イセイン・アイサード
(イセインから転送)
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解説
若きイセイン・アイサードは、帝国軍情報部の長官を務めていた父アーマンド・アイサードの後継者である。彼女はその地位と氷のように冷酷で執念深い性格から、「アイスハート」というニックネームで呼ばれるようになった。彼女は確かに美しいが、片方の目は青く、もう片方は赤いという顕著な顔つきをしており、その恐ろしい物腰は決して魅力的ではなかった。上流階級の出身であり、しかも女性であるにも関わらず、アイサードは帝国アカデミーで素晴らしい功績を収め、有能な学生であると同時に注目すべきスパイであることを証明してみせた。事実、彼女は自分の能力の証として父の失脚を企み、彼の地位と命を脅かしたのだった。
初代デス・スターの完成を前に、反乱同盟軍のスパイはデスペイアの座標が入力されたデータパックを盗むことに成功した。この不毛の惑星こそが帝国軍の誇る巨大戦闘ステーションの建造地だったのだ。奪われたデータを奪回するために派遣されたアイサードは任務に失敗してしまったが、彼女は罰せられる前に自分にこの任務を割り当てた父に責任を押し付けた。アイサードは父が率先して反乱軍にデータを漏らしたのだと主張し、アーマンドは帝国上層部によって手短に処刑されることになる。こうしてイセインは父に代わり、帝国軍情報部長官の地位を手に入れたのである。
アイサードの提案を受け、パルパティーン皇帝は彼女に洗脳施設としても機能する恐ろしい囚人収監所の建造許可を与えた。<ルサンキア>と命名されたこの施設の正体は、皇帝の緊急脱出に備えてコルサントの摩天楼の地下に隠されていた巨大なスーパー級スター・デストロイヤーだった。アイサードはその内部に岩でできた人工の洞窟を造らせ、さらに人工重力によって上下を反転させて囚人たちを強制労働に就かせていたのである。囚人たちは不毛な岩石惑星に幽閉されているという錯覚を抱きながら働かされており、万が一脱出を企てたとしても、重力異常によって自由の待つ地上とは逆の方向へと進むことになるのだ。もちろん、彼らはせわしないコルサントの大都市に取り囲まれていたのだが、こうした事実には決して気が付かぬまま、死ぬまで働き続けたのだった。
エンドアの戦いにおけるパルパティーン皇帝の死後、アイサードは後継政権の首班に任命された皇帝の顧問、大高官セイト・ペスタージと同盟を結んだ。しかし、絶えず策略的なアイサードはブレンタルで新共和国軍がペスタージを捕獲する段取りを整え、彼を失脚させることに成功したのだった。次に権力を掌握したのは帝国軍司令官たちによる指導部だったが、彼女が帝国の支配権を手に入れるために彼らを殺害するにはそれほど時間が掛からなかった。アイサードによる支配は絶対的というわけではなく、その後も銀河系の隅々から自称皇帝の後継者や大将軍を名乗るペテン師たちが続々と登場しては、一斉に帝国の亡骸の所有権を要求するという事態が続いていた。しかし、アイサードは彼らにはない重要な鍵、コルサントを掌握していたのだ。コルサントの支配権を盾に彼女がライバルたちを次々と葬り去り、パルパティーン亡き後の帝国を一時的に統一していたことは紛れもない事実である。同時に、彼女はコルサントが成長しつつある新共和国の標的となるであろうことも理解していたのだ。
アイサードは自らの帝国にとっての最大の障害は、新共和国の最精鋭部隊とされる伝説のローグ中隊だと考えていた。そのため彼女は部下のカータン・ルーアにローグ中隊の抹殺を命じた。ほどなくしてローグ中隊の目標がパイリア星系の惑星ボーレイアスであることが判明すると、彼女はこれが新共和国によるコルサント奪回計画の足がかりであることを見抜くのだった。アイサードはインペリアル・センターの防衛が困難を極めてきたことに気付くと、邪悪な贈り物を添えてコルサントを新共和国に明渡す計画を実行に移した。彼女は科学者でもあるエヴァー・デリコート将軍に新種の生物兵器の開発を命じた。クライトス・ウイルスと名付けられたこの兵器は、人間以外の種族に感染して死をもたらす細菌兵器である。アイサードはこの恐ろしい病原体をコルサントの給水所に放ち、新共和国に混沌の種を残したのだった。
コルサントを手に入れたものの、帝国の反エイリアン政策に反対していた新共和国にとって、クライトス・ウイルスに感染したエイリアン種族の救済は無視できない問題だった。彼らにとって唯一の救いは、この病原体の駆除にバクタが極めて有効に働くことだったが、これこそがアイサードの真の狙いだったのだ。彼女は地下に埋められた旗艦<ルサンキア>に乗り込み、都市景観もろとも多数の住人たちを引き裂きながらコルサントを脱出した。彼女はバクタ・カルテルの本拠地であるタイフェラに向かい、革命を支援することでこの惑星とバクタの供給を掌握した。これによってバクタ市場は異常な高騰を見せ、新共和国の財政を直撃したのである。アイサードは戦いによって新共和国にダメージを与えるのではなく、財政的に破産させることで内部から崩壊させることを目論んでいたのだ。
だが、コルサントの解放によってアイサードの動きに集中できるようになったローグ中隊は、バクタの輸送船団をたびたび襲撃し、アイサードを挑発していた。彼女はこれまで以上にローグ中隊の壊滅に執念を燃やすようになり、独自の情報網を使って彼らの徹底的な捜索を開始した。しかし、アイサードはかつての繊細さを微塵も感じさせない愚かな作戦によってことごとく失態を演じ、ついにはバクタ戦争と呼ばれる戦いでタイフェラの支配権を失ってしまった。その後、アイサードは<ルサンキア>と2隻のインペリアル級スター・デストロイヤー<アヴァリス>と<ヴィラランス>を率いて出撃し、ヤグダルの宇宙ステーションでローグ中隊と交戦したが、完全なる敗北を喫したのだった。彼女は<アヴァリス>を失い、<ルサンキア>と<ヴィラランス>も新共和国によって拿捕されてしまった。だが、アイサードは<ルサンキア>に捕らわれていた囚人の大半を別の場所に隠しており、自らもシャトルで逃走を試みるのだった。しかし、彼女を乗せたシャトルはローグ中隊のコラン・ホーンとタイコ・ソークーによって遮られ、爆破されてしまった。このとき誰もがアイサードの死を確信していたが、実は彼女はこのシャトルに乗っていなかったのだ。遠く離れた場所にいたアイサードは難民を装って姿を隠し、再起を図るのだった。
やがて敗北から復帰したアイサードは、スローン大提督による新共和国への反抗計画を傍観していた。そしてスローンが失敗すると、彼女はかつての憎むべき敵ローグ中隊に接近し、残存帝国軍の大将軍たちを阻止する手助けを求めた。ケルネル第一提督がイセイン・アイサードのクローンと同盟を結んでいたのである。このクローンは彼女自身がタイフェラを失った際に特別に製造したものであり、<ルサンキア>の囚人たちを隠したのも、彼女の艦隊を率いて敗北したのも、すべてこのクローンの仕業だったのだ。ローグ中隊は新共和国の囚人たちを解放することと引き換えに、アイサードへの支援を申し出た。アイサードもこれに同意し、新共和国の機動部隊はケルネルのキュートリック・ヘゲモニーへの攻撃を開始した。やがて彼らはアイサードのクローンを倒し、囚人たちの解放にも成功したが、本物のアイサードは依然として新共和国を裏切るチャンスを探しており、ビルブリンギで修復されつつあった愛すべき<ルサンキア>の奪回を試みた。だが、彼女の裏切りはミラックス・テリックとアイエラ・ウェジリによって暴かれ、アイサードは<ルサンキア>内での激しい格闘の末、アイエラによって射殺されたのだった。