ウィルハフ・ターキン
(グランド・モフ・ターキンから転送)
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恐怖による支配という悪名高きターキン教義を掲げたパルパティーン皇帝の恐るべき従者ウィルハフ・ターキンは、彼自身の最も野心的な計画と共にこの世を去った。事実、ヤヴィンの戦いにおける彼の死は、彼の構想によって造られたデス・スターの崩壊と同じく反乱同盟軍の延命にとって重要な出来事だったのである。
経歴
辺境に位置するセスウェナ・セクターの狡猾で野心的な支配者だったウィルハフ・ターキン総督は、贈賄や買収の蔓延する選挙であらゆる権力を手中に収めたパルパティーン皇帝と新秩序に対する熱烈な支持者であり、参謀の1人でもあった。銀河帝国の増税に反対し宇宙港で座り込みの抗議をしていたゴーマンの人々の大量虐殺は彼の帝国への忠誠心と共にその悪名を銀河全体に轟かせたのである。彼は帝国軍に独自のターキン教義を浸透させ、セスウェナ・セクターの惑星エリアドゥで自らの地位を総督からモフへと昇進させていった。
ライロスに帝国宇宙軍の補給基地を建設したとき、モフ・ターキンは若き科学者トール・シヴロンと出会った。同時に彼は技師としての資質に富むといわれるオムワットの子供たちを集め、数々の英才教育を施していたが、なかでも最も成績のよかった少女が当時10歳だったキウイ・ズークスである。
ついに初代グランド・モフとなったターキンはアウター・リムのほぼ全域を統括する権限を与えられた。その後、彼は帝国宇宙軍の美しい女性将校ダーラと出会い、フェラリオンに気品高い妻がいるにも関わらず2人はしだいに心を通わせるようになったのである。2人が愛人関係となると女性蔑視の風潮がある帝国軍の中でターキンは内密に彼女を提督に昇進させ、皇帝にもその存在を隠していたモー研究所の護衛任務に就かせた。ケッセル近傍のブラックホール群の中にあるモー研究所には彼が育て上げた多くの科学者たちが集められ、後に彼が行うことになる大量殺戮のための超兵器の研究開発を行っていたのである。主任技師ベヴェル・レメリスク、キウイ・ズークスらによって設計されたデス・スターもその1つだった。
ホラズ星系の惑星デスペイアの軌道上でデス・スターの建造が始まってからも、ターキンは愛するダーラと会うために何度かモー研究所を訪れていた。その間にも彼は残った科学者たちにデス・スターをも凌ぐような超兵器の開発を要求し続け、9年間の猶予を与えたのである。彼はダーラにしばしの別れを告げたが、2人が再会することは二度となかった。
最初に予期せぬ出来事が起こったのはエリアドゥの総督官邸にデス・スター完成の報告が届いた直後のことだった。彼の旗艦が反乱軍の奇襲を受け、有能な奴隷だったモン・カラマリのアクバーを連れ出されてしまい、さらに別のグループに攻撃されたモッティ提督のスター・デストロイヤーからはデス・スターの設計図が盗まれてしまったのである。この失態は怒り狂ったターキンにデス・スター最高司令官としての最初の衝動を与え、ホラズの流刑植民地がスーパーレーザーで滅ぼされてしまったのである。
デス・スターがなかった頃の帝国軍はそれほど力があるとは言い難かったが、それでも銀河を震撼させる恐ろしさは十分に備えていた。しかし、その一方でターキン自身は不満だったのである。デス・スターの建設は彼の決断と策略によって行われ、自らがその最高司令官となったのもひとえに彼の軍事的才能によるものだった。彼にとってデス・スターは破壊と恐怖をもたらすための超兵器であり、オルデランが帝国と皇帝の権威を安泰とさせるための見せしめとなったのも彼の決断によるものだったのである。
実際にデス・スターによる強大な軍事力を背景にターキンが皇帝に匹敵する力を得ることになったのも事実だった。皇帝の側近としてグランド・モフの地位をつかんだ彼は、次第に次の皇帝の座を狙うようになったのである。モッティ提督も彼に強くクーデターを促していた者の1人だった。そして、このことを察知した皇帝は彼への監視役としてダース・ヴェイダーをデス・スター作戦に加えていたのである。
一方で、ターキンは戦いの最中でも帝国元老院の席でもただならぬ雰囲気を漂わせる興味深い男だった。彼のカリスマと存在感にはダース・ヴェイダーの鉄の意志さえ揺れ動かすものがあったのは疑いようのない事実であり、多くの側近をヴェイダーのフォースによる死の裁きから救っていたことさえもあったのである。
モッティ提督やタッグ将軍を始めとするターキンのデス・スター作戦補佐官の顔ぶれは、帝国内でも並ぶものが無いほど凶悪なものだった。それゆえ、これだけの帝国の有能な軍人を都合よく一掃できたことは、同盟軍にとって願ってもない幸運だったのである。ヤヴィンの戦いにおけるデス・スターの崩壊は、辺境の帝国軍を官僚主義的な混沌へと導いた。ターキンに反対していた勢力がその権威を奪回するという壮大な野望を抱いていた一方で、残された彼の部下たちは指導者のない空白の時代の中で残存勢力の奪い合いを余儀なくされていたのである。そして、この内部闘争は結果的に同盟軍にヤヴィン4から撤退させる時間を与えてしまうことになった。
ターキンは視野に富み、冷酷さと権力を兼ね備えた優秀な軍人であり、彼の思想は新秩序の形成と銀河への浸透に大いに役立っていた。しかし、邪悪の天才とも言われた彼の死によって銀河はつかの間の平穏を得ることができたが、帝国と皇帝にとっては決して致命傷ではなかったのも事実だった。後に皇帝が滅んでからも天才的な軍指導者の出現によって銀河の平和が脅かされたのはスローン大提督の例を見ても明らかである。