モルース・ドゥール
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解説
堕落した裏切り者のライベット、モルース・ドゥールはケッセルに拠点を置くスパイス密輸組織の首領である。ライベットはずんぐりしたカエルのような身体に、汚らわしい緑の皮膚をしているが、彼はさらにその上から緑色の爬虫類の皮を身に付けることを好んでいた(セクシーな気分になると、さらに明るい黄色のタイが加わる)。ドゥールは欲しい物のためならかつての仲間を裏切るばかりか殺すことをも躊躇しない冷酷な男として知られており、偏執的な傾向が強いため、神経質そうなチックを繰り返す。この男こそは、まさに銀河系の退廃した犯罪社会の弱点を代表する存在と言えるだろう。
かつてのドゥールはケッセルにある帝国の大規模な刑務所で働く職員の1人だった。彼はその立場を利用して忠実な部下を集め、徐々に自身の権力を拡大していったのである。ドゥールは看守たちに賄賂を贈り、ときには脅迫することによってケッセルのエネルギー・シールドの配置やそのアクセス・コードに関する情報を入手していた。彼はこれらの情報を他人に売りさばくことで莫大な利益を挙げており、購入者もまた小規模なスパイス鉱山を違法に運営することができたのだ。だがその後、ドゥールは適当な時期を見計らってビジネス・パートナーを裏切り、ときには殺害することで帝国からも点数を稼いでいたのである。
帝国はケッセルの囚人たちを使ってグリッタースティム・スパイスを採取させていた。グリッタースティムは強力な覚醒作用を持つ麻薬の一種であり、銀河系の闇市場でも法外な価格で取引きされていた。もちろん、ドゥールは自分の利益のために闇市場のスパイスを大量に横領しており、自分の陰謀を嗅ぎつけた者に対しては、極わずかな例外を除いて確実に抹殺していた。そして、自らの欲望のために誘拐してきたライベットの女たちに無理やり子供を産ませ、自分の子供たちさえも奴隷として真っ暗な鉱山で働かせていたのである。ドゥールが唯一の信頼を置く直属の部下は、刑務所の看守をしていたアーブ・スキンクスネクスだった。彼はまるで骸骨のような細身の男だが、盗人や暗殺者としての腕前は一流であり、ドゥールの汚れ仕事の遂行に役立っていたのだ。
ドゥールにとって1つの転機となったのは、ハン・ソロへの裏切りだった。ジャバ・ザ・ハットのためにスパイス密輸の仕事を請け負っていたソロは、ドゥールの本当の手口に気づくことになる。ジャバは既にスパイスの代金としてドゥールに12,400クレジットを支払っていたが、ドゥールは関税を取り立てる帝国の役人(彼らもまたドゥールにクレジットを渡していた)に、<ミレニアム・ファルコン>の通るルートを密かに通報していたのだ。検問に気づいたソロは<ファルコン>に乗り込まれる前に積み荷を船外へ放棄するが、後で回収しようと戻ってきたときには積み荷はどこかへ消えてしまっていた。その後、ジャバはソロの首に賞金を賭け、同様にドゥールに対する疑念も解消させるべく賞金稼ぎを送り込む。ドゥールはジャバの殺し屋たちを前に必死に命乞いし、スキンクスネクスが救援に駆けつけたときには、何とか片目を差し出すだけで勘弁してもらったところだった。それ以来、彼は片目に機械で作られた義眼をはめるようになる。
やがてエンドアの戦いによって銀河内乱が一時的な終息を迎えると、ドゥールはその後の混乱に乗じてケッセルのスパイス密輸組織を完全に掌握し、刑務所長をはじめとするライバルたちを次々と抹殺していった。そしてエンドアの戦いから7年後、外交任務を帯びたハン・ソロとチューバッカがケッセルへと戻ってきた。彼らを信用しないドゥールは2人を人里離れたスパイス鉱山で奴隷として働かせたが、ソロとチューバッカはそこでフォースに敏感な少年キップ・デュロンと出会うのだった。そして新共和国がソロとチューバッカの捜索を開始すると、ドゥールは2人の処刑を考える。しかし、2人を連れに向かったスキンクスネクスが鉱山でグリッタースティムを産み出す巨大なエネルギー・スパイダーに殺されてしまい、ハン、チューバッカ、キップの3人はこの機に逃亡を図るのだった。その後、モー研究所の帝国軍を巻き込んだ大規模な宇宙戦が勃発し、ドゥールはケッセルの護衛艦隊の大半を失ってしまう。惑星上の施設も激しく破壊され、彼はケッセルの刑務所へと逃げ帰るのだった。結局、ドゥールは新共和国軍、彼を裏切った密輸業者たち、そして奴隷にされていた彼自身の子供たちに追われる身となり、鉱山の奥へと逃走を余儀なくされる。そこでドゥールが最後に見たものは、おぞましい姿をした巨大なエネルギー・スパイダーだった。これは数え切れないほどの殺人を繰り返してきたドゥールにとって、まさに相応しい最期と言えるだろう。