J9ワーカー・ドローン
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J9ワーカー・ドローンは、ローシュ社製のドロイドだが、以下の3つの理由によって完全なる失敗作だと考えられている。1つめは個性が単調だったこと。2つめは名称に魅力がなく、誤解を招きやすかったこと。3つめは昆虫型のデザインが銀河系で圧倒的多数を占める哺乳類型種族に受け入れられなかったことである。
歴史
J9ワーカー・ドローンは史上最も売れなかったプロトコル・ドロイドである可能性が高い。ローシュ・ハイブのヴァーパインの技術者たちに特にこれといった不手際は無いが、昆虫種族は得てして他の文化を理解する能力に欠けるのだ。この製品の欠点は、巨大な銀河系マーケットでの販売には思わぬ落とし穴があるという教訓を与えてくれたのだった。
ヴァーパインはこのドロイドの外装甲を設計する際に、自身の下顎の先を見ることができなかった。このドロイドは、膨らんだ複眼、鋭い鉤爪の付いた手足、尖った口鋏など、明らかにヴァーパインに似せて作られている。そのため、銀河系で多数を占める哺乳類型種族は、J9をおぞましいエイリアン・ドロイドであると認識し、このことは販売戦略上、明らかに不利に働いたのである。
J9の第2の問題は、このドロイドに個性を与えたヴァーパインのプログラマに責任がある。このドロイドは昆虫コロニーの厳格に管理された構造社会の中では十分に機能するが、ハイブの思考パターンに固執するあまり、甲殻、吐き戻し、ロイヤル・ゼリーなどの言葉をそのまま翻訳してしまうことが多かったのだ。
結果的に、買い手はこぞってJ9を避けていった。落胆したヴァーパインは価格を大幅に引き下げ、J9に奇妙な第二幕をもたらした。ヴァーパインはこのユニットを、彼らの社会での一般的呼称である「ワーカー・ドローン」として販売していたため、ヴァーパイン以外の買い手はラベルを誤解することが多く、多くのJ9が倉庫や荷積ドックに入れられてしまったのだ。だが、ローシュは異議を唱えなかった。商品が売れ、利益が上がればそれでよかったのである。
しかし、J9を貨物のタグ付け役として使うのは余りにも無駄だった。このドロイドにはアージャンII論理コンピューターとトランラングIII通信モジュールが搭載されており、百万以上の言語を理解することができたのだ。知性の面では、J9は3POユニットと競合し得るのである。このドロイドの巨大な昆虫の目はヴァーパインの可視範囲に適応しており、主として紫外線波長に反応した。また、極めて敏感な嗅覚センサーとトープレックス社製マイクロ波センサーによって、J9は人間が感じるよりはるかに多くの事象を認識することができたのである。
J9の腰部の三角形をした複合型ジョイントは、ローシュ・ハイブのトレードマークである。この腰部ジョイントは、8D精錬ドロイドや、他の多くのローシュ社製品にも同じものが採用されていた。
また、マーケティングの失敗について反省したヴァーパインは、シック=シックス、フラカックス、ジデックなどの、他の昆虫種族に向けたJ9の直接再販も試みた。その結果、巨大なカマキリに似たヤムリの間で最大のブームを沸き起こすことに成功している。