キップ・デュロン
| ||||||||||||||||||||||||||||||||
|
解説
キップ・デュロンは幾度となく辛苦に直面し、その経験をより大きな力に変えてきたが、未だに無傷でいるわけではなかった。デュロンのフォースとの調和はとても強く、師であるルーク・スカイウォーカーによって与えられた抑制をもってしてもこの衝動的な若者を抑えるには至っていないのだ。彼が抑制を捨てて感情に身を任せたとき、その結果は凄惨なものとなった。
キップは不毛なアノート星系の植民惑星デイヤーにおける活動的な政治家の家に生まれた。しかし、彼らの政治活動は帝国に対する反逆と見なされるようになった。デュロンの家は帝国軍のストームトルーパーの襲撃を受け、家族全員が逮捕されてしまった。キップとその両親はケッセルのスパイス鉱山で強制労働に従事させられ、一方で兄のゼスはカリダの帝国アカデミーへ徴兵されたのだった。
囚人となって1年後、キップの両親は刑務所内の反乱によって死亡した。孤児となったキップは暗闇の中で苦労してグリッタースティムの採集を行い続けた。そして、グリッタースティムはケッセルの処理センターで精錬されるのだ。ケッセルで過ごす間、彼はヴィマ=ダ=ボーダと名乗る不思議な老婆と出会い、彼女からフォースの存在とその初歩的な使い方を学んでいた。しかし、ヴィマは別の場所に移送されてしまい、それ以上の接触を得ることはできなかった。
新共和国代表のハン・ソロとチューバッカが腐敗したケッセル政府によって投獄されるまでの8年間、キップは自由への希望をほとんど手にすることなく奴隷として働かされていた。ソロとチューバッカはキップと共に働き、この熟練した青年から生き残るための価値ある術を伝授された。
新共和国の2人の英雄は、強奪した帝国軍シャトルで脱出するという大胆な逃走計画にキップを巻き込んだ。キップはケッセル星系に隣接するブラックホールの大渦巻のなかを本能的に操縦し、凄まじい潜在的フォースの可能性を示唆した。彼らのシャトルはモー星団に引き寄せられたが、キップは何とか無事に嵐の目にたどり着いた。しかし、そこには帝国軍の最高機密であるモー研究所があったのだ。
ハン、チューイー、キップの3人はケッセル鉱山から逃れたものの、このときまで10年間、銀河内乱が終結したことを知らなかった帝国軍によって拘留されてしまった。モー研究所は、先のグランド・モフ・ターキンによる超兵器開発を受け継ぐ科学者や技術者の秘密シンクタンクだった。接近不可能なモー星団の近郊に閉じこもっていた帝国軍は、外の銀河の状況を全く知らなかったのだ。
拘留されたハンは純真なオムワッティの科学者キウイ・ズークスに彼女の過ちと帝国軍の本性を明かすことに成功した。彼は10年にもおよぶ帝国軍の洗脳から彼女を解放し、生きることへの情熱を訴えた。キウイはソロ、チューバッカ、キップを解放し、この研究所で最も恐ろしい究極兵器サン・クラッシャーで脱出した。そしてサン・クラッシャーを手に入れた新共和国は、この論争の種となる兵器をガス状巨星ヤヴィンの中心に向けて破棄したのだった。
モーから逃走する際、自由に向かって本能的な操縦を披露したのはやはりキップだった。そしてこのとき、ルーク・スカイウォーカーはヤヴィン4に設立したジェダイ・アカデミーに候補者を集めているところだった。彼はキップをテストし、その潜在能力の高さに驚かされた。だが、長年におよぶ辛苦は彼を汚していた。何年もの間自由と家族を失って暮らしていた彼は、決して弱音を吐かず、二度と力に屈しないという誓いを立てていたのだ。この決意は怒りと恐れを原動力にもち、キップをダークサイドに近づけていたのである。
スカイウォーカーのジェダイ・アカデミーの一期生たちは、銀河中から選りすぐられた様々な種族のフォース感知者だった。おそらくキップは最も強力な生徒であり、程なくルークの修行のペースを不満に思うようになった。そしてルークの知らぬ間に、プラキシウムに不穏な影が迫っていた。4,000年前に死んだシスの暗黒卿エグザ・キューンの邪悪な魂がヤヴィン4の古代神殿から復活を果たしたのだ。利用すべき有望な若者を発見したキューンは、キップに強大な力を与えようとささやき、密かな訓練を開始したのだった。
ダークサイドに魅せられたキップは、パルパティーン皇帝とダース・ヴェイダー亡き後の最初の暗黒卿になろうと決意した。正当な復讐心をたぎらせ、彼は帝国軍を壊滅させようと考えたのだ。キップはヤヴィン4でルークに戦いを挑み、ダークサイドのエネルギーで最初の師を昏睡状態に陥れた。さらに、彼はヤヴィンから自分の宇宙船として利用すべく、サン・クラッシャーを呼び寄せることに成功した。そしてキップは用心のため、もう1つのサン・クラッシャーが造られる可能性を排除した。フォースを使ってキウイ・ズークスの記憶からこの超兵器に関する知識を消し去ったのである。
サン・クラッシャーに守られたキップは帝国アカデミーの中枢、カリダに到着した。彼はカリダの太陽に向けてサン・クラッシャーの共振魚雷を発射し、その連鎖反応は星系を破壊した。その運命を見届けていたキップは、兄ゼスがトルーパーとしてカリダに配置されていたことを知って衝撃を受けた。キップは唯一生き残っていた肉親の救出に失敗するどころか、兄を無意識に殺害してしまったのだった。
ハン・ソロはキップの大罪を知って落胆した。彼はキップを追跡し、対面を果たした。ちょうどそのとき、ジェダイ・アカデミーのルークの弟子たちもエグザ・キューンの魂を打ち負かし、その魔の手からキップを解放することができたのだった。キップもソロの説得を受け入れ、ハンも彼の行為を許すことができたが、銀河系がこの若きジェダイによって失われた多くの命のことを忘れることはなかった。
キップは何年にもわたって自らの罪と戦い続け、ジェダイ・オーダーに専念していた。彼は多くの英雄的任務を遂行し、やがては数人の若きジェダイ・ナイトを指導するほどにまで成長した。その大胆な行動から彼を崇拝する若い訓練生たちにとって、キップの功績は伝説的だった。やがてキップはミコ・レグリアを弟子に取り、新生オーダーにおける最初のジェダイ・マスターとなったのだ。
キップとレグリアはジェダイ以外のパイロットと共に「ダズン・アンド・ツー・アヴェンジャーズ」と呼ばれるXウィング中隊を結成した。この無鉄砲な部隊はアウター・リムの密輸業者や海賊たちを取り締まる任務を担当していた。彼らは名声を得るようになったが、そのときユージャン・ヴォングによる先遣隊によって攻撃を受けたのだった。
この大虐殺と、結果的にもたらされたキップの変化は、ルークのジェダイ・オーダーに分裂の兆しを招くことになった。キップはユージャン・ヴォングによる市民の虐殺と惑星の破壊に対して受身に振舞うことに反対し、ジェダイのとるべき行動として積極的な攻撃を要求した。キップの攻撃提案を警戒したルークは、怒りに任せた先制攻撃と復讐を禁止した。ルークは、こうした行動が必ずダークサイドに通じると考えたのだ。
だが、キップはルークの洞察力を無視し、自分自身の本能に従う道を選んだ。ユージャン・ヴォングは銀河市民を扇動し、ジェダイへの対抗心を煽っていた。キップの攻撃的な戦略は、オーダーの将来に暗雲を招くことになるのだった。彼は数人の同志を募って独自にユージャン・ヴォングへの攻撃を試みた。キップはスカイウォーカーの姪ジェイナ・ソロを味方につけ、彼女にユージャン・ヴォングがサーンピダルの残骸で超兵器を製造中であることを確信させる。そして彼はジェイナと共に攻撃を行ったが、2人が破壊したものは武器ではなく、ユージャン・ヴォングのワールド・シップだったのだ。騙されたジェイナはキップに激しい怒りを覚えるのだった。
コルサントの陥落後、ジェイナは弟のアナキン・ソロを失った怒りに埋め尽くされ、ダークサイドに足を踏み入れていた。だが、彼女をその淵から救ったのもキップだった。彼独自の攻撃的哲学がジェイナの帰還を難しくしていたが、キップは過去の経験からダークサイドの力に関する詳細な知識を持っていた。2人はユージャン・ヴォングを欺く巧みな計画で協力し合い、徐々に特別な関係を築いていった。しかし、最終的に彼女の心を掴んだのは戦闘機パイロットのジャグド・フェルだった。
ジェイナのダークサイドからの帰還に助力するなかで、キップも大きく変わっていった。彼は団結の力と不和の危険性を理解し、新ジェダイ評議会を設立しようとするマスター・スカイウォーカーを支援する働きを始めたのである。やがてキップはジェダイ・オーダーの新評議会に、創設メンバーの1人として加わることになった。