ノム・アノア
(ユシャアから転送)
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ユージャン・ヴォングによる銀河系侵略計画の最初の刺客は、ノム・アノアと呼ばれる邪悪な心をもった雄弁な執行者だった。これは彼の本当の名前だが、実際には不敬者の銀河系を侵略するという崇高な任務の間に使用したいくつかの名前の1つに過ぎない。
解説
管理階級の一員であり高度な技能を持つノム・アノアは、ユージャン・ヴォングのなかでもシェイパーに匹敵する生体工学の知識を有していた。彼はマントや短剣などの有機的な道具を自ら作成し、マラ・ジェイド・スカイウォーカーを苦しめた潜行性ウイルスをも作り出していた。武器を奪われ無防備な状態になっても、ノム・アノアの義眼のソケット(彼は神々への献身として自らの手で片目を取り出している)にはプレイリーン・ボルと呼ばれる猛毒が仕込まれており、それを敵対者に向けて射出させることができるのだ。
アノアは地方の星系に政治的混乱を生じさせ、新共和国と新ジェダイ・オーダーに禍をもたらす密かな扇動者および政治的火種として働いた。彼はパルパティーンのクローンの死後、帝国を牛耳っていた帝国暫定評議会の重鎮ザンデル・カリヴァスを影で操っていたのだ。こうしたアノアの暗躍は分裂していた帝国の最終的な崩壊を促進させることに役立ったのである。
ノム・アノアはその後何年もの間姿を消していたが、やがて「生命の赤い騎士団」と呼ばれる過激な宗教集団の指導者として惑星ロマムールに出現する。ドロイドとテクノロジー、そしてジェダイに対する彼の激しい嫌悪は大勢の信奉者を集め、ロマムールとその姉妹惑星オサリアンとの間の平和に切迫した緊張を生み出した。そして2つの惑星間での危機が増大すると、ノム・アノアは死を偽って再び姿を消したのだった。
彼の事前任務は完了した。ロマムール事件の直後、ユージャン・ヴォング軍による侵略が開始されたのだ。しかし、第1次侵略隊プレトライト・ヴォングは大半のメンバーが管理階級によって占められており、敗北を喫した。そのためアノアの地位も連帯責任によって降格され、ユージャン・ヴォングの第2次侵略隊はシェダオ・シャイ率いる戦士階級によって構成されることになる。
アノアは自分と管理階級に疑念を抱く戦士たちとの間の差異を円滑に埋めようと努力し、希薄な同盟関係を築き上げた。そこで彼はジェダイを打ち破るために亡命者を偽装する計画を立案するが、結局は失敗してしまう。しかし、アノアはハットをユージャン・ヴォングの同盟国として迎えることによって信頼を取り戻すことができた。ハットが信用できない種族だということを熟知していたアノアは、彼らを使って新共和国の上層部に偽情報を流したのである。
最終的にアノアは惑星デュロを荒廃させ、征服することによってウォーマスター・サヴォング・ラの信頼を取り戻すことに成功する。だが、ウォーマスターは彼を昇格させたわけではなく、これはあくまで虚ろな勝利でしかなかった。サヴォング・ラにとって重要なのはアノアの持つジェダイに関する知識だったのだ。しかし、ウォーマスターの部下であり顧問でもある奇妙なエイリアン、ヴァーゲアもまた、新共和国の捕虜となっていたわずかな間に不敬者に関する膨大な知識を手に入れていた。事実上、アノアは彼女と対抗し合う立場に置かれ、サヴォング・ラも2人の部下のライバル争いを楽しんでいたのである。
ジェイセン・ソロとジェイナ・ソロが双子であることが判明すると、サヴォング・ラはアノアとヴァーゲアに双子を捕らえるよう命じた。双子はユージャン・ヴォングの神話において特別な意味を持つ存在だったのだ。そして機会は、ソロたちがマーカーにおけるユージャン・ヴォングの作戦の心臓部に侵入したときに訪れた。ジェダイたちは任務の失敗によってアナキン・ソロを失い、ジェイナはマーカーを逃れるが、ジェイセンが捕らわれの身になってしまったのである。
アノアはジェイナを滅ぼすための道具としてジェイセンを利用しようと考えた。双子の片割れが他方を犠牲にするとき、古代ユージャン・ヴォングの預言が成就されるのだ。しかし、彼はヴァーゲアと共にジェイセンの改宗に努めるが、彼は簡単に屈しなかった。ジェイセンはかつてのジェダイ・ナイト、ヴァーゲアの裏切りにも助けられ、ユージャン・ヴォングによって征服されたコルサントの変わり果てた荒野へと逃れたのである。ノム・アノアもジェイセンを奪回すべくコルサントへ向かうが、この計画は最終的に失敗してしまう。ジェイセンと、彼を救出に来たジェダイ・ナイト、ガナー・リソーディの努力と犠牲によってユージャン・ヴォングによる惑星ユージャンター、すなわちコルサントの転移は微妙な動揺を生じさせ、完全と不過誤に関するユージャン・ヴォングの見解も減退し始めていったのである。
数々の失敗にも関わらず、アノアは自身を有利に導くであろう情報の探求という異端の危険を冒し続けていた。ウーグリス・マスカーで変装した彼はコルサントの地下深くを訪れ、労働者階級や恥ずべき者たちからなるユージャン・ヴォングの異端の宗派に潜入する。アノアはこの異端を最高大君主シムラに密告し、自身の手柄にしようと目論んでいたのである。だが、彼の探求はシムラの道化師オニミの奇妙な行動を目撃したことで、意外な方向へと転じるのだった。
アノアはオニミを追跡し、コルサントで隔離されたマスター・シェイパー・ネン・イェムのダミュテクを発見した。彼はそこで何が行われているのかを調査し、偶然にも恐るべき事実を知ることになる。ユージャン・ヴォングの神々が最高大君主に与えた8番目のコーテックスには何も有益な知識が存在しておらず、そのためシムラはネン・イェムに新しいプロトコルの創造という異端を命じていたのである。この計画が成功しない限りユージャン・ヴォングにはもはや新しい知識が残されておらず、このまま不敬者たちが彼らの知識を獲得し続ければ、彼らはこの戦いに確実に敗北することになるだろう。恐らくはシムラも当初から神々など信じておらず、信仰の名のもとにすべてのユージャン・ヴォングを欺いていただけなのだ。ユージャン・ヴォングの哲学にある最深部の教義には、コルサントの転移と同じく不安定な原理が存在していたのである。
その後、アノアはシムラの前でエバック9への攻撃を進言する。不敬者との最終決戦に燃えるウォーマスター・サヴォング・ラもそれを受け入れ、大規模な艦隊を率いて自らも出撃するのだった。だが、それはすぐに敵の罠であることが判明し、この戦いはユージャン・ヴォングに対してサヴォング・ラの死をはじめとする多大な損失を招く結果となる。シムラはこの失態に激怒し、アノアを処刑するよう命じたのだった。危機感を抱いたアノアは再びコルサントの下層へと逃亡し、恥ずべき階層に身を隠したのである。
彼はそこでジェダイを崇拝する恥ずべき者たちの一団と遭遇した。彼らはかつてヤヴィン4で行われたヴア・ラプーングとアナキン・ソロの戦いにまつわる話を伝承していたのである。ユージャン・ヴォングの教義を根底から揺さぶりかねない異端を目にしたアノアは、彼らをシムラに差し出すことによってかつての地位を取り戻そうと考えるのだった。しかし、恥ずべき者の一団がユージャン・ヴォングの戦士たちによる襲撃を受けたことで、アノアはユージャンターのさらに奥深くへと逃亡することを余儀なくされ、生き残るためには恥ずべき者のクンラとシューン=ミ・エシュに頼らざるを得ない状況に陥るのだった。
しかし、アノアの計画は順調に進んでいた。彼は恥ずべき者に自由をもたらす予言者ユシャアとして確実に力を増していたのである。彼は宗教的情熱を利用して力の基盤を築き上げ、そこから自分を見限ったシムラを見返してやろうと考えていた。やがて生きた惑星ゾナマ・セコートが発見されると、彼は自分の計画が達成に至ったと考えるようになる。ゾナマ・セコートこそはシムラが恐れていた源であり、アノアはこの惑星を破壊すれば最高大君主の信頼を取り戻すことができると信じていたのである。
アノアは予言者ユシャアとして素性を隠し、シムラに反旗を翻したネン・イェムとハラー、そしてジェダイ・ナイトのタヒアリー・ヴェイラとコラン・ホーンを伴ってゾナマ・セコートへ向かう手筈を整えた。そこで彼はこの惑星に関する噂が真実であったことを知る。彼はゾナマ・セコートの惑星ハイパードライブを過負荷状態にすることでこの惑星を破壊しようと考え、自らの計画を実行に移した。しかし、アノアはタヒアリーによって正体を暴かれてしまい、それを知ったネン・イェムの殺害を強いられるのだった。それでも彼はなんとかゾナマ・セコートを脱出し、生きてコルサントへ戻ることに成功する。そこでアノアはシムラから復権を認められ、高位行政官ドロースルの不満をよそにユージャンターの行政官に任命されたのである。
ドロースルはアノアに対して予言者ユシャアの異端を終わらせるべきだと断言するが、アノアはこの異端が自分にさらに多くの力を与えてくれると信じていた。しかし、クンラがユシャアの警告を恥ずべき者たちへ向けた大きな宣誓にしようとしていたとき、アノアにはまだその準備ができていなかった。クンラはアノアに恥ずべき者たちを見捨てず、彼らを導くようにと懇願する。だが、2人のマスターに仕える重みは、次第にアノアを窮地に追い込んでいくのだった。やがてついに、シムラはコルサントをこの戦いにおけるどちらの陣営にとっても無用の惑星とするべく、ワールド・ブレインに文字通り惑星の破壊を命じる。そのときアノアは自分の惑星を救うため、できる限りの行動に出た。彼は予言者のマントを脱ぎ捨てて恥ずべき者たちを隆起させ、シムラの帝国に戦いを挑んだのである。
しかし、アノアは再び自身の身を守るためだけに行動し、恥ずべき者と戦士たちとの戦いの最中に逃走を試みる。だが、逃走中のアノアはシムラを捕らえるためコルサントに侵入していたマラ・ジェイド・スカイウォーカーに追跡されていた。戦いを逃れることで息切れするほどにまで疲労し、しかも何も武器を持っていなかった彼は、ライトセイバーを持つマラに敵うはずもなく降伏する。アノアは彼女に、ゾナマ・セコートに対してアルファ・レッド・ウイルスを使用するというシムラの計画を教えるのだった。
その後、アノアはジェダイたちの居場所を突き止める希望を掴むと再びシムラに寝返り、ルーク・スカイウォーカーと双子のソロを最高大君主の居城に引き立てることを約束する。こうすることで彼は状況を好転させる努力を続けていたが、この望みもシムラとオニミの死によって絶たれたのだった。もはやアノアに残された選択肢は、ウォーマスターのナス・チョーカと再び手を組むか、銀河同盟に加わるかの2つに1つだった。しかし、実際にはどちらの選択肢も彼に再び栄光を与えてはくれなかった。彼はジェダイたちをシムラの用意していた脱出ポッドに導くが、彼らをゴミ処理システムに追いやろうという作戦は失敗に終わってしまう。アノアの計画に気づいたジェイセン・ソロが彼の前に立ちはだかり、アノアは窮地に立たされた。彼は最後の手段であるプレイリーン・ボルでジェイセンを殺そうとするが、若きジェダイはこの猛毒の構造を再構築し、無害な水に変えてしまう。ついに万策尽きたアノアは脱出用の船をコルサントの地表に激突させ、自ら死を選んだのである。