若きコレリアンのブリア・サレンは、邪悪な銀河帝国による圧制のなか、自由を手にするべく命賭けで戦い抜いた女性戦士である。反乱の夜明けに無残にも砕け散った彼女とその同志たちの意思は、後の反乱軍の歴史にも大きな影響を残している。一介の兵士に過ぎなかったブリアの名が銀河内乱の表舞台に登場することはありえない。だが、彼女の存在はハン・ソロの心の中に深く刻まれ、決して消えることがないのだ。
レン・サレンとセラ・サレンの娘として生まれたブリアは、コレリアの裕福な家庭で幸せな少女時代を過ごしていた。彼女は初等大学で考古学を選考し、ジェダイ・ナイト道に魅了される。そしてクローン大戦についてありとあらゆることを研究していた。しかし、17歳のとき、ブリアはふと自分の人生に何かが欠けていることに気づくのだった。彼女はコルサントへ進学する予定だったが、学部での卒業研究を終えた直後に宝石を売り払い、その資金で偉大なる主を礼拝すべく、イリーシアの宗教植民地へと旅立ったのである。
イリーシアに到着したブリアは、トランダ・ティルの司祭たちが巻き起こす「歓喜」の奇跡に深く熱中するようになる。彼女は悟りのより高い地位に到達することを望み、司祭たちに命じられるまま、盲目的にスパイス加工工場での労働に励むのだった。そして1年後、若きハン・ソロが司祭の雇われパイロットとしてこの惑星にやってくる。工場を見学していたハンはブリアを一目でコレリアンだと見抜き、天涯孤独の身だった彼は、初めて出会った同郷の女性に心を惹かれるのだった。やがて2人は親交を深めていくが、同時にブリアの不安も増していく。ブリアはトランダ・ティル教の献身的な信者であり、彼女にとっては「歓喜」こそがすべてだった。ハンとの恋愛感情は信仰の妨げでしかなかったのである。
一方で、ハンは次第にイリーシアに隠された陰謀を知るようになる。この惑星は表向きには巡礼者の集まる宗教惑星だが、その実態はハットのベサディ氏族が取り仕切る効率的なスパイス加工センターおよび奴隷供給センターだったのだ。「歓喜」の奇跡はトランダ・ティルがヒューマノイド種族に対して持つ生理機能でしかなく、集められた巡礼者たちは低コストでグリッタースティム・スパイスの加工を行わされていたのである。やがて巡礼者たちはスパイス中毒によって廃人と化し、奴隷として帝国へ売り払われるか、あるいは死んでいく運命にあるのだ。帝国の奴隷制を嫌悪するハンはベサディ氏族とトランダ・ティルに激しい怒りを抱く。だがブリアを悲惨な運命から助け出すため、今はその感情をひた隠しにするのだった。
ある日、ハンはブリアの考古学への情熱を知り、この発見を最高位司祭テロエンザに報告する。テロエンザには骨董品収集の趣味があり、無数に集めた財宝のカタログ作成を行ってくれる助手を探していたのだ。ハンとしては愛するブリアを危険なスパイス工場から遠ざけることができ、彼女はテロエンザの近くで働くという最高の幸せを手にすることができた。こうして次第にブリアもハンに心を許すようになっていく。そして、ハンはついにイリーシアに隠された真実を彼女に告げるのだった。だが、彼女はハンが自分を説得するために嘘をついているのだと考えていた。そこでハンはブリアにグリッタースティムを服用させ、その読心作用によって「歓喜」を起こしている司祭たちが心の中で何を考えているかを覗かせるのだった。ブリアはトランダ・ティルたちの本心を知り、ハンが正しかったことを認める。そして2人はこの偽りの聖地から脱出したのだった。
ブリアとハンはトゴーリアで行われたマーグとムロヴの結婚式に出席し、その後コレリアにあるブリアの実家へと向う。そこで、ハンはかつて海賊ギャリス・シュライクの下で働き、スウープ・レースに出場していたときのことを思い出すのだった。ブリアの兄や元婚約者もかつてのハンの勇姿を覚えていた。ハンの正体が知られたことで、2人はコレリアを離れざるを得なくなる。だが、ブリアの父レンは彼らに惜しみない協力を提供してくれるのだった。
彼らは首都惑星コルサントへと渡り、そこでトランダ・ティルとハットたちがイリーシアを脱出した2人を捕らえようとしていることを知る。また、そのころのブリアは「歓喜」からの感情的な分離と、自分がハンのキャリアへの妨げになるのではないかという重圧に襲われていた。やがて彼女はハンの元を離れ、独自の道を歩む決意をする。その後、ブリアはコレリアンの反乱グループの一員ラナー・マローと出会い、ハットとトランダ・ティルに対する撲滅運動を開始したのである。
彼女は4年間にわたってコレリアおよびその近郊に留まり、地下のレジスタンス組織で活動を続けていた。その後一旦姿を消し、デヴァロンに現れたときは、仕事を探していたハンとも再接近している。ブリアは帝国軍のトレファレン提督の助手や、モフ・サーンシルドの愛人として振る舞い、帝国軍の情報を反乱軍に提供していたのである。しかし、その一方で彼女の首にはベサディの長アラク・ザ・ハットから50,000クレジットの賞金が賭けられていた。ブリアは賞金稼ぎから逃げ続け、ついに同盟軍へと加わる。彼女はそこで迅速に階級を上り詰めて行くのだった。
そしてついにハンと正式に再開したブリアは、コレリアの反乱軍部隊、レッド・ハンド中隊の指導者となっていた。彼女の中隊はデシリジクのハットや、ハンたち密輸業者の支援を受け、イリーシアのベサディの事業を壊滅させる作戦を展開する。この作戦は成功し、彼女は今後の反乱軍への重要な資金となる骨董品やスパイス、クレジットを手にしたのだった。しかし、ランド・カルリジアンをはじめとするハンの仲間たちは不満を爆発させていた。彼らは戦利品の半分を自分たちの物にできると考えていたのだ。彼らは不満の矛先をハンに向け、ハンは仲間からの信用をすべて失ったのである。ブリアは一言ハンに詫びを残し、再び彼の元を去っていった。これは2人が共有する最後の時間となるのだった。
その後、彼女は同盟軍からトプラワのレジスタンス組織を支援する任務を与えられた。反乱軍はそこで初代デス・スターの設計図を受信し、レイア・オーガナ姫に送信していたのである。帝国軍は設計図を奪回するためトプラワに侵攻し、想像を絶する火力によって猛攻撃を開始した。程なくしてレッド・ハンド中隊は壊滅状態となり、抵抗勢力も制圧されてしまう。そしてブリアもまた、捕虜となる前に自殺用カプセルを飲み込んだのである。
数日後、ジャバに多大な借金を背負い、タトゥイーンで途方に暮れていたハンの前に、賞金稼ぎのボバ・フェットが現れた。しかし、彼はハンを追ってきたのではなかった。フェットはブリアとの約束を果たすため、彼女の死をハンに伝えにきたのである。やがてハンは悲しみを胸に秘め、モス・アイズリーの酒場で出会った謎の老人と青年をオルデランへ運ぶ仕事に取り掛かるのだった。
醜悪なエイリアン、トランダ・ティルのテロエンザは、ザヴァル・ザ・ハットに雇われ、宗教惑星イリーシアで最高位司祭を演じていた詐欺師である。ハットの近縁種とされるトランダ・ティルの男性は、フェロモンを発することによって多くのヒューマノイド種族に強い精神的衝撃を与えることができるのだ。ハットのベサディ・カジディクはトランダ・ティルの持つこの特性を利用し、イリーシアに効率的な犯罪事業を展開していたのである。トランダ・ティルの宣教師たちは銀河系の各地で「歓喜」の奇跡を起こし、多くの巡礼者を募っていた。巡礼者たちはイリーシアに送られ、スパイス工場で働きながら奇跡の儀式だけを楽しみに生活することになる。ハットはこうして加工されたスパイスを闇市場で売買し、さらにはスパイス中毒で自我を失った巡礼者たちを奴隷として帝国や他の犯罪組織に売り払うことで莫大な利益を上げていたのである。テロエンザはまさにこうしたスパイス兼奴隷事業における現場責任者だったのだ。
テロエンザは銀河中の古美術品に大きな関心を持っていた。彼はイリーシアにある贅沢なオフィスに膨大な数におよぶ素晴らしい骨董品のコレクションを所有しており、さらに収入をつぎ込むことによって、その数は次々と増えている。当然これらの美術品には莫大な資産価値があり、彼のオフィスは常に厳重な警備が行き届いているのだった。
また、銀河系各地にイリーシアの専属パイロット募集の広告を出していたのもテロエンザである。イリーシアは熱帯性の乱気流が多発するためパイロットの消費が激しく、このときも巡礼者の他の惑星への運搬や搬入、ハットへのスパイスの輸送などを行うパイロットが必要だったのだ。彼は応募してきたヴィク・ドレイゴと名乗る青年を採用する(実はこの男の正体は若き日のハン・ソロだった)。ハンは天性の宇宙船操縦テクニックでいくつかの英雄的活躍を披露し、トランダ・ティルの司祭やハットたちから大きな信用を勝ち取っていった。だが、やがてハンはイリーシアに隠された秘密、すなわちスパイス加工事業と奴隷売買に関する実態を知ることになる。彼はハットの陰謀に嫌悪を抱き、イリーシアからの逃亡を計画するようになるのだった。
ハンはスパイス工場で知りあったブリア・サレンが考古学に関心を持っていることを知ると、彼女をテロエンザの骨董品整理係に推薦する。そしてハンは「歓喜」に取り付かれたブリアにイリーシアの真実を暴露し、ついに脱走計画を開始したのである。2人は主要なスパイス加工工場を破壊し、この偽りの聖地からの脱出に成功する。そのときの小規模な戦いの中で、彼らは黒幕のザヴァルを殺害し、テロエンザの骨董品の多くを持ち出すことに成功したのだった。これに激怒したテロエンザはドレイゴ(ハン)とブリアの首に多額の懸賞金を掛けるが、2人は全く捕まらなかった。そればかりかイリーシアの痛手によって大幅な減益を強いられたベサディの長アラクやその息子ダーガは、トランダ・ティルたちへの弾圧を強めていく。こうしてテロエンザは不満の矛先をベザディ氏族のハットたちへと向けていくのだった。
アラクとダーガはザヴァルの後継としてキビクをイリーシアの監視役に置く。一方で、ベサディと激しい対立を続けるデシリジク・カジディクのジリアクとジャバは、テロエンザを味方に引き込み、アラクの暗殺を謀るのだった。テロエンザはアラクに好物のナラ=ツリー・フロッグを届けており、ジリアクはその中に中毒性のある謎の物質を混入させる。そしてあるタイミングで混入を打ち切り、アラクに禁断症状を起こさせて殺害しようというのだ。計画は成功し、アラクはダーガの見守る前で謎の死を遂げた。そしてテロエンザはその巨大な角でキビクをも殺害する。ダーガは父の死がデシリジクの陰謀であると確信し、コルサントの医師団やブラック・サンの力を借りて証拠探しに全力を挙げるのだった。
ついにジリアクとテロエンザの交信内容からアラクの死の真相を突き止めたダーガは、ボバ・フェットにテロエンザへの報復を依頼する。同時に彼はジリアクに決闘を挑み、デシリジクの長を抹殺するのだった。やがてジャバ率いるデシリジクの支援を受けた反乱軍がイリーシアへの総攻撃を開始する。その中にはハン・ソロとブリア・サレンも加わっており、テロエンザは戦いの終盤に2人の仇敵と対面した。ハンとブリアは追い詰められるが、間一髪のところをボバ・フェットに助けられる。フェットはダーガの依頼どおり、テロエンザを仕留めたのである。後に彼の角は、死の証拠としてダーガのオフィスに届けられるのだった。
アラク・ベサディ・アオラ(通称、偉大なアラク)は、ハットのベサディ氏族の犯罪王にして、カジディクの長である。イリーシアに巡礼者を勧誘し、トランダ・ティルの歓喜に取り付かれた人々にスパイス精錬作業を行わせるという計画を立案したのは、このアラクだった。それまでの経済的努力と同様に、アラクはこの事業でも素晴らしい成功を収め、ついにはナル・ハッタで最も裕福なハットの1人、そして銀河系全体でも最も富める人物の1人となったのだった。
アラクはナー・シャダーに酒場を所有しており、その主要な常連客の中には、元ジェダイ・ナイトのクインラン・ヴォスも含まれていた。そして、アラクは最高の顧客を厳重に保護しており、この酒場で外界人を見かけることは極めて稀だった。たとえば、ヴォスを連れ戻すためにエージェン・コーラーが現れたときも、ハットは一時的な乱闘の後、このジェダイ・マスターを無理矢理立ち去らせている。アラクはわざとふざけた振る舞いをし、愛想の良い態度を見せようと努めていたのだ。
アラクの富と権力によって、イリーシアの事業はジリアク・デシリジク・ティオン、ジャバ・デシリジク・ティウレの嫉妬の的となった。事実、水面下では氏族間抗争がエスカレートしていたとき、イリーシアの事業こそがその火種となっていたのである。両氏族間では海賊行為が日常的に行われるようになり、やがて対立は致命的なものとなる。そして、ナル・ハッタで開かれたハット大評議会で、ジャバはベサディに対し、イリーシアからの富を蓄えるだけでなく、ナー・シャダーの戦いにおいて勝利を得るための賄賂に使うべきだと訴えた。ベサディは面子を汚され、デシリジクが優位に立ったのである。
このとき、アラクはイリーシアから入手していたナラ=ツリー・フロッグの中毒者となっていた。彼の甥、キビクがその好物を勧めたのである。しかし、アラクは(そしておそらくはキビクも)、イリーシアで働くトランダ・ティルの最高位司祭テロエンザが、アラク抹殺のためにジリアクと取引していることを知らなかった。テロエンザはナラ=ツリー・フロッグを通じた入念な方法でアラクに遅効性の毒を摂取させており、その後、毒の混入を止めることで、アラクに致命的な脳内出血を起こさせ、絶命させたのである。
アラクの息子ダーガ・ベサディ・タイは、父の急死に絶望し、即座に暗殺を疑った。彼はブラック・サンの協力によってベサディの長としての地位を固めると、アラクの遺体をコルサントへ送り、最高の帝国法医学者たちに父の死因を調査させる。その過程でもダーガはブラック・サンとの関係を強め、ついにテロエンザがアラクを裏切ったという事実を突き止めたのだった。そして、ダーガは生前アラクが何度も反対していたにも関わらず、プリンス・シーゾーと契約を交わし、ブラック・サンの影響下に加わることを決断する。そして、ダーガの主導のもと、ベサディはこれまでと大きく異なる組織へと発展していった。やがて、ジャバの死から10年後、ダーガは大きな力を手にすることになる。
全身を漆黒の毛皮に覆われたマーグは、3メートルの身長を誇る恐ろしい姿をしたトゴーリアンである。彼は故郷トゴーリアで恋人のムロヴと婚約していたが、ムロヴは家庭で落ち着く前に銀河系を見て回りたいという願望を抱いていた。そして彼女はついに故郷を飛び立ち、マーグもその後を追っていったのである。
しかし、マーグはイリーシアで彼女を見失ってしまう。彼は仕方なくこの巡礼者の集まる宗教惑星に居残り、ムロヴを探しながら最高位司祭テロエンザのボディガードとして働くのだった。そしてヴィク・ドレイゴという偽名を使ったハン・ソロがトランダ・ティルたちの専属パイロットとしてこの聖地に就職してくると、マーグはハンのボディガードを命じられたのである。
トゴーリアンの外観にハンも始めは戸惑っていたが、2人は次第に打ち解けていき、やがてはお互いを信用し合うようになる。しかし、ハンはテロエンザの宗教に隠された恐ろしい事実を発見し、イリーシアからの脱出を計画するのだった。マーグはこれを司祭たちに対する攻撃であると誤解し、テロエンザとの誓約に従ってハンを捕らえようとする。だが、ハンはムロヴがコロニー2で囚人になっているという情報を素早く伝え、マーグも彼が真実を告げていることに気づくのだった。
ハンとブリア・サレン、そして2人のトゴーリアンは、イリーシアから脱出するための巧妙な作戦を展開する。作戦の途中でマーグは脇にブラスターを被弾するが、被害はそれだけに留まり、全員無事にこの惑星からの脱出に成功したのだった。そしてトゴーリアに到着したマーグは傷もすぐに回復し、ついにムロヴと結婚したのである。
それから数年後、マーグとムロヴは男の子と女の子を1人ずつ授かっていた。そこへハンとブリアが再び訪れ、イリーシアを攻撃するための兵士たちを募集する。マーグとムロヴはこれに同意して反乱軍に加わり、イリーシアの戦いでの勝利に貢献するのだった。