メーカーや型式を問わず、すべてのユーティリティ・ドロイドはこの数千年の間、銀河系で最もありふれた存在だった。この便利な小型ドロイドは、汎用性に信頼性の高いプログラムと入手の容易さが組み合わさり、簡単な管理作業から複雑な機械修理や保守作業まで、あらゆる分野で人気を博すようになったのだ。
そして銀河内乱のおよそ4,000年前、市場に流通していた主要なユーティリティ・ドロイドの1つがT3シリーズである。T3ドロイドは多くの標準型モデルと比べると高価だが、最新式の構成の回路とプログラムが組み込まれており、さまざまなカスタム・アップグレードにも容易に対応可能だった。
タリスで組み立てられたT3-M4は、この高級シリーズのなかでも新世代にあたる、初期型プロトタイプだった。タリスのドロイド商人、ジャニス・ノールは、このドロイドを個人向けの保安ユニットとして改修し、匿名の顧客、デイヴィック・キャングに売却した。キャングはタリスを取り仕切る犯罪組織エクスチェンジのボスだったのだ。
T3-M4は標準機能における装備品一式に加え、軽装甲プレートと、アップグレード可能な武器類を装備しており、そのプログラムも敵を自発的に攻撃できるように調整されていた。このドロイドは本来のコンピュータ・スライスおよび暗号解読能力に、恐ろしい攻撃能力を併せ持っており、そのすべてを魅力的で無害な筐体の中に隠しているのだ。さらに、T3-M4はドロイド特有の情報密度の高いさえずり声のような機械言語で会話を行っていた。
タリスで働くマンダロリアンの傭兵、カンデラス・オードは、キャングの依頼でこのドロイドを運んでいるところだったが、彼は密かに犯罪王を騙し、T3を自分のものとしていた。その代わりとして、オードは他人を使いに送り、代替となるドロイドを購入したのである。そして、彼はT3-M4を使ってタリスのコンピュータ・ネットワークに侵入し、この封鎖された惑星から脱出するために必要となるアクセス・コードを手に入れたのだった。
その後、T3-M4はカース・オナシ、バスティラ・シャン、他の共和国の英雄たちの仲間に加わり、スター・フォージの危機を迎えることになる。
自意識を持った殺人マシン、HK-47は通常の戦闘ドロイドをはるかに凌駕する存在である。このドロイドは昆虫のような頭部と銅色のプレートをもったヒューマノイド型ドロイドであり、その外観は追われる者に激しい恐怖心を抱かせたのだった。ヤヴィンの戦いのおよそ4,000年前に製造された彼には、極めて強力な武器からなる破壊的な装備一式と、暗殺のターゲットに対する無慈悲で一途な執念、そしてあらゆる有機生命体を軽視する初期プログラムが与えられていた。事実、このハンター=キラー・モデルのドロイドは、銀河系でもっとも危険な暗殺ドロイドの1体だったのだ。
だがそれにも関わらず、HK-47はプロトコル・ドロイドでもあった。暗殺ドロイドとプロトコル・ドロイドの個性が共存することによる不調和には、HK-47自身でさえ気づいていなかったのだ。不幸にして彼の記憶回路は過去のある時点で消去されており、独立した電源を持つバックアップ用メモリー・コアに記憶の断片が残されているだけだった。そのため、彼は自分のこれまでの歴史をつなぎ合わせることができずにいたのである。彼が知っていることといえば、自分が「ミートバッグ」に向けてブラスター発砲したがっているという事実だけであり、自分がなぜそうしたいのか、そしてなぜ自分にそのための装備が与えられているのかを、必ずしも正確には理解していなかった。もちろん、彼が有機生命体を「ミートバッグ」として認識するようになった理由も謎のままであり、同様に、大喜びで暴力を振りまくようになった理由も不明である。
その代わりとして、HK-47はあるとき自分がアンカーヘッドにあるドロイド・ショップに陳列されていることに気がついた。彼はユカ・ラーカと名乗るイソーリアンの商品リストに名を連ねていたのだ。HKモデルのプロトコル・ドロイドは、当時ライバル企業の上層部を排除するべく、ザーカ社によって開発されたものだと噂されており、1人の標的を殺害するために、ビル全体を瓦礫と化してしまうこともあった。このような理不尽な大虐殺に、このドロイドのかつての所有者の恐ろしい目的に至る傾向が組み合わさり、多くの文明的な惑星であらゆるHKモデル暗殺ドロイドが、明確に使用禁止とされたのだった。
しかし、HK-47には更なる秘密があった。彼はシスの暗黒卿ダース・レヴァンに仕えていたのである。レヴァンはHK-47に、タトゥイーンのサンド・ピープルが使う難解な言葉を流暢に話せるようなプログラムを与えた。タトゥイーンでレヴァンによる古代のスター・フォージのマップの捜索を手助けしたのもHK-47である。後にレヴァンは情報の漏洩を防ぐため、ドロイドの記憶からこの出来事に関する部分を削除している。だが皮肉なことに、その後、シス卿の記憶も同じように失われてしまうのだった。
だが再起動後、HK-47は再びレヴァンを助けることになる。このドロイドには強い忠誠心が備わっており、たとえレヴァンが彼の内部に下手な改造を加え、隠された記憶や能力を解放したがっていたのだとしても、HK-47は主人の教えにただ忠実に従っているだけだったのだ。記憶がすべて元通りになっても、HK-47は完璧な忠誠を示すはずであり、このことは主人にとって都合が良い限り、両者の関係が安泰であることを意味しているのである。
タッグ工業社の秘密の部署で造られたL8-L9は、共和国のクローン・トルーパーには厳しすぎる環境でも歩兵として戦えるように設計された、新型バトル・ドロイドのプロトタイプである。この見捨てられた計画は若き実業家オーマン・タッグの創意によるものだった。彼は素晴らしい技術者としてパルパティーン議長に取り入ろうと画策していたのだ。そのため彼はこの自動化トルーパー計画の実験を指揮し、これらを極端な条件下で密かにテストしようと計画する。だが、タッグはこの計画をいくつかの理由から秘密にしていた。ナブーの戦いにおける失敗から、実用レベルにおけるバトル・ドロイドの発展は制限されたままだったのだ。そこでタッグ家の連絡員はラタータックを候補地に挙げ、タッグはそこでL8-L9をテストするよう命じたのだった。
L8-L9は高度なサーボモータと平衡センターを持つヒューマノイド型ドロイドであり、この時代の一般的なバトル・ドロイドと比べて素早さが増している。腕にはプラズマ・キャノンと火炎放射器が組み込まれており、圧倒的な火力を放出することが可能である。
しかし、L8-L9はアサージ・ヴェントレスによって破壊され、失敗作であることが示された。だが、タッグはそれでもアイデアを放棄せず、帝国の台頭後にはストームトルーパーたちへの補強策として、Z-X3計画を打ち出している。
ヴァッフィ・ラは彼の「種族」本来の創造者に似せて造られた、知覚を持つ生命体と高度なドロイド・テクノロジーの奇妙な融合体である。彼は銀河系の未知の部分を探索し、他の文明について学ぶという目的のため、ザ・ワンとして知られる星間生命体によって創造されたのだった。
身長1メートルほどのヴァッフィ・ラは、5本の長いクローム製の触手を持つヒトデに似たドロイドである。メイン・ボディは5角形をしており、磨き上げられたクロームで造られていた。ボディ部の中央には強力な多周波光受像器が搭載されており、紫外線から赤外線まですべての波長の光を見ることが可能である。また、ボディの下部には他の一連のセンサーと、小型音声合成装置も隠されていた。
ヴァッフィの5本の触手は先端に行くほど細くなっており、それぞれの先端部には小さな光学センサーを持つ手のひらがあった。そして、手からはさらに5本ずつの指が生えており、この微細な糸状の指によって、ヴァッフィは極めて小さな物体を掴むことができたのだ。また、彼は触手に熱を導き、5本すべてを切り離して、それぞれを遠隔操作することもできた。これを可能としているのは、このドロイドのシステム全体を巡回する血液に似た高密度の液体層である。ヴァッフィはこの液体を潤滑な状態に保ち、外殻に穴が開いたときには凝固させて塞ぐこともできた。さらに、彼は自分自身を修理することもできたのである。
ヴァッフィ・ラの名前は、実際には彼のドロイド部分の原型を設計した絶滅種族の言語における番号であり、彼自身は省略して「ヴァッフィ」と呼ばれることを嫌悪していた。
ヴァッフィ・ラの創造主、ザ・ワンの正体は、銀河系の端から端まで飛ぶことができる宇宙船規模の大きさを持ったドロイド種族の一員である。彼らはヒトデ型種族によって製造されたが、創造主たちは惑星の太陽が超新星となったときに絶滅している。しかし、彼らのドロイドたちは「生き延び」、ついには完全な意識を手に入れたのだった。ヴァッフィの種族の他のメンバーの1人こそがザ・ワンであり、他の多くのメンバーは全体としてザ・レストとしてのみ知られている。
初期のころ、ヴァッフィ・ラはツンドの魔術師、そしてセントラリティのスクリヴィニアである変幻自在のクローク、ロカー・ゲプタに捕らえられ、再プログラムされた。その後、ロカー・ゲプタはヴァッフィを自分のエージェントだったオットデファのオスノー・ウェットに与えたのである。
かつて、レナタシアン星系(グリズモルトからの古代入植者が設立した、失われた人間の植民地)の再発見に続く銀河帝国の創立直後に、ウェットはレナタシアンの信用を勝ち取り、彼らを征服軍の容易な標的とするべく、帝国とセントラリティによって雇われた。ドロイドのヴァッフィ・ラに有機体の外装を被せた彼は、ヴァッフィの助手を装い、レナタシアンへの歓迎を熱望する銀河市民の代表だと自己紹介したのだった。
ヴァッフィ・ラとウェットは惑星中を旅し、レナタシアンによる統一惑星政府の樹立を支援した。そして700日後、ウェットはすべてのデータを送信し、帝国軍とセントラリティ軍による侵略を開始する。その後の大虐殺によって、ヴァッフィ・ラは「レナタシアの虐殺者」と呼ばれるようになった。レナタシアンたちは1人として彼がドロイドであることを知らず、ウェットが真の虐殺者であることも知らなかったのだ。
命の危険を感じた臆病なウェットは、慌てて外見を変化させた。彼は体重を40キロ落とし、両手足に4センチの骨を継ぎ足し(これでいくらかギャングめいた風貌になった)、さらに背骨を1つ追加する。また、ヘアスタイルも変え、心配症から髪色も白髪へと変化した。そして、ウェットはラファ星系のラファIVにヴァッフィを隠したのである。
その後、ウェットはオセオン2795を訪れていたランド・カルリジアンとサバックを行い、ランドがヴァッフィを勝ち取るが、それを受け取るにはラファIVへ旅する必要があった。しかし不運にも、カルリジアンは出発する前にダッテス・マー総督に逮捕され、シャルーのマインドハープを捜索するロカー・ゲプタの手伝いを強いられることになる。次元変換キーを預かったランドは、ラファ星系で最大のシャルーのピラミッドが存在するラファVから捜索を開始した。だが、ランドは突如として数人のトーカに襲われ、クリスタライン・ライフツリーに縛られてしまう。彼らはランドを夜間に凍死させようとしたのだ。
しかし、ランドは機知に富んでいた。ライフツリーは彼から機転の利いた思考を奪おうとしたが、彼は脱出に成功する。しかし、ランドは足が軽い凍傷にかかり、<ミレニアム・ファルコン>にある携帯用ゲル=バスで簡易バクタ治療を行わなければならなかった。その後、カルリジアンとヴァッフィ・ラは、最大のピラミッドを調査し、マインドハープを発見すると、一瞬にしてラファIVへとテレポートしたのだった。
だが、ヴァッフィは即座にランドをマー総督へと差し出した。このドロイドはランドに勝ち取られる前に、彼を裏切るようプログラムされていたのである。マーはマインドハープを横取りすると、カルリジアンに終身重労働の刑を宣告する。しかし、マインドハープが起動したちょうどそのとき、既にランドへの裏切りを全うしたヴァッフィが、一転して彼を救出したのだった。そして、2人がラファIVを離れると、この次元変換装置の副調和波の発散によって、トーカがかつての居住地だったシャルーへと戻された。ラファ星系の巨大なピラミッドは崩壊し、その結果、エイリアンの都市が残されたのである。
カルリジアンとヴァッフィ・ラは最後のラファ・ライフ・クリスタルを大量に持ってハイパースペースへと入り、ラファ星系を後にした。ランドはこの価値ある積荷によって250,000クレジットもの利益を得ることになる。
ナー・シャダーに戻ったランドはデュロスから大量の中古宇宙船を購入するが、彼はすぐにビジネスの難しさを思い知らされた。帝国軍がこの犯罪者によって支配された星系に到着したとき、彼はそれらを売り払うことを真剣に考えていたのである。そして、ナー・シャダーの戦いが始まると、ランドは宇宙船の在庫を無法者仲間に分け与え、ヴァッフィ・ラは<ミレニアム・ファルコン>を器用に操縦する。最終的に攻撃は回避されたものの、残った宇宙船の中で宇宙航行に耐えうる機体は1割にも満たなかった。途方に暮れたランドは、残った所有船の9割をロアに売却したのである。
ランドは損害を取り戻す方法を考え、クラウド・シティのヤリス・ベスピン・カジノで開催されるリージョナル・サバック選手権への出場を決めた。そのため、ランドとヴァッフィは10,000クレジットを手に入れようとセントラリティへ戻り、合法的な貨物輸送を開始する。しかし、関税、経費、ライセンス料による支出が収入を上回り、結局は手ぶらで帰ることになったのだった。
そのため、フレームウィンドの発生中にオセオン星系でサバックを行う機会を得たランドは、さっそくその勝負を受け入れた。だが、オセオン6845に到着するや、彼は暗殺者からの襲撃を受け、スティンガービームで自己防衛することを強いられる。すると、カルリジアンはオセオン星系の上位管理官、ロブ・ドラフから、致死的威力を持つ武器の携帯は公開処刑に相当する罪だと告げられるのだった。しかし、管理官は彼を賞賛し、死刑を回避する条件として、レサイを常用する裕福な実業家、ブーア・マッダに対する麻薬の手入れに参加するよう要求する。そこで、ランドはフレームウィンドの激しい放射がオセオン5792を通過したとき、マッダのディーラーを装って2人の工作員、バシ・ヴォーバとウェイワ・フェイボットを送り込んだのだった。
驚くことに、マッダの正体は変装したロカー・ゲプタだった。彼は2人の工作員を迅速に始末し、ランドもこの世で最も残酷な苦痛を与えて殺害するつもりだったのだ。しかし、彼はタイミングよく現れたレナタシアンの戦闘機部隊によって救われる。だが、彼らの目的はヴァッフィ・ラを殺害することだった。そして、脱出の際の混乱のなか、ランドはマッダの麻薬代金、200万クレジットを掴み取る。彼はこの金を分割し、いくつかの惑星の銀行へと預けることにした。そのうちの50,000クレジットはアーガウの銀行に預金し、これをベスピン・サバック・トーナメントのエントリー・フィーに充てるつもりだった。しかし不運にも、セントラリティの主要な金融惑星、デラIIIに大半のクレジットを預けようとする試みは、「海賊女王」として知られるドリア・レンサルの略奪攻撃によって妨害されてしまう。ドリアにはカルリジアンの魅力も届かず、彼はマッダの残りの金を彼女にすべて奪い去られたのだった。
その直後、ランドとヴァッフィ・ラは、ハイパージャンプ能力を持つ種族オスワフトの若き宇宙居住者、レヘスと遭遇する。レヘスは好奇心によって故郷のソンボカ星雲(あるいは星洞)から荒廃したセントラリティまでやってきたのだった。彼は何とか会話をしようとしたが失敗し、その後、ようやく<ミレニアム・ファルコン>の乗員に生命の危機を訴えることに成功する。そして、ランドが船の再利用品の中にあった貨物を宇宙空間に破棄すると、レヘスは熱心にそれらを掴んだのだった。そして数ヵ月後、帝国とセントラリティが500隻の大型艦船で、袋状になっているソンボカの入り口を封鎖する。これらの船は星雲に漂う「星間プランクトン」を汚染するように改造されており、彼らはこれによってオスワフトを餓死させ、絶滅させるつもりだったのだ。レヘスはヴァッフィ・ラからもらったトランシーバで<ミレニアム・ファルコン>に連絡を取り、彼らに助けを求めることになる。
ランドは邪魔になった船の積荷を運んでいる商人であると偽り、封鎖を通過することができた。<ファルコン>は検問を受けたが、提督以外には誰も封鎖の理由を知らされておらず、誰一人としてこの船の本当の積荷がゴミやトイレの再利用物の中に隠されているとは思わなかったのである。封鎖の前線に到着した後、ランドはソンボカの口で休憩をとった。一方、ヴァッフィ・ラは<ファルコン>の機体後部にあった金属片を使い、封鎖船からの砲撃によって船が破壊されたと見せかける装置を作成した。ソンボカの内部で彼らはレヘスとオスワフトの長老たちに連絡し、他のオスワフトたちが前哨艦隊との交渉を行っている間に、作戦を練り始めた。しかし、帝国の目的はオスワフトの完全なる絶滅であり、交渉者たちは余儀なく虐殺されてしまった。その過程で、シールドのないクルーザー<コーティアス>で起こった彼らの叫び声の1つが、音声流のメーザーとなって船を破壊する。艦隊は報復のためシールドを上げて星雲へと侵入したが、彼らはランドの殺害を目論むゲプタに呼び戻されたのだった。
ゲプタが到着したときには、既に艦隊は集結しており、星雲に侵入していた。幸いにも、彼らは一時停止し、カルリジアンに戦術を提案する時間を与えることになる。その作戦は、オスワフトが体の孔から重金属を排出し、それを敵クルーザーの間に囮として置き去りにした後、ハイパージャンプするというものである。結果として、敵艦隊の中に大規模な友軍誤射を発生させ、大きな被害を与えることができた。一方で、オスワフトは戦闘機に向かって「叫び」を上げ、強力なメーザーでそれらを殲滅していった。作戦は功を奏し、敵軍の11パーセントが失われた時点で戦いは終結する。だが、ゲプタはランドに最後通牒を突きつけた。自分との個人的な決闘に応じなければ、電磁魚雷を星雲に向けて発射し、内部の生命体をすべて滅ぼすというのだ。
カルリジアンとヴァッフィ・ラが真空中でツンドの魔術師と対面する。ゲプタは、ヴァッフィがランドを裏切るよう再プログラムされたままだと信じていたため、このドロイドが決闘に立ち会う許可を与えたのだった。激しい格闘といくつかの策略の末、ヴァッフィが切り離した触手の1本でゲプタを掴むと、ランドは流れ弾をゲプタの足首に命中させる。魔術師は悲鳴を上げて体を縮め、流れ弾でヴァッフィの胴体を傷つけた。ランドは宇宙服を探し、弾を当てたところで傷ついたクロークを発見する。ゲプタは人間ではなく、ランドがかつて一度だけ訪れたことのある未知領域の惑星、クレイカル出身のクロークだったのだ。ランドはこのエイリアンをつまみ上げると、グローブの染みほどの大きさになるまで絞り上げた。こうして最後のツンドの魔術師は滅びたのである。
このとき、ソンボカの戦いが再開されたが、それもほんの一瞬のことだった。どこからともなく50キロメートルの自我を持つドロイドが大群で姿を現し、「即座に攻撃をやめよ。さもなくばすべてを破壊する」という要求を出したのである。彼らこそがザ・ワンとジ・アザー、そしてザ・レストであり、ヴァッフィ・ラを迎えに来たのだった。何千もの巨大な船と直面した帝国艦隊は、殺戮任務を放棄して逃走していった。そして、ヴァッフィ・ラの祖先たちはこの小さなドロイドを修理すると、彼を連れて未知領域へと戻っていく。また、ランドも貴重なオスワフトの合成宝石を大量に手にして、ソンボカを後にしたのだった。
精神病にかかった3POシリーズ・ドロイドのC-3PXは、かつてシス卿ダース・モールが所有していたことのあるプロトコル・ドロイドである。このドロイドはサイボット・ギャラクティカ社製のTCシリーズ・プロトコル・ドロイドをベースとして改造されており、モールのシス・インフィルトレーター上で、第1保安施策として機能するように設計されていた。また、3PXにはメチュー=デルーと呼ばれる古代シスの秘術によって、ダークサイドのエネルギーが注入されている。さらに、C-3PXには腕に組み込まれたスタン兵器やレーザー、後頭部に組み込まれた特殊なレーザー兵器など、83種類もの異なる武器が組み込まれている。モールはこのドロイドを自分の命令に忠実に従い、かつあらゆる状況に的確に対処できるようにプログラムしているのだ。
ダース・シディアスから、バートックに盗まれた通商連合のドロイド・スターファイターを奪回するよう命じられたモールは、C-3PXを連れてラルティアへと向かい、バートックの暗殺者たちに故意に捕らえられていた。このとき3PXはバートックたちを騙すため、プロトコル・ドロイド特有の怯えた泣き声を装っている。そして、モールは暗殺者たちがグルードー・ザ・ハットに雇われていたことを知ると、ラルティアの要塞を破壊する準備を行ったのだった。だが、ビルが爆発したとき、3PXはまだ脱出できていなかった。モールは辛うじて脱出に成功したが、ドロイドはビルの中に取り残され、これがモールと3PXとの別れになったのである。
だが数年後、C-3PXは部分的に大破した状態で、ホスク・ステーションの闇市場に売りに出されていた。そして、このドロイドは犯罪王オラグ・グレックに買い取られ、彼の手で暗殺ドロイドとして再プログラムされる。だが、グレックが多額の借金に追われて行方不明になると、3PXはしばらくの間、自由を手に入れることができたのだった。その間、彼は暗殺ドロイド本来のプログラムにしたがって殺し屋を営むようになり、無数の殺人を犯してクレジットを荒稼ぎしていたのである。
後に、C-3POの頭蓋部に3PXと同じX字型のマークが付けられると、彼と同じ外見を持つ3PXも様々な珍事に巻き込まれていった。2体の金色のプロトコル・ドロイドは、共に指名手配中の暗殺ドロイドとして認識され、オラグ・グレックのドロイド闘技場で武装したR2-D2と戦わされることになる。だが、3PXは無理やり死闘を演じさせられていた3POに同情し、彼の身代わりとなる道を選んだ。彼はR2-D2が付けていたマンダロリアン戦闘装甲服のパワー・マレットによって、一撃で破壊されたのである。
若き密輸業者だったハン・ソロは、その頻繁な旅において余分な手荷物は極力背負わないように努めていた。特に彼にとってドロイドなどは無用の長物でしかなく、自分のことはすべて自分で行うことを好んでいたのだった。しかし、そんなハンの心を一変させたのは、自らの大いなる価値を示した2体の風変わりなドロイドたちだったのである。
ボラックスはフォンドアの造船場で働く標準的なBLX-5労働ドロイドとして誕生してから既に1世紀以上を経過していた。クローン大戦当時は宇宙船の整備技師を務めていたこともあり、ときには連隊指揮官に抜擢されたこともあった。その間、彼は老朽化を防ぐために何度も修理されたが、様々な偶然が重なり、メモリー消去だけは一度も施されたことがなかった。そのため彼は無数の技能を身に付け、同時にゆっくりながらも強烈な個性を持つようになったのである。しかし、いつの日か彼も時代遅れのドロイドとして扱われるようになり、やがて売りに出されたのだった。
ボラックスがその生涯で受けた最も注目に値する改造は、企業セクターで宇宙船の違法改造やIDの偽造などを行っているドクとその娘ジェッサのアウトロー・テク集団によってなされたものだった。彼の胸部には、ブルー・マックスと呼ばれるキューブ型ドロイドを収容するためのスペースが設けられているのだ。ブルー・マックスは違法だが知的なコンピュータ・プローブであり、ボラックスとは相棒であり親友同士だった(「ボラックス」という呼称もドクとジェッサからブルー・マックスにちなんで付けられたものである)。
ジェッサからの依頼で企業セクターで行方不明になった人々の足取りを調査していたハン・ソロは、ボラックスとブルー・マックスを雇うことになる。ブルー・マックスは企業セクター共同体(CSA)の保安システムを破ってデータ・センターへの不正アクセスを成功させ、自らの能力を示した。同じくボラックスはブルー・マックスを保護し、彼を必要とするところに運ぶことで、その価値を認めさせたのである。彼らの働きによってスターズ・エンド刑務所は崩壊し、CSAの幹部らによる違法な奴隷売買の実態が暴露されることになった。さらにそこからは数千年前のシム・ザ・デスポットの財宝も発見されたのである。
その後2体のドロイドは自分たちがまだ知らない銀河系を見てみたいと思うようになり、ハンの下で働くことと引き換えに<ミレニアム・ファルコン>の乗員として迎えられる。だが数々の冒険を経た後、最終的にボラックスとブルー・マックスはハンに別れを告げ、旅立っていった。彼らは主人をもたない自由なドロイドとなったが、その後の足取りは一切記録に残されていない。
企業セクターで宇宙船の違法改造を行っているドクとその娘ジェッサのアウトロー・テク集団は、ブルー・マックスと呼ばれる小さな目立たないキューブ型ドロイドの中に違法な回路やコンピュータ部品をぎっしり詰め込んで隠し持っていた。このほとんど自意識を持たないドロイドは帝国軍のメレンデータ社製B2-Xコンピュータ・プローブとして稼動を開始したが、やがて賞金稼ぎの手に落ち、代金代わりにドクへ支払われたのだった。
帝国軍仕様だったB2-Xは無愛想な性格だったが、ドクの率いるアウトロー・テクたちはそうした欠陥を修復し、ブルー・マックスを創造した。その結果、ブルー・マックスは早熟で活発な性格となったが、よりハイピッチな音声合成装置を与えられたことで、いたずらっ子のように振舞うことも多くなった。
しかし、ブルー・マックスは移動手段を持たないため、アウトロー・テクたちは労働ドロイドのボラックスの胸部に空いた穴の中に専用クレドールを作り、収容させていた。2体のドロイドは互いに相棒であると同時に友人となり、旅の経験が豊富な旧式のボラックスは、若く乱暴なブルー・マックスにとっての良き指導者となったのである。
深青色のキューブ型をしたブルー・マックスは、赤く輝く光受像器で受信したデータを処理し、音声合成装置を通じて会話を行う。また、様々なネットワークと接続可能なコンピュータ・プローブも装備されており、ボラックスを遠隔操作することも可能である。さらに、彼の処理装置やソフトウェアはオーロンIIIにある企業セクター共同体(CSA)の最も強固な保安システムでさえ、突破し得るものだった。事実、ブルー・マックスは当初から共同体のデータ・センターに不法アクセスするために設計されていたものであり、企業セクターで行方不明になっている人々がスターズ・エンドと呼ばれる秘密の刑務所に捕らえられていることを突き止めたのである。
後にブルー・マックスはCSAのスターズ・エンド刑務所から囚人を解放するため、ハン・ソロに協力している。彼らはその英雄的行為によって、アウトロー・テク集団から解放され、自由を得ることができた。その後、2体のドロイドは銀河系を旅したいと切望し、ハンに<ミレニアム・ファルコン>に乗せてほしいと申し出る。生まれもってのドロイド嫌いだったハンも、彼らの忠誠心と才能を見せ付けられたことによって心を変え、2体を同行させることを決意したのだった。
2体のドロイドは<ファルコン>に乗せてもらうことと引き換えに、一時的にハン・ソロの下で働くことに同意する。ブルー・マックスは<ファルコン>と通信することもでき、船をいつでも最高の状態に保つことができた。また、ハンとチューバッカが<クイーン・オブ・ランルーン>の捜索をしていたときも、このドロイドたちは敵の戦闘ドロイドとの戦いなどを通じて大いに役立ったのである。
<クイーン>を発見した後、ブルー・マックスとボラックスはハンに別れを告げ、ルーリアンのスカインクスと行動を共にした。彼らはスカインクスがルーリアンの成人にあたるクロマ=ウィング・フライヤーになるための最後の試練に力を貸す。しかし、これを最後に彼らの行方は分かっていない。
ダッシュ・レンダーに忠実なドロイドの相棒リーボ(正式名称LE-BO2D9)は、サイボット・ギャラクティカ社製LEシリーズ修理ドロイドの初期型モデルである。短気だが信頼性の高いこのドロイドは、ダッシュの副操縦士および補佐の役割を担っている。
当初、リーボはエッセレスの管制官の所有物であり、訪れた宇宙船の安全標準を検査するために使用されていた。しかし検査の間、ある貨物船がリーボを載せたまま、エッセレスを離陸してしまったのだ。
他にすることがなかったリーボは、この船の機械工として働き始める。その後、彼は幾度と無く主人を変え、彼を所有した密輸業者たちはそのたびに新しい能力を追加していった。そして最終的にダッシュ・レンダーの手に渡るが、その前にリーボはアウター・リムを旅するコメディアンの所有物となり、ユーモアのセンスも習得している。
ダッシュはリーボに高度な修理技術と操縦技術を与え、長距離シグナル・チャンネルを備えたコムリンクを内蔵させている。
プリンス・シーゾーにとってブラック・サンに最も忠実な愛すべき右腕、そしてボディガードとなっているのがグリである。実際にブラック・サンの存在を知る人々の多くも彼女がシーゾーの代理として組織の表舞台で活躍するようになってからは、彼女をその首領だと思っていた。
グリは青い瞳、長くしなやかな金髪、プロ・ダンサーを思わせる優雅な身体を持った美しい女性である。声は冷ややかかつ滑らかであり、その美しさから彼女が恐怖の殺人兵器であることを想像できる者は1人もいないだろう。しかし、グリは彼女自身がまさしく武器であり、他の武器を持つ必要すらない。彼女はシーゾーの最強のボディガードであり、また、最高の協力者なのである。
グリは一切の感情やためらいを見せることなく、ただひたすらシーゾーの命令を実行に移している。彼女の冷静さと鋼鉄の神経は訓練によるものではなく、高度な技術によって製造されたドロイドならではの特徴なのだ。
数少ないヒューマン・レプリカ・ドロイドの中で唯一殺人を専門としてプログラムされたグリは、おそらくシーゾーの所有する最も高価な財産である。彼はこのドロイドを造るために900万クレジットという法外な金を費やすことになったが、シーゾーはその価値が十分にあったと感じている。彼のように他人を信用しない男にとって、これほどまで完全な忠誠を手にする方法は他に存在しないのだ。
グリは呼吸を行い、体には血が流れており、人間と全く同じ行動をとることができる。合成骨格も人間を精巧に真似て造ってあり、バイオ樹脂製の主要な臓器に至っては大雑把なスキャナすら騙してしまうほどである。また、彼女の完璧な平衡感覚を生み出す超小型ジャイロ装置も厳重にシールドされているため、スキャナでは発見することができず、傷1つないクローン皮膚はあたかも10歳の少女のように映ってしまう。ただ、その強靭な筋肉だけは隠すことができないが、その細胞組織は全く新しいものであり、どんなスキャナにも登録されていないのだ。全体的に見て彼女は完全な20代前半の女性であり、事実、その恐るべき能力を隠すように造られているのである。
彼女の腕力と敏捷性、スピード、平衡感覚はまさにグリを効果的な殺人マシンに仕立て上げている。噂によれば彼女の中枢となっている装置は高度に改良されたAA-1ヴァーボ=ブレインであり、これは彼女に人間と同等の振る舞いを与えると同時に、シーゾーからの無数の命令を遵守する手助けも行っている。
グリは主な任務の1つとして主人を守ることをプログラムされていた。彼女はシーゾーの立てた計画に潜在する危険性、特にシーゾーの感情的な行動によって引き起こされる予想外の出来事を巧みに分析しているのだ。高度な防衛プログラムは時として彼女にパラノイア気質を生じさせることもあるが、グリの防衛本能はそれがシーゾー自身に対する脅威であろうと、ブラック・サンそのものに対するものであろうと、全く関係ない。彼女は常に暴力的手段で敵に立ち向かい、あたかも戦いによって成長しているかのようにさえ感じられるのだ。
グリの生みの親であるアウトロー・テク、インゴイアンのシモネールのことはほとんど何も知られていない。天才医師であると同時にドロイド技術者でもあった彼は孤独を好み、ミノス星団に隠れた飛び地領で仕事を行っていた。だが、彼は偶然にも初期の反乱軍が囮計画のために開発した新型ドロイドを入手することに成功する。この計画は帝国軍の高官を破壊活動や遅延工作をプログラムされたドロイドとすり替えることによって、帝国内部に混乱を招こうというものだった。しかし、どういうわけか設計図とプロトタイプがシモネールの手を通じてブラック・サンのものとなっていたのである。グリに先立って製造されたヒューマン・レプリカ・ドロイドはごく少数であり、その後に造られたものは1体もない。シモネールはシーゾーから得た900万クレジットを元手にその後もドロイドの研究を続けていたが、グリの最初の獲物となってこの世を去ったのである。
シーゾーは彼自身や組織を裏切った者を抹殺するため、グリを幾度となく任務に送り込んでいる。「バラーニ・リスト」、すなわちサイザー・ランで漏洩したブラック・サンの活動に関する詳細なリストを奪回したのもグリだった。また、このリストの流出に関わる陰謀を企てたヴィゴのグリーンを殺害したのもグリである。さらに、ライバルのオロロ輸送会社の幹部全員を殺害したのもグリだった。しかし、さすがの彼女もジェダイに勝つことはできなかった。彼女は友人の救出のためシーゾーの宮殿に潜入したルーク・スカイウォーカーと格闘を行い、初めての敗北を喫したのである。ルークはグリに再プログラミングと、彼女により相応しい仕事の提供を申し出るが、グリはそれを拒否し、シーゾーのもとへと戻ったのだった。
その直後、シーゾーは宿敵ダース・ヴェイダーの逆鱗に触れ、スカイフックごと滅ぼされる。しかし、グリは爆破を逃れていた。彼女はパラウィング・グライダーでシーゾーのスカイフックを脱出し、主人から与えられた宇宙船<スティンガー>で逃走していたのである。
エンドアの戦いのおよそ1ヵ月後、グリは再び姿を現した。その間もブラック・サンでは正当な後継者が決まっておらず、内部抗争の真っ只中にあった。一方で、長く行方不明だったシーゾーの姪サヴァンは、グリの記憶の中にあるブラック・サンの重要な情報を求めて彼女を捜索する。サヴァンは賞金稼ぎのカー・ヤングを雇い、グリの追跡を開始したのだった。
グリは目的も宛てもなく銀河系を放浪していたが、やがて元帝国軍のドロイド技師マサド・スランブルを求めてハード・ムーンへと向かう。彼女は再プログラムを希望しており、そのためには彼が最も相応しい人物だったのである。スランブルはハード・ムーンで酒場のオーナーを営んでいた。彼はグリの要望に応じるが、そのためには医療ドロイドA-OICを取り戻す必要があった。このドロイドはグリの複雑な神経網を再構築できる唯一の外科医だったが、パイク姉妹によって盗み出され、マーニンカムのスピンダ・キャヴィールの手に渡っていたのである。
グリはマーニンカムの沼地を進み、獰猛な肉食獣と素手で戦いながらA-OICを捜索する。そしてついにキャヴィールの屋敷に忍び込み、パイク姉妹を倒して外科医ドロイドを取り戻した。彼女はハード・ムーンに戻る途中、カー・ヤングの追跡を受け、再プログラムに臨んでいたときにその賞金稼ぎと対面する。そのとき彼女は素手でヤングの心臓を引き裂き、惨殺したのだった。これは彼女のプログラムがさせたことだが、彼女はもはやこのような行動をとりたくなかった。スランブルとA-OICはグリの暗殺者プログラムを除去するという繊細な作業を開始する。一方で、サヴァンもハード・ムーンに到着していたのだった。
再プログラミングから目覚めたグリは、起動して以来はじめての微笑を経験する。彼女はスランブルとA-OICを覚えていたが、彼らが自分の思い出せない「悪い記憶」を消去したことを知っていた。その直後、サヴァンと彼女の傭兵たちがスランブルの研究所を襲撃する。敵と直面したグリは、彼らを撃退することができた。どこで学んだかは記憶にないが、彼女の戦闘能力は未だ健在だったのだ。
ついにグリと対面したサヴァンは、彼女を服従させることのできるパスコードを使用した。しかし何も起こらず、グリはサヴァンを気絶させる。こうして過去から解放されたグリはハード・ムーンに留まり、恐ろしい暗殺者ではなく、魅力的な若い女性としてスランブルの酒場で働くことになるのだった。