マンゴ・バオバブ
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バオバブの名は銀河系の多くのセクターで尊敬を集めていた。かつてのバオバブ商業船団は最も信頼できる輸送業者の1つとして確固たる評判を築いており、現在のバオバブ図書館も巨大かつ権威ある存在として認識されている。だが、この歴史に名高い一族の長老たちの中に、マンゴ・バオバブの向こう見ずな性格と野心が、やがて一族を破滅へと導くだろうと考える者がいたことも事実である。
経歴
帝国初期の時代は、バオバブ家にとって苦難のときだった。帝国による通商連合の国有化によって星間輸送業そのものが一変し、バオバブ輸送船団も財政難に直面したのである。新しい帝国に忠誠を誓った輸送会社には優先的に魅力ある仕事が与えられていたが、その一方で独立志向の強いバオバブ社は新しい制度に取り入ることが困難だったのだ。
当時、権力の若き後継者だったマンゴ・バオバブは、無責任な性格から注意力が散漫しており、周囲からもより大きな展望は望めないとされていた。そのため、バオバブ一族の長老たちはマンゴに礼儀作法と仕事上の倫理観を植え付けるべく、彼をバイトゥへ派遣し、採鉱事業と交易拠点の設立を命じたのだった。そこで彼は原始的なバイトゥイアンと親交を深め、懸命に鉱山を開拓すると、すべての居住者間で惑星の富を共有したのである。
だが、やがてバイトゥにも帝国軍が訪れ、彼らはドロイドの独裁者グレート・ヒープの監視のもと、独自の採鉱事業を開始する。この巨大な工業ドロイドは鉱物資源を採集するために冷酷な機械的手法を導入した。グレート・ヒープは大規模な仕掛けによってバイトゥの農耕地帯全域の大気から水分を根こそぎ吸収し、機械の冷却を行ったのである。そのため、バイトゥは酷い干ばつに見舞われることになった。しかし、マンゴ・バオバブと彼の所有する2体のドロイド、R2-D2とC-3POの活躍によってグレート・ヒープは破壊され、帝国軍によるバイトゥの荒廃は終息を向かえたのだった。
この事件の後、バオバブはたった1つの壮大な夢物語に取り付かれるようになった。伝説のルーン星系の位置を突き止めることである。「シスのマント」という不吉な呼び名で知られる深い星間ガスに包まれた惑星ルーンは、極めて高価なルーンストーン(莫大な情報を格納することができるクリスタル製の宝石)の産地であり、発見者に想像を絶する富を約束してくれるのだという。マンゴは故郷マンダとルーンとの間を結ぶ交易ルートを開拓し、それによってバオバブ家の財政を補填したいと考えていたのだ。
マンゴは一族の資料室を捜索し、ルーン星系への星図を繋ぎ合わせるべく手掛かりを解析した。そしてR2と3POの助けを借り、彼はついに自分の宇宙船<キャラヴェル>でシスのマントへと突入する。彼は虹色の彗星の微かな尾をたどるが、これはルーンへ直接導いてくれる天然の宇宙現象だったのだ。
星雲の中には航路を案内してくれる無数のライトステーション(誘導装置を装備した宇宙ステーション)があった。<キャラヴェル>は小惑星や放射能嵐によって破損し、無節操なルーンの支配者、ビサド・クーン総督の運営するライトステーションへと引き寄せられる。クーンは帝国との外交に向けた予備交渉の最中だった。このとき世間知らずのクーンはバオバブをパルパティーン皇帝の密使と勘違いしてしまい、バオバブは難なく混乱を回避することに成功する。だが、本物の皇帝の密使であるテリナルド・スクリード提督が到着したことによって、厄介な状況となった。激怒したクーンはバオバブと彼のドロイドを逮捕し、ライトステーションに拘留したのである。
だが、別の囚人ヌープ・イェルダーブの助けによって、バオバブは脱走することができた。そしてライトステーションからの脱出を巡る戦いのなかで、この宇宙ステーションは深刻な損傷を受けることになる。ステーションは安定性を失い、小惑星の方へと回転しながら吸い寄せられていった。マンゴは滅び行くステーションから死に物狂いで脱出を図るが、自分の船にたどり着くことはできなかった。それは既にクーンによって徴集されていたのだ。マンゴはそのお返しにクーンのクラウドクラフトを1機盗み、帰還したのである。
安全だが限られた距離しか航行できない船の中で、マンゴは永遠にシスのマントをさまよい続けることになるのではないかと絶望していた。だが、若き輸送業者は再びイェルダーブの救助努力によって助けられる。彼はマンゴにルーン星系の位置を指示すると、すぐに宝探しを開始したのだった。しかし、セキュリティ網に反応しないクラウドクラフトはクーンのドローン・ファイターに撃墜され、ルーンのアンブー州の沼沢地に墜落してしまう。だが、船は完全な形を留めており、アンブーの住人オーレン・ヨムとその父ニルズによって発見されたのだった。
若きオーレンはマンゴの肉体能力と決断力に感動する。彼女は彼にルーン・コロニアル・ゲームへの参加を勧めるが、実は彼女自身も反抗的なアンブー州を代表する人気選手だったのだ。一方、クーン知事もこのゲームには多大な関心を抱いていた。彼はタウントゥーム出身の選手を使ってアンブーを打ちのめし、反逆者を倒すことでその精神を抑え込もうと計画していたのである。そして、クーンの部下によってアンブーの選手2人が毒を盛られ、マンゴとC-3POがその代わりとして出場することになった。だが、マンゴは戦いに勝利し、アンブーの人々への賞賛を確保したのである。
やがてマンゴはオーレンに強い関心を抱くようになり、オーレンもまた彼への感情を膨らませていく。別れの際に、彼女は彼にルーンストーンを贈った。そして、この意思が不気味なバンサ墓所に住む年老いた隠者の持ち物だったことを知ったマンゴは、さっそく調査に出発する。その後、この隠者は、オジェム ”オールド・オガー” バオバブ、すなわちマンゴの偉大な叔父であることが判明した。彼もかつてルーンストーンの産地を探すという執念に駆られたことがあり、60年前にルーンに墜落したのだった。彼はマンゴに探索を続けるよう頼むが、友情の価値を求める以前に富を渇望するなと予言めいた警告を与える。その後、オガーはルーンストーンの詰まった宝のカバンを6個残して、老衰のため死亡したのだった。
オガーが残した手掛かりと物資によってマンゴは探索を続け、ルーン海へとたどり着いた。そして、クーン知事の奴隷を載せたガレー船から辛くも脱出した彼は、巨大な渦にボートが引き寄せられたとき、難しい決断を強いられることになる。自分と仲間が脱出できるようにするためには船を軽くする必要があり、そのためにルーンストーンの入った袋を放棄しなければならなかったのだ。
帝国を満足させるためのクーン知事の次なる卑劣な計画は、生物兵器ルーズを使ってアンブー地区を汚染させることだった。だが、無能な暴君は自分自身をその毒素に感染させてしまい、急いで著名な医師であるニルズ・ヨムに自分用の解毒剤の開発を命じることになる。このときニルズとオーレンは、タウントゥーム州の氷に覆われた火山にある彼の要塞に囚人として捕らえられていたのだった。
マンゴとドロイドたちがその後に続き、彼らはルーズの解毒剤を盗んだ後、ヨム親子を救出することに成功する。またこの救出劇の最中、彼らはルーンストーンの本当の産地を発見したのだった。そしてクーンにまったく気づかれることなく、すべての石はタウントゥームの火山脈の下に埋められたのである。
バオバブはクーンとの取引を試みた。彼はクーンに、<キャラヴェル>を返却することと、アンブーの人々を二度と弾圧しないと約束することを要求し、それと引き換えにルーズの解毒剤とルーンストーンの隠し場所を提供すると申し出る。だがその瞬間、スクリードがクーンを裏切り、施設全体を帝国の支配下に置いたのだった。激怒したクーンは鑿岩プラットホームに乗り込み、貴重なクリスタル鉱脈への砲撃を開始する。クリスタルは溶岩の海へと落下してそれを凍らせ、クーンと帝国軍の双方にとって永遠に失われたのだった。
だが、バオバブは特大の価値があるルーンストーンを1つだけもって脱出することができた。後にその結晶構造の内部で、最も初期の文書として知られる「ダー・ワーダ・ヴァーダ」がコード化されることになる(これは共和国の創設やコルサントへの移民開始よりも以前に作られた叙述詩である)。そして、非現実的であるとされていたルーンストーンの古代の産地を発見した功績によって、マンゴ・バオバブの名は歴史書の中で確固たる地位を築くことになったのだった。