼にとって耐え難い苦痛だったのだ。
しかし、クラウド・シティは別だった。この都市はアグノートがアグノートでいられる銀河系でも数少ない場所の1つだったのだ。採鉱レベルの最深部にはアグルジグの音楽が響き渡り、ロースト・グリーグ・パイの焦げ臭い香りはいつも彼を心地良い気分にさせてくれていた。ここでは彼らの歌や物語、そして映画を再び経験することができ、新しい世代の子供たちは決して奴隷となることを知らずに生まれてくるのだ。
アグロステは新しい家族を手にし、彼らにガス採鉱の手法、重労働の価値、長老たちの偉大さを教えはじめた。アグロステ自身は家計を助けるために金属再精錬装置からカーボン冷凍室まで、いくつかの仕事をこなさなければならなかった。
帝国軍がクラウド・シティに現れたとき、アグノートたちは何も口を挟まなかった。しかし、長老たちはこれは厄介ごとだと語り、アグノートに対する新たなる脅威だと主張した。なかには武器を持って立ち向かうべきだと主張する者もいたが、彼らは家族を持たない性急な若者たちだった。アグロステは我慢することを選んだ。帝国軍の士官はアグロステにカーボン冷凍室の改造を依頼し、改造仕様の記録されたデータパッドを差し出したのだった。
彼は滞りなく改造を行った。アグロステはカーボン冷凍室のことはすべて知り尽くしており、彼のチームは要求どおりに働いた。いずれにしろカーボン冷凍は苦痛を伴うが、これで死ぬほどではなくなった。これは要求通りである。彼は自分の仕事をやったのだ。
老アグノートのグラグナックはクラウド・シティに駐留し、住んでいた場所を占領した帝国軍を憎んでいる。ハン・ソロが捕らえられると、彼は密かに反乱軍を支援し、人員を動きやすくしていた。グラグナックはこうすることによってレジスタンス運動を活発化させ、帝国に復讐してやりたいと考えていたのだ。
トレヴァ・ホームはプラネット・ドリーム社の営業主任と経営企画者を兼任するルートリリアンの女性であり、クラウド・シティにおけるビジネス会計と生産スケジュールの監視も行っている。彼女は市場調査を得意とし、営業活動に真の喜びを感じているのだ。
プラネット・ドリーム社の社員であるスニヴィアンのワイオーケトルは、新秩序の最中、クラウド・シティのオフィスで勤務していた。彼は小惑星を改築して呼吸可能な大気を生成する手法に長けており、こうして造った新しい居住惑星に美的な外観を与えることを使命としていた。