幼い奴隷少年アナキン・スカイウォーカーによって組み立てられたこの青と銀に輝くポッドレーサーは、これまでに造られたレーサーのなかで最も性能がよく、最も高速なマシンの1つである。このレーサーはオーバーヒートしているために役に立たないと考えたワトーが廃品として放置していたものだった。アナキンはこのガラクタ同然だったレーサーをこっそりと再構築していたのである。
このレーサーの特筆すべき点は再構築されたエンジンにある。経験の浅いパイロットの多くは大きなパフォーマンスを得るためについつい大型のエンジンを載せてしまい、結果的にレーサーの重量を増やし、機動性を損ねてしまいがちである。アナキンはこのジレンマを解消するために活性化された純トラジウム・パワー溶液を使用し、ポッドレーサーとしては珍しい燃料噴霧機と多重点火装置付き配給システムを搭載した。大量の燃料を燃焼装置から噴射することによって、このポッドはすさまじい推進力を得ることができる。ただし、このシステムは燃料の原子1つ1つが持つポテンシャルを最大限に活用できるが、その反面非常にデリケートにできており、簡単にオーバーヒートしてしまうという欠点を持つ。
アナキンはポッドレーサーの機動性をさらに向上させるため、メイン・タービンの通気孔の周りにそれぞれ3枚のエア・スコープを増設した。実は、この黄色いエア・スコープはタイリア製の油圧式ストラットであり、ワトーがドレッドン・ザ・ハットから購入した軍需品の余りの中から見つかったものである。ドレッドンはアウター・リムで最も有名な武器商人だった。
アナキンの設計はすべてが根拠に基づいたものである。最高時速947キロメートル以上を誇るこのポッドレーサーは、他のすべての出場マシンのなかで最も小さく、最もスリムだが、アナキンをタトゥイーンのブーンタ・イヴ・クラシックで優勝に導いた。そしてレース終了後、クワイ=ガン・ジンによって、最終ラップで自分のポッドを破壊されたセブルバへ売却されている。クワイ=ガンはこのレースにおける賭けでワトーに勝利し、アナキンに自由を与えることに成功した。しかし、セブルバから得た代金をもってしても母親のシミを解放することはできなかった。
その後、このレーサーはセブルバの好きなオレンジ色に塗り替えられ、マラステアで開催されるヴィンタ・ハーヴェスト・クラシックに出場している。
セブルバのコーラー・ポンドラット・プラグF<マンモス>は、オレンジ色の巨大なエンジンを搭載した最強のポッドレーサーである。彼はこのレーサーで優勝することによって得た富の大半を更なる改良につぎ込んでいた。
このレーサーはルーニウムで圧縮され、さらにイオン噴射によって活性化されたトラジウム・パワー溶液によって燃料を得ている。改造されたコクピットには無数のペダルとレバーが取り付けられており、エンジンの状態を監視するデータ転送バンクに囲まれている。
自分の操縦テクニックだけでは満足できないセブルバは、マシンに数々の違法改造を行い、勝利を確実なものとしている(もちろん発見されれば即座に失格である)。こうした改造には相手のレーサーのエンジン計測器を混乱させるセンサー妨害装置、接近してきたポッドレーサーの表面に鋭い弾丸を打ち込むネイル・キャノン、カミソリ刃などがあるが、なかでも最も恐ろしい武器は火炎放射器である。セブルバのレーサーの近くを通過するライバルは、容赦なく火だるまにされてしまうのだ。ブーンタ・イヴ・クラシックではクレッグ・ホールドファストのレーサーが標的となり、炎に包まれ大破してしまった。
しかし、巨大なスプリットXエンジンは、それだけでも強力な武器となり、セブルバを追い越そうとする小型のレーサーは簡単に弾き飛ばされてしまう。不注意なマーホニックは1周目でセブルバの体当たりを喰らい、岩壁に激突してしまった。また、最終コーナーではアナキンのレーサーと接触し、お互いのコントロール・ケーブルが絡み合ってしまう。アナキンはなんとか自分のレーサーを解放するが、セブルバのレーサーは制御を失い、岩の多い地面の上で粉々に砕け散った。そして彼はコクピットごと砂の上に乗り上げてしまう。
セブルバのポッドレーサーはブーンタ・イヴのレースでコクピットを除いて激しく損傷してしまったが、この悪賢いダグはクワイ=ガン・ジンからアナキンのポッドレーサーをうまく購入する。しかし、アナキンに負けて以来、彼の評判はすっかり落ち込み、再び残忍なレーサーへと転落したのである。
ガスガノは耐震翼と推力安定化コーンの付いたエンジンを搭載したオード・ペドロヴィア製のポッドレーサーを操縦している。さらにこのマシンは彼の6本の腕に適応させた特注品であり、あわせて操縦系統の反応性も高めてあった。これによって彼は持ち前の器用さと素早い反射神経を存分に発揮させることができ、このパワフルなレーサーを容易に操縦できるのである。
ガスガノが高性能な小型のカスタム・レーサーを入手することができたのは、ガーデュラ・ザ・ハットをスポンサーに持っているからだった。このマシンは強力なエンジンによって最高時速823キロメートルを誇り、外見的には特に美しいわけでもなく、スマートでもないが、サスペンサー・フィールドによって素晴らしい牽引力を発揮することができる。また、2基のエンジンにはそれぞれの前方に安定化翼が取り付けてあり、厳しいトラックでの操縦性を大きく向上させている。このエンジンは過負荷の傾向があるが、ガスガノはブーンタ・イヴ・クラシックを2位でゴールした。
経験を積んだパイロットならば、決してスタートラインを超えられないような失敗を犯さない。しかし、これがコミカルな表情を装ったベン・クワディナロスの運命だった。彼のエンジンはようやく起動したが、その直後、悲惨なことにエネルギー・バインダーが分断され、4基のエンジンがすべて違う方向に飛散してしまったのだ。
ボールズ・ローアとの賭けのため突然レースに出場することになったクワディナロスは、慌てて急ごしらえのポッドレーサーをレンタルするが、実は彼はエンジンの起動方法すら理解していなかった。4つのエンジンを搭載するこの珍しいレーサーは最高で時速940キロメートルまで出すことが可能だが、加速力は低く、スピード重視のため安定性も犠牲になっている。
アナキンのポッドレーサーに妨害工作を企んだアーク・ルースが間違って手を入れてしまったこともあり、結局このレーサーが疾走する姿は誰も見ることができなかった。
マーホニックの緑色のポッドレーサーはブーンタ・イヴ・クラシックにおいてスタートラインの最前列に並んでいた。しかし、ゲートを最初にくぐるということは、彼が非情なセブルバの最初の標的となることを意味していたのである。マーホニックのレーサーはセブルバから繰り返し体当たりを食らい、岩壁にぶつけられて大破してしまう。
マーホニックは人気のあるパイロットだったが、マシンを優勝できるように改造するための資金が不足していた。そこで、彼はレーサーの性能を上げるためにワトーの廃品置場からあらゆる部品を拝借していたのである。
このレーサーの円錐形のエンジンは1対の第2推進装置によって支えられ、大きな推進力と機動性をもたらしている。しかし、そのどちらもセブルバの妨害工作には役立たなかった。
クレッグ・ホールドファストのポッドレーサーは、ブーンタ・イヴ・クラシック参加者のなかで最も大型のマシンの1つである。しかし、セブルバによる反則攻撃のため、彼はこのレースで最も大きな火の玉の1つになってしまった。レースの2周目でセブルバはポッドレーサーに仕込まれた火炎放射器を使い、ホールドファストのレーサーを火あぶりにしたのである。彼のレーサーはそのまま清掃ドロイドによってコースから撤去されてしまった。
ホールドファストは二流のパイロットだが、彼が組み立てたレーサーは技術的にはとても優れたものだった。事実、今回のレースで最も性能のよいマシンの1つであり、素晴らしい牽引力と操縦性、加速性を誇っている。ただ、時速800キロメートルという最高速度は月並みであり、制動性能が低いことも欠点の1つだった。また、このレーサーのコクピットは翼のような形状をしており、操縦席を保護するための天蓋もついている。
マース・グオのポッドレーサーが持つ巨大な通気孔は、セブルバによる悪質な妨害工作の格好の標的にされてしまった。レース中にセブルバはグオのエンジンへ小さな金属片を投げ込み、大破させたのである。彼のレーサーは砂漠の平原に打ち付けられ、レースコースのいたるところに残骸を撒き散らした。
グオの高価なプラグ2<ビヒモス>は見た目もよく、パワフルで操縦性も高い。巨大なエンジンは他の多くのレーサーと比べてより高い飛行高度を維持することが可能である。最高時速は790キロメートルを誇り、卓越した牽引力と加速力も併せ持っている。
ポッドレースの世界では、多くのパイロットがより大きなパワーを得るために効率を犠牲にしている。そしてこの哲学を信じるオディ・マンドレルは、自分のレーサーに巨大なタービン・エンジンを搭載させたのだった。
通常、メーカーがポッドレーサーのエンジン名にXLという頭文字をつけると、購入者はそれを大きなものだと考える。事実、オディのエクセルブロックXL 5115エンジンは巨大だが、推進装置が大きすぎるため操舵性能に悪影響を及ぼしていると指摘する専門家もいる。そして、彼のレーサーはブーンタ・イヴ・クラシックの全出場者のなかで最も低速なマシンだった。しかし、彼のスピードに対する欲望はそんな意見を寄せ付けずにいる。オディはその無謀なレース・スタイルを補完するためにエクセルブロックの修復機構を改良し、自慢のピット・ドロイド・チームによってマシンの性能を維持していたのだ。
だが、彼の戦略はピットの中で失敗することになる。エンジン排気孔の吸引力に彼のピット・ドロイドの1体が飲み込まれてしまい、レーサーは破損してリタイアを余儀なくされたのだった。
おそらくラッツ・ティレルは自分の小さな体格を補うために、巨大なエンジンとタービンの付いたポッドレーサーを操縦しているのだろう。およそ10メートルの長さを誇るエンジンは、このレースのラグーナの洞窟であまりにも大きな悲劇をもたらした。ラッツのレーサーはアクセルを踏み込んだ瞬間に、洞窟のぎざぎざした鍾乳石と衝突してしまう。彼のマシンは一瞬にして巨大な火の玉と化したのだった。
ティレルの<タイタン>2150ロケット・エンジンは時速841キロメートルの猛スピードでコクピットを牽引する。この巨大なレーサーはトラック上で他のレーサーを押し分け、力づくで突き進むこともできるが、紳士的な彼は滅多に他のレーサーを攻撃しなかった。
ティーント・パガリスのポッドレーサーは、ブーンタ・イヴ・クラシックの出場者の中で最も大きなエンジンを搭載していた。しかし、同時にこれは砂漠の渓谷に潜むサンド・ピープルにとって格好の標的となるのだった。タスケン・レイダーの1人によって放たれた正確な銃弾は、ティーントのエンジン・カバーを貫き、彼のレーサーを砂漠の大地に打ちつけた。特異な形状をしたコクピットも砂の上を激しく転がったが、そのおかげで彼は一命を取り留めたのである。
ティーントのレーサーは優れた牽引力と加速力を誇っていた。整備も行き届いており、最高時速は775キロメートルに達する。円形のコクピットは1分間に230回転を行うジャイロ型安定環の上に取り付けられており、空気力学的な方法で安定性を得ている。
その後、ティーントはブーンタ・イヴのときと非常に良く似たポッドレーサーでヴィンタ・ハーヴェスト・クラシックに出場しているが、それが新しく購入したものなのか、以前のものを修理したものなのかは定かでない。
ダッド・ボルトのがっしりとしたヴルプタリーン327(RS 557と書かれたマニュアルも存在する)は、お世辞にもそれほど速いマシンというわけではない。しかし、この頑丈なポッドレーサーはボルトの攻撃的なレーシング・スタイルとも相成って、多くの殴打に耐えぬいたのだった。
事実、ダッドは他のレーサーと衝突するたびにセブルバから現金収入を得ていた。しかし、運を使い果たした彼は3周目でアーク・ルースのレーサーともつれ合い、マシンを大破させてしまう。彼自身もレース後にそのままモス・エスパの医療センターへ運ばれてしまったのだ。
この尖ったレーサーには大きな牽引力があり、他のポッドにぶつけて挑発しているときでも操縦が可能である。しかし、エンジンの換気装置が貧弱であり、加速性にも乏しい。
イラン・マックの球根型のポッドレーサーは、ブーンタ・イヴ・クラシックでスタートラインの4列目に並んでいた。
彼のレーサーはかつて一世を風靡した旧式モデルである。ポッドレースの世界ではすべて同じだが、技術と様式は瞬く間に変化し、一時は最高だと思われていたものでもやがては埃にまみれ、より新しいモデルに取って代わられてしまう。
彼のKAT 410Cは効率と耐久性が優れているものの、最高速度と加速性能には比較的乏しかった。しかし、水陸両棲のマックは流線構造の美徳を完全に心得ており、極めて空気抵抗が少ない球状のコクピットを採用している。
アーク・ルースの不恰好で派手な色彩のポッドレーサーは、タービン・エンジンと冷却用通気孔の不安定な寄せ集めといった第一印象をもつ。しかし、このレーサーは外見に反してルースをブーンタ・イヴ・クラシックに出場させられるだけのスピードを提供した。しかし、彼は第2ラップでピットに入り、ピット・ドロイドのメンテナンスを受けている。結局のところ、このレーサーはすべての面において使い物にならない状態だったのだ。
コンパクトなエンジン部を貫く大きなクラスターは、マシンの操縦性と旋回時の反応を鈍らせた。しかし、加速性能には定評があり、他人に抜かされることを嫌うルースの自慢にもなっている。また、エンジン・クラスターの中央にある通風チャンネルは、このサイズのレーサーにしては特筆すべき冷却性能を有している。
しかし、バンピーはレースの3周目でダッド・ボルトと衝突し、両者ともにリタイアしてしまう。
過去にブーンタ・イヴ・クラシックを2回制したボールズ・ローアは、さすがに高性能なポッドレーサーを所有している。彼の緑色のレーサーは全体的に大きさが削減されているが、燃焼室からそれぞれ4本のナセルを突き出す球根型エンジンはとても長いコクピットを牽引していた。
皮肉な観衆はローアの持つ2回の優勝経験を、彼の才能やマシン性能よりむしろ運によるものだと主張する。評論家たちも彼のポッドレーサーを見れば、この意見を支持することだろう。これはおそらくローアの情熱が歌手としての活動の方により多く注がれるようになり、レースへの情熱が冷めてしまったことに起因している。彼はメカニックの才能に乏しく、そのため自機の整備はイシ・ティブの技術者に頼っていた。しかし、レースのときも彼のマシンは破損したままであり、機体を繋ぐ溶接部も弱くなっていた。ローアのレーサーは最高時速790キロメートルを誇るが、その一方で操縦が難しく、内部パーツも標準以下の代物である。さらに2つの燃焼室もオーバーヒート気味だった。
オルダー・ビードのポッドレーサーは、ブーンタ・イヴ・クラシックのスタートラインで最前列に並んだ4機のなかの1機である。このマシンは涙型のコクピットにがっちりとした2基のエンジンが接続されている。
ビードのレーサーは彼のレース観を完璧に表現していた。スピードも操作性もたいしたことはないが、それはまさしく一直線にトラックを走る野獣である。無骨で頑丈なラムエア・マークIVは弱者を押し退けて突き進む威力を持つが、一方でカーブに弱く、他の部分の性能も極めてありふれている。
デューバックに引かれてスタートラインの3列目に並んだイブ・エンドコットのポッドレーサーは、ヒレのような大型操舵翼を付けたスプリットX搭載の、青い流線型のマシンである。セブルバと同じく、彼は推進装置にスプリットXを利用しているが、これはセブルバのお気に入りである巨大なエンジンと比べてよりスマートな構造をしている。また、エンドコットは怪力で知られるJ930エンジンの操縦性を最大限に引き出すため、エンジンとコクピットをロープで繋いだが、これは逆効果をもたらした。ステアリングが効きすぎてしまい、その分事故が多くなったのである。
エンドコットのコクピットには彼のエゴがよく現れている。彼は熱狂的なファンから見えやすいように加速シートの高い位置に座っており、温度調整に用いられる柔毛に覆われたハンサムな耳蓋を風になびかせているのだ。
バンサに引かれてスタートラインに入ったネヴァ・キーのポッドレーサーは、ブーンタ・イヴ・クラシックに出場した他のすべてのレーサーと明らかに異なる構造をしている。この青と銀に彩られたマシンは、エンジンとコクピットがワイヤ状のコントロール・ケーブルではなく、硬い支柱によって連結されているのだ。これによってキーは大きな視界と操作性を確保することができるが、逆にとても大きな危険をはらんでいるともいえる。一度クラッシュすれば、コクピットが真っ先に地面に叩き付けられることになり、同様にエンジンが爆発すれば、パイロットは炎の中心に包まれてしまうのだ。
試作機であるFG 8T8は可視性と操縦性の向上を謳っており、キーに名声をもたらしたが、実際の性能は月並みなものだった。大きな牽引力と加速力を持つ反面、最高時速は785キロメートルと比較的遅く、Y字型の機体は回転性能も乏しかった。
ブーンタ・イヴ・クラシックのように世間の注目が集まるレースは、銀河全域で培われた技術の集大成となる。なかでもワン・サンデッジのポッドレーサーは昆虫を思わせる流線型のデザインなど、多くの個性的な特徴を有していた。細長いコクピットは2枚の翼にはさまれており、そこには帆のようなヒレが付けられている。また、小さなエンジンはスコップのように曲がった流線構造をしており、タービンに冷却用の空気を導いている。
このレーサーは途方もない牽引力を誇り、アンドー・プライムやオード・イバナのスクラッパーズ・ランのような危険なコースでも不安定要素を排除している。また、発達した制動システムはサンデッジに鋭い制御を可能とさせていた。
しかし、これらの特徴もブーンタ・イヴでは役に立たなかった。サンデッジのマシンは3周目でジャワのサンドクローラーと衝突し、破損してしまったのである。それでも彼は部品を繋ぎ合わせて壊れたレーサーを修理することに成功し、その後もヴィンタ・ハーヴェストに出場している。