フィグリン・ダンはマヤギル・セクターのコルー星系に属する惑星クラクドアVII出身のビスである。知性が高度に発達したビスは芸術的才能にあふれる人材を多く輩出しているが、フィグリンもその類にもれずミュージシャンとして大成していた。彼は金さえもらえれば誰にでも要求された通りの演奏を聴かせている。
フィグリンは5人のビスを募り、モーダル・ノーズと呼ばれるジィズ・グループを結成した。リーダーである彼は荒々しいクルー・ホーンのリフから「炎のフィグリン」と呼ばれるようになり、同時にギャザン・ストリング・ドラムも担当していた。他のメンバーは、一般にフィズと呼ばれるドレニアン・バシニケル担当のドイック・ナッツ、ファンファー担当のテドン・ダーハイとイカベル・ゴント、ホーン・ベルの付いたバンドフィル担当のナラン・チール、オムニ・ボックス担当のテック・モアだが、ときおり傭兵のライリン・カーンもクルー・ホーンでバック演奏に参加している。
銀河中を渡り歩いてきたフィグリンは多くの惨劇を目の当たりにしてきたが、帝国軍や反乱軍の問題にはまったくの無関心を装っている。彼としては、演奏やサバックの勝負で金さえ稼げればそれで満足だったのだ。フィグリンは偉大なミュージシャンであると同時に偉大なギャンブラーでもある。事実、彼から情報を得ることは容易でない。裕福なパトロンとの姑息な勝負を好む彼は「負けるが勝ち」をモットーとし、相手が負けた金額に応じて情報を提供しているのだ。彼はこうして稼いだ多くの金を、コレリアン・スパイスやグリッタースティム・スパイスの密輸につぎ込んでいる。フィグリンは常に膨大な量のスパイスを隠し持っており、ときおり見せる理不尽さもその影響からくるものであることは疑いようのない事実である。
モーダル・ノーズはジャバ・ザ・ハットの招致を受け、タトゥイーンへやって来た。彼らはジャバに大変気に入られ、多額の報酬で契約を結んだが、常に用心も欠かすことができなかった。ジャバに気に入られることは名誉なことだが、彼らは以前にも同じように気に入られていた人々が悲惨な末路を辿ったことを知っていたのだ。実際、彼らがジャバの逆鱗に触れるのは時間の問題だった。
ビスたちはジャバの最大のライバルと目されるウィフィッドのレディ・ヴァラリアンの結婚式で演奏を披露することになる。当初ヴァラリアンはマックス・レボ楽団の演奏を予定していたが、ラブリアからの強力な推薦を受け、一回限りという条件でモーダル・ノーズを引き抜いたのだ。しかし、実際にはラブリアの推薦よりも、彼らがジャバの専属ミュージシャンだったことが大きいのは間違いない。ラブリアは計画通りジャバに彼らの裏切りを報告し、過去の失態を帳消しにしてもらうが、ジャバのお抱えパイロットだったコドゥ・テラフィンからハットの怒りを聞かされたドイックにとっては、とんだ災難でしかなかった。
彼らは約束の曲を演奏することと引き換えに3,000クレジットの報酬を得ることになっており、その金でタトゥイーンから逃れる計画を立てていた。結婚式の会場にはジャバの手下が大勢潜り込んでいたが、式は意外なほどスムーズに進行する。しかし突然、新郎新婦の口論が始まり、ストームトルーパーの乱入も加わって会場は大混乱と化した。皆が大慌てで逃げ惑うなか、フィグリンとドイックは古くから彼らのファンだったというウーハーの命を助けることになる。モス・アイズリーの酒場でバーテンダーを務めるウーハーは、店のオーナーであるウーキーのチャルマンに談判し、モーダル・ノーズとの契約を持ちかけた。店を活気づけたいというチャルマンの希望もあり、はやくジャバから逃れるための資金が欲しかったフィグリンも、これを承諾するしかなかったのである。
モス・アイズリーの酒場での契約期間は2年だったが、フィグリンはラブリアとのサバックの勝負に大敗し、ドイックのフィズを除くすべての演奏機材を失ってしまう。ラブリアから買い戻さない限り、彼らはタトゥイーンを離れることができなくなってしまったのだ。
その後、彼らはようやく機材を取り戻すと、タトゥイーンを後にし、銀河系に何百万と存在するラウンジ・ハウスを転々としていた。しかし、その間にモーダル・ノーズの名声も廃れる一方となり、彼らは落ちぶれたエンターティナーへと転落していったのである。
ドイック・ナッツはフィグリン・ダン率いるビスのジィズ・バンド、モーダル・ノーズの一員である。フィズを担当する彼は生身の友人との付き合いを苦手とし、ドロイドの友人を好んでいる。フィグリンがサバックで大敗したとき、メンバーの演奏機材がことごとくラブリアに奪われたが、ドイックのフィズは無事だった。
かつて帝国軍の偵察員だったテドン・ダーハイはフィグリン・ダン率いるビスのジィズ・バンド、モーダル・ノーズの一員となり、ファンファーを担当している。また、彼はインターギャラクティック・ミュージシャン連合の会員でもある。
イカベル・ゴントはフィグリン・ダン率いるビスのジィズ・バンド、モーダル・ノーズの一員であり、ファンファーを担当している。ゴントの一番のお気に入りは、彼のソロがメインとなる「アクアナの涙」である。
ナラン・チールはフィグリン・ダン率いるビスのジィズ・バンド、モーダル・ノーズの一員であり、バンドフィルを担当している。彼は演奏を楽しんでいるが、故郷クラクドアVIIでの快適な暮らしや、泡の浮かぶピンク色の沼を思い出し、ホームシックに罹っている。
テック・モアはフィグリン・ダン率いるビスのジィズ・バンド、モーダル・ノーズの一員である。彼の担当はオムニ・ボックスで音響を強化することだが、演奏中はいつも酔っ払っている。
アビシンのマイオの友人であるライリン・カーンは普段は傭兵をしているが、モーダル・ノーズのバック演奏でクルー・ホーンを奏でることもある。彼はフィグリンの無謀なギャンブルによって演奏機材を失わずに済んだわずかなメンバーの1人だった。