ボーグ・コンストラクトAj^6
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解説
ボーグ・コンストラクトAj^6は、クローン大戦以前にバイオテック工業社によって製造されたサイボーグ移植装置である。
サイバネティック・テクノロジーは機械部品と有機組織との融合における代表的な成功例であり、この技術の発達によって、外科医たちは患者に直接機械の移植を行えるようになった。このテクノロジーは軍事的にも事実上際限なく利用されており、激しい外傷を負った兵士の再生を除けば、サイバネティック移植によって、照準スコープとして働く目、強靭さとスピードを増加させる強力なサーヴォ機構、その他の高性能な付属肢を患者に提供することができるようになった。しかし、サイバネティック移植には恐ろしい一面も存在し、犠牲者をコンピューター制御された奴隷や、無数の兵器を組み込んだ恐るべき機械の怪物へと変えてしまうこともできるのだ。
軍事組織や医療施設、個人的な顧客への販売目的でサイバネティック移植物を製造していた企業は、ほんの一握りしか存在しいない。このような装置は例外なく極めて高価であり、患者への移植にも難解かつ高コストな外科的処置が要求された。また、サイバネティック移植を行っている間は、患者にとっても非常に危険な状態であり、特に移植箇所が脳の場合は危険度も著しく高騰する。こうした手術では、いかなるミスであっても脳への恒久的なダメージを引き起こし、昏睡状態や、最悪の場合は死へと繋がるのだ。
ボーグ・コンストラクトAj^6は、商業的に流通している最も洗練されたサイボーグ・ユニットである。Aj^6は使用者と大型コンピューター・ネットワークとを調和させるように設計されており、使用者の頭蓋骨に直接移植される。一度適切に移植されれば、この装置は移植者の脳にナノスレッドを送信し、バイオコンピューター・ユニットと新造サイボーグ(移植者)との間における接続を確立することができるのだ。ベスピンのクラウド・シティで長年にわたって行政官補佐を務めていたロボットという名のサイボーグも、日々の業務の多くの場面で、Aj^6ユニットの恩恵にあずかっていた。
Aj^6の注目すべき特徴は、移植者の知性を向上させることである。この装置のサイボーグ・コンピューターは、他の機能を有するホストへの接続だけでなく、使用者の論理的能力と推論能力を向上させる働きがあるのだ。移植を受けた後のサイボーグは中央コンピューターと直接通信を行い、精神的にコンピューター・システムを制御できるようになる。また、サイボーグは通常のコンピューター・オペレーターのおよそ20倍の速度でデータの解析を行うことが可能である。
Aj^6のコンピューターには莫大な量のデータが蓄積されており、サイボーグはこれらすべてに対して精神的なアクセスを行える。また、この装置にはナレッジ・カートリッジを装着するための外部ポートも用意されており、サイボーグはあらゆる分野にわたる情報を、事実上無限に入手することが可能である。したがって、サイボーグはどのような状況でも、あるいはどのような処置を行う際にでも、必要となるデータをロードし、それを処理することができるのだ。
このようにAj^6はサイボーグに数々の特殊な能力を提供するが、その一方でいくつかの技術的な障害も報告されていた。Aj^6や他の同種の装置には、移植者の個性や感情の表現力を徐々に奪っていくという副作用が存在し、これによって非難を受けたのだ。実際に機械と同じような思想や行動をとり始めたサイボーグは数多く存在しており、サイバネティック躁鬱病の発生も、脳代替型サイボーグ・ユニットがもたらした不幸な一面である。サイバネティック躁鬱病に罹った患者はサイボーグ・コンピューターの統制を失い、やがては完全な狂気に取り付かれてしまうのだ。