ジャバ・ザ・ハット、本名ジャバ・デシリジク・ティウレは密輸、奴隷売買、殺人など、無数の犯罪行為に手を染め、銀河の暗黒街の頂点に君臨する大悪党である。
ナメクジに似た醜悪なハットは銀河でも最も長寿命な種族の1つであり、推定年齢およそ600歳のジャバはその1トンを超える体重によって、自力で動くことさえままならなくなっている。ハットの起源はアードス星系の惑星ヴァールだと伝えられているが、ジャバが生まれ育ったのはハットの植民惑星ナル・ハッタである。イトーブ星系に属するナル・ハッタはハット語で「輝ける宝石」という意味であり、その衛星の1つ、「密輸業者の月」と呼ばれるナー・シャダーは現在でも銀河系最大の密輸センターとなっている。
ハットの犯罪シンジケートのなかでも特に大きな力を持つデシリジク氏族の一員であるジャバは、まさに生まれながらの悪党だった。彼は氏族の長であり叔父でもあるジリアクが、ベサディ氏族の長アラクの暗殺を巡る抗争でダーガ・ザ・ハットとの決闘に敗れたとき、その後を継いで氏族の長となる。しかし、これもすべてジャバの計画の一環だった。彼はまだ生まれたばかりのジリアクの子供をも殺害し、後の禍の種を排除すると、瞬く間に自分の犯罪帝国を築き上げたのである。彼はかねてから辺境の砂漠の惑星タトゥイーンに居城を構えており、この惑星で最大の都市であるモス・アイズリーでも、警戒厳重なタウンハウスで帝国の高官や重要な取引相手をもてなしていた。
西大砂丘海の最南西に位置するジャバの宮殿はデリン・フレットによって設計されたものだが、初期の建造に携わったのは以前の所有者であるボマーの修道僧たちであり、彼らはよく宮殿の下層回廊や秘密の通路を徘徊している。この宮殿は地上9階に加えて広大な地下フロアも備えられており、下層部は危険な迷宮になっているが、上層部には居住区画と娯楽施設、大食堂などが置かれている。
巣の中の女王アリのように、ジャバは無数の取り巻きたちに囲まれ、毎晩のように宮廷で宴を繰り広げていた。彼はその財力によって銀河中から選りすぐりのミュージシャンやダンサーを招き入れ、演奏や踊りを楽しんでいたのだ。事実、彼の宮殿には部下や衛兵、奴隷、賞金稼ぎ以外にも多くの者がひしめいており、そのほとんどはジャバを楽しませることが宮殿に出入りするための条件になっていたのである。フィグリン・ダン率いるモーダル・ノーズもそうしたグループの1つだったが、タトゥイーンでの最大のライバルと目される女性ウィフィッドのレディ・ヴァラリアンに引き抜かれてしまい、それ以後、彼のひいきのバンドはマックス・レボ楽団になっていた。
ジャバは数人の最も信頼できる部下を側近として選び、重要な役目を割り振っていた。最初の右腕だったナルーン・キューザスは長年にわたって彼に仕えてきた優秀な部下だったが、キューザスはジャバの仕事上の秘密を知りすぎていた。彼が組織の脱退を申し出たとき、ジャバは彼を始末すると、醜いコレリアン海賊のビドロ・クワーヴとトゥイレックのビブ・フォチューナにナンバー2の座を争わせて楽しんだ。しかし、ジャバが大きな信頼を寄せている部下はそれほど多くはなかった。ジャバはエファント・モンの命を救ったことがあり、特別な権限も与えているが、彼は正確にはジャバの部下ではなく、友好的な同盟関係を結んでいる武器商人なのである。ジャバの代理人として賞金稼ぎや密輸業者に指示する役を与えられていた大男のヒーターも、自分では大物だと思っていたらしいが、ジャバにとっては単なる消耗品の1つに過ぎなかった。
失敗した者や気に入らない者はすぐに殺すのがジャバの流儀である。彼の最大の楽しみは囚人をカークーンの大穴に突き落とし、その光景をセール・バージの上で酒宴を開きながら見物することだった。しかし、彼は思いがけないことからもう1つの楽しみを手に入れる。2人の側近ビドロ・クワーヴとビブ・フォチューナがジャバの誕生日の贈り物として持ってきたランコアだ。ジャバはこの怪物を大変気に入り、フォチューナには執事の座を、クワーヴにはランコアの宮殿での最初の餌食にするという栄誉を与えたのだった。
ジャバの最大の収入源はケッセル産のグリッタースティム・スパイスの密輸だった。ケッセルのスパイス鉱山は帝国軍によって厳重に管理されていたが、その役人を務めるライベットのモルース・ドゥールは彼にグリッタースティムの横流しをしていたのである。しかし、ドゥールは帝国当局の機嫌を取るため定期的に密輸業者の密告も行っており、ジャバの積み荷を運んでいたハン・ソロもその1人となってしまう。帝国軍の検問に遭ったソロは大量のスパイスを放棄するしかなく、結果としてジャバに巨額の借金を抱えることになった。ジャバは銀河の内戦に巻き込まれ借金の返済ができなくなったソロの首に100,000クレジットの賞金を懸け、賞金稼ぎたちに捜索させたのだった。
しかし、彼にとっての最大の誤算はソロの友人たちの力を甘く見ていたことである。賞金稼ぎのボバ・フェットがソロを捕らえてから1年後、彼を救出に現れたルーク・スカイウォーカーたちによって、ジャバとその組織は壊滅させられてしまう。ジャバ亡き後、アウター・リムの暗黒街は混沌とした時代に突入し、ビブ・フォチューナ、レディ・ヴァラリアン、ハットのクマクとジェラシなど、次の主導権を巡って動き出している者は数多く存在している。
トゥイレックのウナ氏族に属するビブ・フォチューナは、ジャバ・ザ・ハットの執事をしていた男であり、ジャバの死後、その組織の主導権を巡って争った最も有力な指導者でもある。
黄昏の惑星ライロスに住むトゥイレックたちは、氏族単位で原始的な生活を営んでいる者が多い。彼らは宇宙へ進出する手段を持っていなかったため、故郷を離れたいと思う者もほとんどいなかったのだ。だが、ライルの栽培で事業を起こしていたフォチューナはつまらない生活に嫌気が差し、より大きな野心を抱くようになっていく。企業セクターなどで麻薬として広く使われていたライル・スパイスは、共和国内でもその扱いに細心の注意が払われており、多くの場合、商取引は禁止されていた。つまり、フォチューナはスパイス密輸業者だったのだ。
当然、彼の危険な商売は共和国当局や他の犯罪組織からの反感を招くことになる。やがてそれが原因となって多くの仲間が逮捕、あるいは命を落とすようになると、氏族長たちはフォチューナに死刑を宣告したのだった。しかし、フォチューナは氏族に対する復讐を心に誓い、ライロスから逃れたのである。
ジャバ・ザ・ハットの手下の1人が、ある提案を持ってフォチューナに近づいてきたのはそのすぐ後のことだった。スパイス市場に関心を持っていたジャバは彼にライルの密輸を依頼する。1人だったとき以上に働くようになったフォチューナは良質なライルを次々と輸出し、ジャバの組織がそれを売りさばいていた。無論、ジャバとの取引きには大きな危険が付きまとい、彼の怒りを買うようなことがあれば、即座にサーラックの餌にされてしまう。それでも、莫大な報酬に魅せられたフォチューナは喜んで働いていたのである。
当局による密輸船への取り締まりが強化されたのもこの頃からだった。フォチューナの積み荷も被害を受けるようになり、彼はジャバの怒りを買うことを恐れ始めるようになる。ついに彼はこれ以上密輸を続けることは危険だと判断し、よりジャバに近いところでの仕事を求めるようになった。偶然にもその要求は受け入れられ、彼は異様な早さでジャバの側近の1人として認められる。彼がいつも触手を振って頭を下げたり、ジャバの暴言にも素直にしたがっているのは、それが彼の務めであり、ただやりたいことをしているだけなのだ。
組織の中で幹部として多くの経験をつみ、仕事の上でも確実に頭角を現してきたフォチューナは、急速にその評価を上げていった。彼の有力なライバルはコレリアン海賊のビドロ・クワーヴであり、2人は共に当時のナンバー2だったナルーン・キューザスが失態を演じて消されるのを期待していた。そしてついにキューザスが失脚すると、フォチューナはジャバの前でいままで以上にご機嫌を伺うようになり、クワーヴもほとんど運だけでジャバの信頼を得ていった。ある日、興奮したジャワの一団がクワーヴに砂漠に墜落した宇宙船があるという話を持ち掛けてくる。その貨物室には恐ろしいランコアが潜んでいたが、クワーヴはその怪物を捕らえ、褒美とより大きな信頼を手にしようと企んだ。しかし、近くで一部始終を見ていたずる賢いフォチューナも褒美の半分を横取りしようと企んでおり、ちょうどクワーヴが爆弾の箱でランコアを気絶させたときに姿を現したのである。
3日後、クワーヴとフォチューナは誕生日のプレゼントとしてジャバにランコアを差し出した。とんでもないプレゼントに仰天したジャバは2人に感謝の気持ちを示し、ついにフォチューナは念願だった執事の地位を手に入れる。彼はジャバの宮殿とモス・アイズリーにあるタウンハウスの取り仕切りを任されることになった。しかし、一方のビドロ・クワーヴには悲劇が待ち受けていた。彼はジャバの宮殿での最初のランコアの餌食という名誉を与えられたのである。フォチューナはライバルに自分より大きな褒美が与えられたことを素直に喜んでいた。
その後、故郷ライロスに立ち寄った彼はジャバへの恩返しとして踊り子のウーラを誘拐し、進呈した。ジャバはウーラを大変気に入り、フォチューナはさらなる信頼を得たのである。しかし数日後、ハン・ソロの救出に現れたルーク・スカイウォーカーたちによってジャバが殺されると、狡猾なフォチューナは即座に逃げることを考えていた。時を見計らって小型パトロール艇に乗り込んだ彼は、セール・バージの爆発の前に何とか逃げ延びることに成功したのだった。
その後、フォチューナはジャバの財宝を巡る熾烈な戦いに身を投じることになる。彼は犯罪帝国の亡骸を分断しようとする亡者達と戦いつつ、宮殿に身を潜め、この戦いの勝利者になるかと思われた。しかし、宮殿のかつての住人であるボマーの修道僧たちに取り囲まれたフォチューナは、脳みそを取り出され、クモ型歩行ドロイドに収容されてしまう。彼はその後何年もの間、すべての感覚を奪われた狂気の人生を過ごすことになるが、やがて宮殿の新しい主となった悲運なトゥイレック、フィリス・オランから肉体を奪い取ることに成功したのだった。そして、フォチューナはオランの肉体を意のままに利用し、ジャバの犯罪帝国の再建に乗り出すことになる。
ユビーズの賞金稼ぎブーシはかなり異形な姿をしている。ブーシは種族特有のほっそりとした体つきをしているが、棘の付いたナックルや肩と首の装甲服、奇妙な装置や爆弾の付いた弾薬帯など、無骨なサバイバル服を何枚も身につけて相手を威嚇しているのだ。また、ヘルメットには視覚強化センサーと音声変調装置、呼吸装置が装備されており、タイプIの環境での生存を可能にしている。
多くのユビーズの同胞たちと同様に、ブーシは賞金稼ぎ業界の中でも特に目立った存在である。彼は特定の犯罪組織と恒久的な同盟関係を結ぶことを嫌い、あちこちで仕事を探しつつ、アウター・リムをさまよっている。同じ雇い主と数ヶ月以上仕事を続けることは滅多にないのだ。最も最近契約した仕事は、巨大組織ブラック・サンの代表と思われるエージェントから受けたものだった。ブーシはこの仕事に費やした時間の半分を獲物の追跡に使い、残りの半分を雇い主に関する情報収集に使っていた。なぜなら、この雇い主は常に信用できない人物だったからである。
ブーシは狡猾で頭のいい男だった。彼は獲物が逃げるために弄する策を予測し、敵が取るであろうすべての行動に対して先手を打っていた。彼はそれ以外のことにはほとんど時間を費やさず、あらゆる反撃も獲物を彼に導くための誘惑でしかなかったのである。ブーシは雇い主に対しても同じことを行っていた。彼は雇い主を欺き、騙すこと、もしくは自分が優位に立つことを想定して様々な状況を用意していた。ブーシは見込みのある顧客や賞金首について、汚れた情報から有益な情報まで、知り得ることを可能な限り多く知っておくことを好んだ。そのような情報は自分を欺こうとする者たちを脅迫する際に極めて有効に活用できるからである。
ユビーズはあらゆる種類のテクノロジーに関心を示しており、ブーシもその例外ではない。特に賞金稼ぎである彼は、ユーティリティ・ベルトや弾薬帯に隠せる小さな仕掛けに強い関心を持っていた。なかでも彼が気に入っていた小物は、閃光と煙を放つ手榴弾、コンピュータ爆破プラグ、複雑な爆破タイマー、プラズマ燃焼テープ、そしてサーマル・デトネーターといった爆発物である。かつてしばらくの間、彼はベイリッサという人間の賞金稼ぎと共に働いていたことがあり、2人ともあらゆる爆弾に興味を示していた。だが、両者の関係は急速に悪化し、険悪なうちにコンビは解消されてしまう。それでも、彼らは2人ともほとんど無傷だった。お互いに真剣な争いになれば、どちらにとっても悲劇的な結末となることが十分に分かっていたのである。
ブーシは他人をほとんど信用しないだけでなく、極めて貪欲でもあった。彼は契約時の報酬よりも多額の金を要求することが多く、その口実は獲物の捕獲や殺害に使用する道具が安くないからというものだった。確かにこの説明は部分的には正しいものである。爆弾や高性能な爆破タイマーは闇市場でも入手が難しく、極秘に良質な品物を手に入れるには多額のクレジットが必要となるのだ。しかし、ブーシはそうした装備品に掛かる金額以上のクレジットを要求していた。他の賞金稼ぎの間では、彼が自分の稼ぎを苦労している仲間のユビーズの賞金稼ぎや傭兵たちに送金しているのではないかという噂も囁かれていた。こうした噂は、違法なテクノロジーや非合法武器を使用しているユビーズのエリート傭兵部隊の間でもよく聞かれていたのである。
ブーシの犯した致命的な失敗は、ブラック・サンに対しても余計なクレジットを要求したことだった。彼はその貪欲さからプリンス・シーゾーの怒りを買い、この世界から排除されてしまう。彼はグリによって捕らえられ、彼女の放った頭部への鮮烈な足蹴りによって一瞬にして絶命したのだった。
グリは今後役に立つ可能性を考慮して、ブーシの服と装備品を保管していた。そしてそのときはすぐに訪れる。ブラック・サンとの接触を試みたレイア・オーガナをコルサントへ招く際に、彼女はレイアにブーシの服を与え、賞金稼ぎに変装させたのである。また、レイアはハン・ソロ救出のためジャバ・ザ・ハットの宮殿に潜入するときにも、この服とサーマル・デトネーターを使用したのだった。
サレシャス・クラムはジャバ・ザ・ハットの宮殿に住み着いている道化のようなコワキアン・モンキー=リザードである。クラムはジャバの宮廷の台座に座り、いつもジャバの面会相手の真似をしてはクワックワッと喋りかけてくる。コワキアン・モンキー=リザードが知覚生物であることは間違いないのだが、彼らは何も造れなければ、芸術も科学も文学も何もない。彼らの本能は集団で食べ物をあさることだけであり、自分より大きな知覚生物の前に出ると可愛がられようとなついてくる。
クラムはこれまでにジャバに逆らい、その後も生き続けた唯一の生物である。彼が初めてジャバと出会ったのは、ジャバが重要な取引きのためクエン宇宙ステーションに立ち寄ったときのことだった。厄介な寄生虫に過ぎなかったクラムはジャバの宇宙船に忍び込み、マンティロア社製のネズミ採りから逃げまわって、大はしゃぎしていた。クラムにはどんな状況でも本能的に必ずトラブルを引き起こしてしまう癖があり、このときも誰にも気付かれずにジャバの寝室に隠れていたのだった。
船に戻ったジャバはすぐにクラムを発見した。クラムは部屋中を引っ掻き回し、ジャバのフード・ボールの上に座って彼の緑色の粘土状食料を食べていたのである。激怒したジャバはクラムを一口で飲み込んでしまおうとしたが、素早すぎて捕まえることができなかった。するとクラムは樽木に飛び移り、ボールを大きな耐熱ヘルメットのように被ってジャバをからかい始めたのである。
ちょうどその時、騒ぎに気付いたビブ・フォチューナと彼のライバル、ビドロ・クワーヴが部屋に駆け込んできた。驚いたクラムはボールを投げ捨て、呆気に取られているビドロに緑色の液体を浴びせかける。ビドロは怒り狂ってブラスターを構えたが、緑色の液体はブラスターの中にまで染み込んでおり、彼の放ったものはすべて緑のヘドロとなってフォチューナの顔面に降り注いだ。その光景を見ていたジャバは全身を抱えて大笑いし、クラムをペットとして連れて帰ることにする。彼に与えられた仕事は、ジャバを笑わせることだった。このとき以来、ジャバは部下たちが殺し合いをはじめても、笑うことに夢中で冷静さをほとんど失うようになったのである。サレシャス・クラムはジャバの懐に座るようになり、セール・バージで最期を遂げるまで、宮殿の番人や訪問者たちをからかっていた。
エファント・モンは自分を傭兵だと語っているが、誰に雇われているのかは決して言おうとしない。彼はジャバ・ザ・ハットの宮殿に頻繁に姿を見せるが、決してジャバの部下ではなく、ジャバの顧客の1人として友好的な同盟関係を結んでいるに過ぎない。実際に、彼がなぜそのような特権を得ているのかは様々な憶測を呼んでいる。
エファント・モンは人生の大半を武器商人として過ごし、小さな惑星のゲリラ部隊から反乱同盟軍に至るまで、あらゆる軍事組織に武器を提供していた。彼がどこで品物を集めているのかを知る者はいないが、これらの多くは帝国軍で使われていたものであり、旧型だが非常にしっかりとしたものだった。どうも、帝国軍のかなりの地位にいた人間が、手っ取り早く金を得るために横流ししていたらしい。
シェヴィンは惑星ヴィンソスの広大な平原を駆ける狩猟民族であり、同じ惑星の同じシェヴィンという名をもつヒューマノイドを奴隷化したことで知られている。モンは若い頃に傭兵として数年間働いていたが、やがて武器は使うよりも売る方が安全であり、むしろはるかに多くの金を手に入れることができるという事実に気付くのだった。
モンがジャバと初めてあったときは傭兵を辞めた数年後のことだった。それでも彼は手強い戦士だったが、戦いよりも金儲けを好んでいた。モンにとっては金儲けこそが第一であり、売る品物、相手、時間はどうでもよかったのだ。事実、彼は特別な品物を集めることに関して熟練しており、ジャバもそういった情報を提供することによって必要な流通網を確保していた。
2人の友好関係が顕著になったのは氷の衛星グラッカで帝国軍の武器を調達していたときのことである。2人は部下の裏切りによって帝国軍に捕らえられてしまい、凍死寸前の状態に陥っていた。しかし、ジャバは部下が救出に来るまでの間、自分の身体を犠牲にしてモンをかばい、そのとき以来、エファント・モンはジャバに忠誠を誓うようになったのである。タトゥイーンに戻ってからは、モンはジャバの依頼によって陰謀や暗殺が行われないように監視を続けていた。事実、彼には危険を察知する天性の才能があり、ジャバの最大のライバル、レディ・ヴァラリアンさえも彼を欲しがるほどだった。彼女はジャバの宮殿に6人のスパイを忍ばせていたが、モンのジャバへの忠誠心は一向に変わることがなかった。
チューバッカを引き連れた賞金稼ぎが現れたとき、その正体を見破ったのもモンだった。その後、ルーク・スカイウォーカーたちがハン・ソロの救出にやってきたときも、ジャバの危険を察知した彼は囚人を釈放するようにと進言したのだが、ジャバは彼の言い分を信用していなかった。そして、モンの予感通りジャバは慢心から死を迎えることになるが、モンはセール・バージに乗っていなかった。その後の彼の行方は知られていない。
ハーミ・オードルはタトゥイーンで人生の大半を過ごしたバラグウィンである。彼は所有していた無登録の巨大貨物船を数年前に帝国軍のパトロール隊に撃墜されてしまったが、まだ新しい船を手に入れていない。一般にバラグウィンは無政府主義の種族であり、オードルがジャバ・ザ・ハットや彼を取り巻く悪党たちのところへ身を寄せているのもそのためである。ジャバはオードルの持つ武器に関する知識や修理能力を高く評価しており、彼を専属の兵器製造者として雇ったのだった。
オードルはジャバの衛兵たちが使うすべての武器(ブラスター、散弾投射機、震動武器、スキッフ・キャノンなど)のメンテナンスを任されている。しかし、ジャバの手下にはろくに訓練もされていない乱暴な傭兵たちが多く、彼の熟練された技術を持ってしても、誤使用や整備不足による武器の破損は悩みの種だった。
そんなオードルにもジャバの宮殿にただ一人だけ、どうしても勝てない相手がいた。彼の努力や技能をいつもけなしているスクリリングの銃器密輸業者ポート・スニッキンである。ついに、スニッキンはオードルの武器の1つに細工をし、ジャバのペットの1匹を殺してしまった。オードルはジャバに対して速やかに謝罪し、報酬無しで仕事を続けると申し出ることによって、なんとかランコアの餌にされないよう懇願した。ジャバの怒りはなんとか収まったが、オードルは宮殿の笑い係に成り下がったのである。
ジャバが殺害された戦いの最中、オードルはついにスニッキンへの復讐を果たす。武器を掴んだスニッキンはスカイウォーカーに気を取られていたため、背後からオードルが近づいてくることに気付かなかった。オードルは静かにスニッキンをスタン・ガンで狙い撃ち、気絶させた。スニッキンはセール・バージと同時に吹き飛んでしまったが、オードルはそっと戦闘域から脱出することに成功する。そして戦いが終わると、彼はモス・アイズリーへ行き、ジャバの宇宙艇を1隻盗んでタトゥイーンを去ったのである。彼の現在の居場所は分かっていない。
逞しい体をしたスクリリングの銃器密輸業者ポート・スニッキンは、ジャバ・ザ・ハットの衛兵たちに武器を配るようになって以来、ジャバの部下としてよく知られるようになった。スニッキンはかつて企業セクターで密輸業者や産業スパイとして成功したが、盗みに失敗してタトゥイーンに流れ着いたのだった。彼はモス・アイズリーの酒場で仕事を探していたときにビブ・フォチューナと出会い、帝国の軍需品貯蔵庫のようなものをジャバに差し出せば、大きな褒美が与えられるという提案を受けたのである。
翌日、スニッキンは大量のブラスター・ライフルを積んだリパルサー・トラックでジャバの宮殿に到着した。彼はジャバに側近として迎え入れられ、そこで適度な成功を収める。彼にとってジャバの下で働いていたときの最大の悩みの種はバラグウィンのハーミ・オードルだった。ジャバ曰く、オードルは最高の武器職人だったが、自分こそが最高の職人だと自負するスニッキンは、ハーミの仕事が気に入らず、ブラスター・ライフルの再充電率について彼を酷評していたのである。それ以来、ハーミも彼とは距離を置くようになっていた。
そして、スニッキンはルーク・スカイウォーカーがハン・ソロを救出に来た際、ハーミによってセール・バージ上で気絶させられ、バージの爆破と共に葬られてしまったのである。
その外見からよく「ヤク・フェイス」と呼ばれるセイルト=マレイには謎が多く、彼の生い立ちや過去、その種族を知る者は誰もいない(しかし、彼は自分たちのことを「ヤーコラ」と呼び、実際にそのような名前の外見のよく似た種族がアウター・リムに存在している)。
セイルト=マレイは数年前に宗教的創造物の発掘販売専門の商人としてジャバ・ザ・ハットの取り巻きに加わった。見たところ、彼は宮殿の下層を徘徊するボマーの修道僧たちと親しかったようである。
彼はジャバの機嫌を取りつつ、静かに組織の陰謀へと没頭していった。やがて、セイルト=マレイはジャバの取り巻きたちが継続的に集めた様々な陰謀や計画に関する情報を大量に蓄積させていったのである。彼はしばしばそうした情報をジャバに提供し、報酬を貰っていた。つまり、彼は秘密を暴露する密告者だったのだが、そのことに気づいたジャバの手下は1人もいなかったのである。この事実からも、セイルト=マレイがいかに悪賢く巧妙な男だったかということが分かる。
ジャバの死後、彼の大型コンピュータの記録と預金データが何者かにアクセスされ、隠された大量の預金口座が被害を受けた。これらの盗みはセイルト=マレイの失踪と同時に起こっている。そして、彼の現在の居場所は誰も知らない。
3つ目のエイリアン、リー=イーズは間違いなくジャバ・ザ・ハットの取り巻きの中では、見た目でも気性でも最も嫌な男の1人である。このみすぼらしい悪党は1日の大半をサラスタン・ジンを飲んで過ごしており、醜悪で、下品で、不潔極まりなく、いつもよだれを垂らして酔いつぶれている。彼にはジャバの組織で役に立つような特徴は何もなく、ジャバも見ていて楽しいから宮殿に置いているだけなのだ。
グランは極めて社会的な種族であり、故郷キニエンを離れる者はほとんどいない。その中で、リー=イーズは同族を殺害した犯罪者だった。彼は部族から追放されるが、グランにとって孤独は死よりもつらいことであり、追放者のほとんどは発狂するか、すぐに耐えられなくなって自殺してしまう。しかし、リー=イーズは誰にも知られることなく故郷を後にし、いつの日からか酒に喜びを求めるようになっていた。そして、無神経さ、自己中心的な性格、アルコール中毒の組み合わせによって、彼はとうの昔に正気を失ったのである。
彼がなぜジャバの宮殿に出入りするようになったのかは定かでない。宮殿の他の取り巻きたちも彼には見向きもせず、すぐに暴力を振るうリー=イーズは間違いなく嫌われ者だった。しかし、ジャバとしてはこの狂ったエイリアンを見ているだけで楽しむことができ、他には何の役にも立たないが、あえて生かしていたのである。一方でリー=イーズはいつもバラーダやオータッグを騙しては小銭を巻き上げていたが、エファント・モンだけは目下最大のライバルだった。2人はいつも何かにつけては口論を始め、殴り合いにまで発展したことも一度や二度ではない。ジャバのシェフの1人フレグミンが何者かによって殺害されたときも、彼は真っ先にモンを疑っていた。このようなときでもモンはすぐに嫌気が差すのだが、リー=イーズはいつも熱くなり、最後は決まって自分がランコア・ピットの上にいることに気付いて慌てて尻込みするのだった。
しかし、リー=イーズには重大な秘密が隠されていた。彼は宮殿のジャワたちが番犬として飼っているブーボの世話を好んでいたが、そのブーボこそは帝国軍がジャバ暗殺計画を補助するために宮殿に送り込んだスパイだったのだ。リー=イーズはブーボの外皮に埋め込まれた送信機を使って帝国軍と連絡をとっており、ジャバを暗殺するための爆弾を受け取ることになっていたのである。ジャバの殺害に成功すれば彼は過去の殺人の記録を消去され、故郷へ返してもらえることになっていたのだ。だが、ブーボは酒癖の悪いリー=イーズのことが嫌いだった。ブーボは牧草に包まれた爆弾をリー=イーズの目の前で飲み込んでしまい、結果として帝国軍の計画を未然に防いだのである。激怒するリー=イーズを尻目に、ブーボは大喜びだった。
結局、正気を失っている彼には荷が重過ぎたのだ。その後、リー=イーズは自分の本当の運命に気付く間もなく、セール・バージの爆破と共に消え去ってしまう。